コトラーはマーケティングの父と呼ばれ、ドラッカーはマネジメントの父と呼ばれている。コトラーはSTP/4P理論で、ドラッカーは「ビジネス(事業)=マーケティングとイノベーションによる顧客創造」と定義したことで有名だ。
コトラーはマーケティングを、ドラッカーは経営を追求した。この連載ではマーケティングと経営を一体として考えることを「デジタルマーケティング経営」と呼んでいるが、マーケティングがデジタルマーケティングになれば、顧客創造はTargetされたSegmentでの「個の単位」のマーケティングになる。
あるグローバルIT企業のマーケティング部門が、世界中のマーケターを集めミーテイングを行った。テーマは、
「自社の創造すべき顧客は誰か」
ある人はOEM先、ある人は法人、ある人は個人、ある人は家族、と議論はなかなかまとまらず、結局結論はでなかったらしい。同じグローバルなeコマースのAmazonは単純で、購入した個人が顧客だ。一般的な企業では「購入した最終の人」「購入した最終の会社」「販売したリセラー」の少なくとも3種類の顧客を持つ。世界的な傾向として、「自社の顧客を個人とする会社(法人の中の個人を含む)」、「法人とする会社」のどちらが成長しているだろう。デジタル社会が進むことで成長した会社は前者、従来のビジネスを守る会社が後者であるならば、顧客をどう捉えるかは経営的にもマーケティング的にも重要なファクターだ。
「自社の創造すべき顧客は誰か」が明確でなくとも、経営が順風満帆な場合は問題にならないと思うが、危機に陥った場合、ドラッカーがいうように「ビジネス(事業)=マーケティングとイノベーションによる顧客創造」ならば、「顧客を創造する活動」は、不効率で、チグハグで、企業力、組織力が発揮されにくい。
最初に自社の顧客の粒度をPositioningすることは、デジタルマーケティングでは重要だ。例えば、デジタルマーケティング部門で扱う顧客になる前の「リードは個人単位」、SFAで扱う「リードは法人単位」、ERPで扱う顧客は「販売したリセラー(法人)」、メンテナンスで扱う顧客は「購入した最終の企業の運用部門」となると、システムごとに違う顧客やリードが存在することになる。ちなみに、鉄の業界は顧客を「需要家」と業界全体がPositioningしている。
今回のゴールシステムごとに違う顧客が存在してしまう事態を防ぎ、ビジネスの目的(顧客の創造)に企業力、組織力が発揮できるようにするためには、少なくとも「顧客の粒度のPositioning」に対し、デジタルマーケティング部門とIT部門でコンセンサスを得る必要がある。前述のあるグローバルIT企業のようにそれぞれの部門の人々が何度も集まり議論を重ね、「自社の創造すべき顧客は誰か」を定義するのもコンセンサスを得る方法のひとつだろう。
また、デジタルマーケティングの全体がまとめられ、「顧客の粒度をPositioning」が明確化されているバイブル的な書物をそれぞれが読み、反対意見などを集め、議論しながら「顧客の粒度をPositioning」し、「自社の創造すべき顧客は誰か」を収れんさせていく方法もある。どのような方法であれ、自らのポジションを確立するプロセスがデジタルマーケティングを経営に役立てるには必要不可欠だ。
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