連載第1回「ネギとデジタルマーケティング経営」で紹介したトヨタ生産管理(TPS)の「改善は後工程から行う」という知恵は、デジタルマーケティング経営に役に立つ。私の手元に某自動車ディーラーの経営改善をTPSで行ったレポートがあるが、今回は、この改善事例を通じてデジタルマーケティング経営を考察する。
「後工程をキッチリ直していれば本当に必要なことは何かがハッキリし、前工程はどんな条件を整備してやればよいか、どんな形にならなければいけないかが明確になる」
「せっかくある工程を直しても、後ろの工程が目茶目茶だと、せっかく直した工程まで影響されておかしくなってしまう」
これらの理由により、TPSでは後工程から改善を行う。車の販売の場合は、
「お客様データ」→「ホット」→「受注」→注文書→書類取得→「車庫」→「登録」→「納車」
だが、改善は物作りと同様に逆(=後ろ、後工程)から進める。
「納車」→「登録」→「車庫」→書類取得→注文書→「受注」→「ホット」→「お客様データ」
自動車ディーラーの場合の最終後工程は「納車」である。デジタルマーケティングではどこになるだろうか。おそらく、人により最終後工程は違う。
ウェブサイトを改善する人は(1)を最終後工程と考え、マーケティングオートメーションを実装する人は(2)を最終後工程と考え、営業の責任者は(3)を最終後工程と考え、経理部門は(4)を最終後工程と考え(IFRSでは売上は検収基準)、メンテナンス部門は(5)を最終後工程と考えている。
一般的にデジタルマーケティングを行う人は(1)で思考が止まり、MAがブームになると(2)が最終後工程になり、マーケティングROIが必要になると(3)が最終後工程になり、(3)と(4)を繋ごうとすると「顧客とは何か」ということが問題になり、CMOになると(5)を最終後工程と考え全体最適を構築するという感じだろうか。
参考までに、拙著「勝ち続けるための-デジタルマーケティング経営」で示した全工程を後工程から順に示す。
「人(顧客)と物(商品)が一致」(仕組みが必要)
↓
(SFA)
↓
「リードレベル」からホットまでのナーチャリング(MAツールが必要)
↓
「メールアドレスレベル」から「リードレベル」(MAツールが必要)
↓
「クッキーレベル」から「メールアドレスレベル」
↓
接客工程(改善が必要)
↓
「クッキーレベルまで」
↓
接客工程(改善が必要)
↓
「リードジェネレーション」
「デジタルマーケティング(1)(2)」と「デジタルマーケティング経営(3)(5)」の違いは最終後工程をどこにおくかによる改善範囲の違いだ。まずは自社のデジタルマーケティング経営の全工程を把握する必要がある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」