夏の総集編 - 携帯電話とデジタル家電で盛り上がるパーソナルテクノロジー

永井美智子(CNET Japan編集部)2003年08月11日 10時00分

 2003年上半期におけるパーソナルテクノロジー分野の動向を振り返ってみよう。現在最も変化が激しいのは、携帯電話端末の分野だろう。新たな機能を備えた端末が登場し、端末自体の形も変わってきている。また、進化し続ける端末の電池問題に応えるべく、燃料電池の開発が進んでいる。

 デジタル家電の分野では組み込みOSの覇権争いが過熱しており、特にオープンソースのLinuxとMicrosoftのWindows CEが対立を深めている。

進化する携帯電話端末

 2003年上半期には、新たな機能を備えた携帯電話端末が登場した。まず、NTTドコモauJ-フォンの携帯大手3社からは、ほぼ同時期に100万画素級のカメラを搭載した端末が発売された。

 また、NTTドコモは505iシリーズにMacromediaのFlashを搭載。505iは発売2カ月で100万契約を突破した。

 NTTドコモからは第2世代携帯のmovaと第3世代携帯のFOMAの両方の回線を利用できるデュアル端末も販売されている。

 端末の形態もストレート型や折りたたみ型以外の新しい形が現れた。パナソニックはNTTドコモのFOMA向けに、ディスプレイ部分が回転する折りたたみ型端末「P2102V」を発売。京セラやソニーはディスプレイ部分を180度回転させる端末を発売した。

 2003年上半期、最も注目されたのはNTTドコモの腕時計型PHS「WRISTOMO」だろう。インターネットの専用サイトのみで販売され、5月7日から注文受付を開始した。予約が殺到し、8月現在は商品入荷待ちのため、注文受付を延期している状態だ。

2003年下半期には高速移動通信のEV-DOが登場

 2003年下半期以降に登場する端末について見てみよう。今年秋に発表が予定されているのがKDDIの広帯域データ通信専用サービス「CDMA2000 1x EV-DO」だ。EV-DOは下り最大2.4Mbpsのベストエフォート型高速データ通信サービスで、4月から試験サービスを開始している。具体的に端末がどのような形になるかはまだ明らかにされていないが、利用料金は準定額制になる予定だ。

 テレビ放送が受信できる端末も登場が期待される。NECは7月に地上波デジタル放送が受信可能な試作機を発表。携帯受信機向けの放送サービスは開始時期がまだ決まっていないが、NECでは2005年をめどに開発を進めているという。

 海外ではRealNetworksのメディア再生技術であるReal PlayerがNokiaのボーダフォン端末に搭載される予定だ。また、米Motorolaは同社の携帯電話機にLinuxを搭載することを発表しており、2003年第3四半期に発売される予定となっている。

燃料電池に注目が集まる

 端末の高機能化に伴い、問題となるのが電源の確保だ。各社は端末の省電力化を進めているが、端末の工夫だけでは限界がある。そこで注目されているのが燃料電池だ。

 東芝は3月、ノートパソコンに接続可能なダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の開発に成功したと発表。さらにNECは6月、燃料電池内蔵のノートパソコンの試作機を発表した。2年以内の商品化を目指すとしている。

 燃料電池の登場にはNTTドコモの立川社長も熱い期待を寄せており、今後は実用化に向けた開発が重要になる。

加熱する組み込みOSの覇権争い

 デジタル家電の分野では、組み込みOSの覇権争いが加熱している。NECエレの門田氏によると、今後日本で利用される組み込みOSのプラットフォームは「ITRON、Linux、Windows CEの3つが大部分を占める」という。

 国内ではデジタル家電にLinuxを採用する動きが進んでいる。ソニーは2002年12月に松下電器産業とデジタル家電向けLinuxの共同開発で合意しており、2003年7月にはソニー、松下ほか大手メーカー8社が共同で「CE Linuxフォーラム」を設立した。 フォーラムではデジタル家電が求める仕様を検討・定義し、デジタル家電におけるCE Linuxの適用を促進していくという。経済産業省も情報家電のプラットフォームにLinuxを推奨している。

 一方、家電メーカー各社のLinux採用に対して神経を尖らせているのがMicrosoftだ。Microsoftは同社の組み込みOSである、Windows CE.Netのライセンス価格を引き下げたほか、Windows CEのコード改変と、改変したコードの販売を可能とするプログラム「Windows CE Shared Source Premium Licensing Program」を発表した。しかしアナリストからは、「これまでのプログラムとほとんど違いはない」という批判も出ている。

 Microsoftは、Windows組み込み端末に比べてLinuxを組み込んだ端末を市場に投入するには、コストも時間も余計にかかるとの調査結果を公表し、同社のOSを売り込むのに必死になっている。

 国内ではLinuxやWindows CEだけでなく、日本発の組み込みOSであるTRONもかなり普及している。TRONプロジェクトに長年携わってきた東京大学教授の坂村健氏はユビキタス社会の実現に向け、精力的に講演活動を行っている。 同氏はTRONの普及活動だけでなく、現在はリアルタイムシステム標準開発環境のT-Engine や、RFID(無線認識)技術のユビキタスIDにも力を注いでいる。

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