新興データディスカバリベンダーには「データディスカバリの主要4ツール比較--デジタルマーケティングに活用」で解説したように、それぞれ特徴がある。
これらとSAP Lumiraの大きな違いは、どこにあるのだろう。
違いは「データガバナンス」「優れたビジュアル」「ストーリーテリング」「予測分析との融合」の4つがあるが、特にデータガバナンスはユーザー任せという考え方が、新興データディスカバリベンダーには多い。既存のBIベンダーはYellowfinがダッシュボードのロール管理を強調するように、各社ともデータのガバナンスなしでデータディスカバリを活用することを推奨していない。
SAP Lumiraは、SAP BusinessObjectsのユニバースというメタデータレイヤを介してデータガバナンスを確立しつつ、データディスカバリを活用することなどが可能だ。ある意味SAPという閉じた世界でのデータガバナンスがやりやすいということが強みとなり、
「SAPの強み=SAP Lumiraの強み」
となることからメモリデータベースのHANAとの連携、オム二チャネルパッケージのHybrisなどとの連携が、共通のガバナンスの配下でできることが強みになる。
また、「優れたビジュアル」はどこのデータディスカバリベンダーも強みとする部分。「ストーリーテリング」は、分析・ビジュアル化したデータを元に、「ストーリーボート」と呼ばれるプレゼンテーション用の資料を作成できる機能。「予測分析との融合」は予測分析ツール「SAP InfiniteInsight」と連携し、需要予測など将来のデータの変動なども可視化できる。
SAPでない外部製品への連携は今後のテーマとなるだろうが、未来からの経営(「第4回:時間軸で学ぶデジタルマーケティング経営」)に必要な各種データソース(プライベートDMP、MA、SFA、ウェブログなど)との接続性はある程度絞り込むだろうが、必要なことだろう。
SAP Lumiraと同じアナリティクス製品であるSAP InfiniteInsight(旧KXENを含む)は、某化粧品メーカーでは顧客の購買履歴を分析し、訪問販売員がどの顧客を訪問して商品を紹介するべきかをターゲティングしたり、数千万人の会員を持つ共通ポイントカードでは、プロモーションのターゲッティングを最適化するためのセグメンテーションに活用されているが、今後SAP InfiniteInsightなどとも連携したSAP Lumiraのデジタルマーケティング分野での活用は大幅に増加が見込めるとのことだ。
リアルな店舗を含めたオム二チャネルの全体を統合するHybrisがSAPに買収され、SAPがデジタルマーケティングの得意なAdobeと提携したことにより、
は、ますます経営的に重要なニーズになる。
特に「HybrisとSAP Lumiraの連携」はグローバルな経営基盤となる可能性がある。「データディスカバリの主要4ツール比較--デジタルマーケティングに活用 【TIBCO Spotfire】」で事例紹介したが、アナリティクス界のドラッカーと称されるトーマス H.ダベンポート氏がハーバードビジネスレビューで解説しているP&Gの事例にもあるように、
「whatだけでなく、whyそしてhowに至ること」と呼んでいる。意思決定者がデータを見た時、重要な分野で何が起きたのか(what)を把握するのに時間を取られれば、その原因(why)と対処法(how)に行き着かないかもしれない。優れたビジュアル表示は常に例外管理に焦点を当て、マネジメント上の注意が最も必要とされるポイントを明らかにする。
Hybrisにあるグローバル商品情報管理(PIM)とデータディスカバリツールの連携から、
の2点が特にグローバル経営では極めて重要になる。
そういう意味で、
「SAP LumiraはHybrisと連携できることが最も強力な強み」
ではないだろうか。
ちなみにP&Gの事例ではSpotfireはSASと連携し活用されているが、SAP Lumiraは自社のSAP InfiniteInsight(旧KXENを含む)との連携はもちろん外部のR(Rコマンダー)、SASなどの統計パッケージとの連携も可能だ。
SAP Lumiraはデータソース制限版を無料でダウンロードして使うことができ、SAP Lumira(クラウド)も1Gバイトまで無料に活用できることを紹介したが、さらに月に1度の無料セミナーで活用方法を実際に試せる。なお、セミナーの申し込みはメール「jun.nakata[at]sap.com」([at]は@に置き換えて下さい)で連絡してほしいとのことだ。
今回のインタビューに答えていただいた中田氏は、冒頭で紹介したように、誰がユーザーであるかを明快に解説した上で、製品について解説した。
このような、中田氏のロジカルシンキングは、データディスカバリという部分最適が、全体最適のどの位置にあるかをクリアに認識できる。逆にいうと、全体最適の中で、もしSAP Lumiraに改善する部分が必要な場合も、それをイマジネーションできるので、プロダクツへのフィードバックもロジカルに伝えられることを確信したインタビューだった。
改めて書くまでもないが、これはグローバル商品情報管理(PIM)とデジタルマーケティングを含めた全体最適の中でSAP Lumiraを活用するユーザーには、必要な「機能」である。
次の企画は、前回の「データディスカバリの主要4ツール比較--デジタルマーケティングに活用」で紹介したDomo、QlikView、Spotfire、Tableauに加えて、Endeca、Lumira、Yellowfinのデジタルマーケティングにおける日本国内ユーザーの事例を紹介したい。
また、データディスカバリの各種情報のアップデートは、「データディスカバリ活用研究会」を通じて行う予定である。
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