第5回:接客から学ぶデジタルマーケティング経営

田中猪夫(日本総合研究所 特命研究員)2014年03月17日 10時00分
今回のポイント

 連載第1回「ネギに学ぶデジタルマーケティング経営」で、「アドテクノロジーを使いたくさんのブラウザー情報を集めても、流入・遷移したページの直帰率が高い場合は本末転倒だ」と示唆したが、今回は本末転倒にならないよう「接客工程」の改善方法を考察してみよう。

KPIを整理する

 KPIとはkey performance indicatorの略で、日本語では重要業績評価指標と呼ばれる。例えば、ウェブサイトはアクセスが経由された先の情報が、1コンテンツ単位(1SKU単位)で、「検索エンジン」から、「ノーリファラー(ダイレクト)」から、「参照元サイト(URL経由)」からが横軸、それぞれの「訪問数(セッション)」「平均ページビュー」「直帰率」「平均サイト滞在時間」「新規訪問の比率」が縦軸で、各KPIを数値化する。

営業の知恵を活用する

 KPIを整理し得られた数値から、接客工程として直帰率KPIにフォーカスしてみると、

「優良コンテンツ:直帰率が30%未満のコンテンツ(10コンテンツ)」
「通常レベルのコンテンツ:直帰率が30%以上50%未満のコンテンツ(200コンテンツ)」
「要改善のコンテンツ:直帰率が50%以上のコンテンツ(300コンテンツ)」

と、コンテンツを3種に分類したとする。

次に、要改善のコンテンツを、

「その企業のトップセールスのノウハウをコンテンツ化」

することで改善してみよう。

 具体的には、自社のトップセールの商品に関する言葉をヒアリングし、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3Cでコンテンツを書き直し、接客工程を改善するで、アドテクノロジーを使いたくさんのブラウザー情報を集めても、流入・遷移したページの直帰率が低く、ボトルネックが解消できる(対立しやすい営業とマーケティングの関係も改善できる可能性もある)。

新ツールを活用する

 接客工程の改善を直帰率を基準に考えることにプラスして、新ツールを使うことで「人が接客する」という機能を付け加え、接客工程を強化することができる。

 具体的には、ウェブサイトに専用のタグを埋め込むことで、クラウド上のシステムから訪問ユーザーの行動をモニタリングし、「ページ間を何度も往来する」「同じページにずっと留まっている」といった傾向をキャッチしたならば、チャット・音声・ビデオ通話・コンテンツ提供を通じて、実店舗でいう「May I help you ?」から「商品の説明」や「レコメンド」を実現する。そして、例え、購入されなかったとしても「Have a nice day! 」を言うことも可能となる。

 この機能は、イスラエル製の「LivePerson」のようにクラウドサービスで提供されるものや、HTML5の技術であるWebRTC(Web Real-Time Communications)などを利用し提供されるものなど、今後、新しく市場が創造される分野だろう。

Check→Actionで考える

 「ウェブサイトの改善をPDCA(Plan-Do-Check-Action)」として行うべきといういう人も多いが、PDCAで考えなければならないという常識を捨て、「アクセス解析ツールで分析し、Check-Actionを繰り返すこと」で、接客工程の地道な改善を日常業務とすることができる。

今回のゴール

 接客工程の改善は一時的なプロジェクトとして考えるのでなく、日常の定型業務とする必要がある。直帰率ゼロを目指す活動は不良率ゼロを目指し工程で品質を作り込む発想と同じだ。そのためには、スクロールしたかしないか、滞在時間などを直帰率としてどう捉えるかなど、企業により直帰率そのものを定義する必要がある。そして、直帰率は売上に結び付くコンバージョン率とも相関関係がある重要なKPIなのだ。

田中猪夫
◇ライタープロフィール
田中猪夫(一般財団法人 日本総合研究所 特命研究員)
1959年11月19日、岐阜県生まれ。
日本版システム工学を専門とする。
20代に、当時発売したばかりのPCでのVARビジネスを創業
30代に、イスラエルITテクノロジーの日本への展開に尽力
40代に、外資系ITベンダーの日本法人のマネジメント
現在は、一般財団法人日本総合研究所 特命研究員。
デジタルマーケティング経営研究会」を主催・運営。
主な著書
勝ち続けるための- デジタルマーケティング経営(原著)」PDF版
あたらしい死海のほとり」(Kindle版)
New shores of the Dead Sea」(Kindle版)

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