NECは7月10日、地上波デジタル放送の受信が可能な携帯電話端末の試作機を開発し、報道陣に向けて公開した。
この試作機は、現在市販されているW-CDMA方式の第3世代携帯電話にアンテナ、チューナー、デコーダを搭載したもの。デコーダにはNECエレクトロニクスが2002年10月に開発したOFDM復調LSI「μPD61530」が採用されている。OFDM方式は日本の地上波デジタル放送に採用されているデータ送信方式。
NECネットワーク開発研究本部モバイルサービス開発研究部長の加藤明氏は、「商用化にはまだ数年かかるが、基本的な技術開発はできた」と語る。
試作機では現在一般的な携帯電話機に使われているリチウムイオンバッテリーを利用し、連続1時間のテレビ視聴が可能という。「商品化するためには、さらに連続1時間程度の通話ができるようなバッテリー残量が最低限必要だと考えている」(加藤氏)
NECが開発した試作機。大きさは市販の携帯電話機とほぼ同じ | |
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さらに加藤氏は、バッテリーの容量はこれ以上の伸びがあまり期待できないと指摘し、デバイスの設計やソフトウェアのアルゴリズムを工夫することで省電力化を実現したいとの考えを示した。
価格については、「現在の携帯電話の最上位機に位置付けられる程度の価格」(モバイルターミナル事業部商品企画部マネージャーの柳井保氏)を想定しているという。具体的には、「6000円から7000円程度のアップが目安となるのではないか」(柳井氏)とした。
地上波デジタルテレビは2003年12月から東名阪地域でサービスが開始される。サービス開始当初は、家庭用テレビ受信機向け放送サービスを行う予定で、携帯電話などの携帯受信機向けの放送サービスは数年後になると見られている。
端末の商用化の時期についてモバイルターミナル事業部長の田村義晴氏は、「ハードウェアの部分は実現の目処が立ってきた。2005年頃にはサービスが始まってほしい」との考えを示し、2005年のサービス開始を想定して開発を進めていくと示唆した。
NECでは今後、受信デバイスの特性改善、低消費電力化などの技術開発に取り組む。また、通信と放送の融合サービスやアプリケーションに関する技術開発も進めていくという。この試作機は、2003年10月4日からスイス・ジュネーヴで開催される「テレコム2003」に出展する予定だ。
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