2003年は家電のデジタル化が家電とPC産業の動向に影響を与えた1年だった。松下、NECは復活の兆しを見せ、ソニーは不振。一方で、AppleやDellも家電市場を狙っている。
構造改革とデジタル家電が明暗を分けた総合電機10月に発表された国内総合電機各社の中間決算を見てみると、今期業績を伸ばした企業は、携帯電話やデジタルカメラ、液晶・プラズマの薄型テレビ、DVDレコーダといったデジタル家電が業績の牽引役となった。
松下電器産業はDVDレコーダや薄型テレビなどのデジタル家電が好調な上に構造改革の効果が現れ、2004年3月期の中間決算は売上高が横ばいながらも純利益は前年同期比32%増となっている。松下電器は2002年4月から松下通信工業などグループ5社の完全子会社化と事業ドメイン制などを柱とする構造改革を進めてきた。2003年8月にはミネベアと松下電器モータ社(社内カンパニー)の統合を発表し、12月には兄弟会社の松下電工の子会社化とインターネットサービス事業の分社化を発表している。
西垣体制での構造改革が一段落し、今年4月に金杉新体制になったNECも好調だった。同社の2004年度中間決算は純利益が前年同期15倍の154億円。携帯電話端末の販売と通信のIP化を背景にネットワークソリューション事業が伸び、分社化した半導体事業も好調だった。金杉社長は3〜4年以内に営業利益率7%を目指すという強気の中期戦略を発表している。
シャープは圧倒的なシェアを誇る液晶テレビとカメラ付き携帯が好調な伸びを示し、純利益が22.1%増の増収増益をはたした。同じく関西に本社を置く三洋電機も携帯電話とデジタルカメラが好調で、純利益75億円と前年同期比205%増の好決算だった。
一方、デジタル家電の割合が低い富士通は半導体が好調で赤字幅を縮小したものの、ソフト事業の落ち込みをカバーできなかった。日立製作所や三菱電機も白物家電の国内需要が落ち込んだことで、足を引っ張られる格好となった。東芝は海外PC事業が不振で赤字に転落した。米国ではDellとHPを中心にPCの低価格競争が激化しており、高付加価値路線の東芝はシェアを落とした。
改革が遅れて減収となったのがソニーだ。ソニーは第2四半期の決算が営業利益34.3%減と事前の予想を下回り、2003年3月期の第4四半期が大幅赤字で株価が暴落した4月末の「ソニーショック」が依然として尾を引いている印象を与えた。ソニーは第2四半期決算発表の直後にグループ全体で従業員を2万人削減する方針を固め改革色を強めている。12月には出遅れたHDD/DVDレコーダー市場でのシェア奪回の糸口として「PSX」を発売し、注目を集めた。
半導体専業メーカーも好調総合電機各社から再編された国内半導体メーカーも好調なデジタル家電に支えられて順調な滑り出しを見せた。1999年に日立とNECのメモリ事業を統合してスタートしたエルピーダメモリ(旧NEC日立メモリ)は、2002年11月に日本テキサツインスツルメンツ出身の坂本幸雄氏を社長に迎えて経営を刷新。2003年6月にはインテルなどから815億ドルの資金調達に成功し、商品ラインと設備投資を拡大している。
同じく2002年11月にNECからシステムLSI事業を分社化したNECエレクトロニクスは2003年7月に東証一部に上場した。10月に発表した中間決算では純利益135%増を達成し、好調な業績を背景に設備投資を拡大、株価も順調に推移している。他にも日立製作所と三菱電機が2月に半導体事業を統合してルネサステクノロジを設立し、富士通とAMDも4月にフラッシュメモリ事業を統合している。10月に開催されたCEATECでは半導体各社のトップがそろって講演し注目を集めた。
今年も止まらなかった携帯電話の進化加入者数では飽和したと言われている携帯電話も端末の進化は今年も止まらなかった。5月に発売されたJフォンの「CDMA2000 1x」とNTTドコモの「505iシリーズ」は100万画素を超えるデジタルカメラを搭載した。また、505iではマクロメディアのFlashを搭載しマルチメディア機能が強化された。一方、5月にはNTTドコモがiモードでクレジット決済可能な「DoCommerce」を開始、10月にはNTTドコモとソニーがソニーの非接触ICカード技術「FeliCa」を搭載した携帯電話機を利用し、様々なサービスを提供するための基盤作りを行う新会社フェリカネットワークスを2004年1月を目処に設立すると発表した。12月にボーダフォンから発売されたNEC製の携帯電話端末「V601N」は地上波テレビ放送のアナログチューナーを搭載し2.2インチの液晶画面でテレビを見られる。12月に発表された2004年2月発売予定のNTTドコモのFOMA端末「900iシリーズ」ではiアプリの機能を強化、携帯型ゲーム機レベルの性能を実現するという。
ITと家電の融合デジタル家電の台頭でIT産業と家電の融合が進んだのも今年の特徴だ。7月には早くから携帯電話やHDDレコーダーでのLinux利用に取り組んできた松下電器産業、ソニー、NECを中心に家電向けのLinux開発を推進するCE Linuxフォーラムが設立された。一方、Windws CE.NETで家電分野への進出を図りたいマイクロソフトは、9月にトロンをベースに組み込みプラットフォームを開発するT-Engineフォーラムと提携を発表、T-Engine上でWindows CE.NETを動作させるという。
ソフトウェア分野では協調的な取り組みが進む一方で、ハードの世界ではAppleのポータブル音楽プレイヤーiPodやGateway、Dellの液晶テレビ参入など家電メーカーを脅かす動きも出てきた。家電のデジタル化は部品の標準化、コモディティ化を加速し、IT産業の水平分業モデルになれたPCメーカーの参入が容易になる。2004年初頭にはHewlett-Packerdも薄型テレビに参入するという説もあり、PCメーカーの家電参入は今後も続きそうだ。
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