NEC金杉社長が強気の中期戦略、「ネットワークと半導体で営業利益率7%を目指す」

山岸広太郎(CNETJapan 編集部)2003年10月30日 20時18分

 10月30日、NEC 代表取締役社長の金杉明信氏が都内で会見し、同社の中期成長戦略について説明した。

 会見の冒頭、金杉氏は「今年4月に社長に就任して以来、経営方針についてはこの平成15年度のみについて話してきた。社内では“15年危機”と呼んで有利子負債の削減と株主資本の回復に一丸となって取り組んできた。今までは中期の戦略を話せる状況ではなかったが、上期の予算を達成し下期の足がかりができたと考えている」と営業利益が前年同期比282%の増の777億円に達した中間決算を評価し、「本日、やっと中期の成長戦略を説明することができてうれしい」と、同社が新たな成長フェーズに入ったことを示した。

NEC 代表取締役社長 金杉明信氏

 中期成長戦略では3〜4年以内に営業利益率7%、ROE15%を目標にする。

 NECは今年4月から従来のカンパニー制を廃止し、ITソリューション事業、ネットワークソリューション事業、エレクトロンデバイス事業の3つの事業ライン制を導入した。ITとネットワークを統合したソリューションを強化する一方で、市況の変動に業績が影響を受けやすく設備投資も必要でリスクが大きい半導体などのエレクトロンデバイス事業については、NECエレクトロニクスやエルピーダメモリのように分社化による外部資金の調達を進めてきた。

 中期成長戦略ではネットワークソリューション事業とエレクトロンデバイス事業を成長の柱とし、それぞれ9%と5%の成長を見込む。一方で、ITソリューションに関しては収益基盤としての安定化を図り成長率としては3%程度と低めに見ている。

 金杉氏は「多くの人は認識していないかもしれないが、今日の日本はブロードバンドや携帯電話などユビキタスネットワーク環境の整備が世界で最も進んでいる。今後もコンシューマー主導でますます発展していくはずだ。NECとしてはまず国内のこの成長機会に乗って確実な収益の確保と安定成長を図り、そこで培ったノウハウや製品力をベースに次の成長機会としてグローバル展開を進めていく」と2段階の成長戦略を語った。

ネットワークインフラの構造変化がもたらす国内の成長機会

 国内での具体的な成長戦略としては、デジタル家電向けのエレクトロンデバイス事業の成長と、コンシューマー向けの携帯電話事業とキャリア・企業・官公庁・自治体向けのネットワークソリューション事業に注力する。

 携帯電話端末に関しては2004年中に現行のPDC方式とFOMAなどの3G端末の需要が逆転すると予測し、年率6%の成長を維持しながら3Gでも国内シェアNo.1を目指すとしている。

 一方、ADSLやFTTHなどのコンシューマー市場での通信インフラの拡大につられて、企業向けのブロードバンドソリューションに対する需要が拡大しており、NECではアーキテクチャのオープン化を武器にITと融合したソリューションを売り込んでいく。金杉氏は「ネットワークはITソリューションとの統合で強みが出せる。ブロードバンドソリューションに関してはレガシーからオープンへの移行を進めていく。IPテレフォニー、広域イーサ、アウトソーシングなどコンピュータ業界が取り組んできたのと全く同じ動きが進んでいる」と語り、特にIP電話やIPセントレックスなどのIPテレフォニー市場について「オフィス向けのIP電話、IPセントレックスなどの市場では過半数のシェアを持っており、品川や汐留などの大規模再開発でも過半数を取った」と自信を示した。

ITソリューションは品質とコストで収益力を強化

 ITソリューションに関してはSIサービスを安定的な収益基盤として更に成長させる。そのため外部のコンサルティング会社との提携や買収でコンサルティング力を強化し、戦略的アウトソーシングなどのコストダウンを顧客に提案していく。SIサービスの営業利益率10%を更に向上させるためにソフトウェア開発・調達プロセスなどのSI標準プロセスに関するノウハウを体系化して展開することにより、開発コストを30%削減することを目指す。また、中国、インドでのオフショア開発を更に強化し開発体制を現行の2900人から1.5倍の4500人に拡大する。オフショア開発によって「国内開発に比べて30〜40%程度のコスト削減効果がある」(金杉氏)という。

 サーバやネットワーク機器などのハードウェアに関してはソリューション事業を売り込むための武器という位置づけで、特に3G端末、広域イーサ、VoIPなどへの重点投資を行なうという。サーバ事業に関してはブレードやIA64などの高価格商品を強化するが、富士通や日立のような世界市場への展開は考えていない。

 PCに関しては「ユビキタス化が進んでも最も重要なデバイスとして残る」(金杉氏)という認識からSoundVuや水冷、デジタルTV対応など独自技術を生かせる商品開発で国内シェアNo.1の維持と営業利益率3%を目指すという。

グローバル展開は中国発の3G携帯

 新たな成長機会として取り組むグローバルな事業展開については中国で進めている2.5G携帯電話事業が足がかりとなる。NECは携帯電話の開発拠点や合弁の3G携帯電話設計会社を中国に設置しており、「海外向けの3G携帯端末についてはすべて中国で開発製造し輸出していく体制を取る」(金杉氏)という。

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