今年の上半期のオープンソース分野の話題を振り返ると、ビジネスシーンでの注目の高さが目立つ。エンタープライズコンピューティングの分野ではベンダー、ユーザー双方ともにLinuxを中心としたオープンソース製品の導入を本格化させた。一方で、情報家電や携帯電話端末などの組み込み分野でもオープンソースの利用が広がっている。ただ、米SCOによる米IBMのUnixライセンスに関する提訴など、ビジネスシーンでの利用にはまだまだ課題が多いといえる。
拡大するLinuxビジネス
今年は大手ITベンダーによるオープンソース・ビジネスの取り組みが一気に表面化した。中でもLinuxの台頭は目覚しいものがある。1月にニューヨークで開催されたLinuxWorldでは米IBMや米Hewlett-Packard(HP)などの大手IT企業が参加し、展企業は2002年の120社から150社に増えた。会期中に明らかになった情報によると、HPは、2002年のLinux関連製品の売上高が20億ドルを計上。またIBMは、Linux関連製品の売上高が15億ドルに達したことを明らかにした。
日本でもミラクル・リナックスなど独自のLinuxディストリビューションを展開しているオラクルは「Unbreakable Linux」を提唱。5月に東京で開催されたLinuxWorldでも大きなブースがひときわ目を引いた。また、7月には産業技術総合研究所がAMDの64ビット・プロセッサ「Opteron」を採用したLinuxで稼動するIBM製サーバeServer 325で構成する世界最大級のスーパーコンピュータを導入することが明らかになった。
日本の大手電機メーカーもLinuxビジネスの展望を明らかにしたが、米国と比べると小さいのが現状。NECはLinuxを活用した基幹システム構築事業を、昨年度の約100億円から200億円規模まで拡大すると表明している。IDCの調査によると国内サーバOSの出荷実績ではLinuxがUnixのシェアを奪う傾向があり、2001年にLinuxのシェアが約6%だったのが2002年の第3四半期から第4四半期にかけて7〜8%へと緩やかに拡大しているという。同社では2004年の後半にLinuxがUnixを抜くと見ている。
政府もオープンソース採用に積極的
ビジネスでのオープンソース利用が広がる一方で、政府機関もオープンソースに積極的に取り組んでいる。米国オレゴン州政府では新たにプログラムを購入する際、通常のソフトウェアに加え、オープンソース・ソフトウェアも検討の対象に入れることを求める法案が提出されれ議論になった。ドイツ政府もLinuxデスクトップ環境の1つとして知られるKDEの開発に資金を提供している。韓国、中国、日本などアジア各国の政府もオープンソース・ソフトウェアの利用に積極的でアジア域内での共通ビジョンを模索している。これらの動きはマイクロソフトの1社独占による弊害を避ける狙いが大きい。マイクロソフト側は対応策として政府向けのソースコード開示プログラムを開始している。
日本政府はe-Japanや情報家電の戦略研究会「e-Life」などで、オープンソースの利用を提唱している。特に情報家電分野では日本が世界をリードすると言われており、ソニーやNECなどの大手電機メーカーの動きが注目されている。松下、ソニーなど大手メーカー8社が「CE Linuxフォーラム」を設立している。
苦戦する商用ベンダー
ビジネス分野のオープンソース利用の拡大は商用ベンダーにとって良いことばかりではない。アプリケーションサーバの分野ではオープンソースベースの「JBoss」が成長しており、BEAを脅かすのではないかと言われている。データベースの分野でもスウェーデンのMySQLやPostgreSQLが台頭し、商用データベースに挑んでいる。
反オープンソースの急先鋒は何と言っても米SCO Group(旧カルデラ)だ。今年の3月、自らもLinuxディストリビューションを販売していたSCOは、Unixのライセンス契約に違反したとして米IBMを提訴した。この問題はオープンソースコミュニティの反発を招く一方で、オープンソースソフトウェアの特許侵害という問題意識を多くの企業ユーザーに投げかけた。裁判の争点はSCOの主張する特許侵害を立証できるかどうかにかかっているが、アナリストからは否定的な見解も出ている。訴えられた側のIBMも8月にSCOを逆提訴している。
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