ここでは国内大手電機メーカーを中心に、製造業の動きを見ながら2003年上半期を振り返ってみよう。カメラ付携帯電話端末やデジタルカメラの売上が好調で、「デジカメ景気」とも呼べる恩恵を多くの企業が味わった。一方で株式市場には「ソニーショック」が到来、4月には日経平均株価が7600円台まで落ち込んだ。国内の半導体メーカーは統合再編が進み、大手企業の社長交代も多い時期でもあった。
カメラ付携帯電話/デジカメが好調、企業の業績向上に寄与
2003年上半期、最も注目に値するのはカメラ付携帯電話やデジタルカメラメーカーの業績の好調ぶりだ。
まずカメラ付携帯電話では、シャープの成長が著しい。ガートナーによる2002年携帯端末ベンダーのシェア調査によれば、1位のNEC、2位のパナソニックに続き、シャープが前年の5位から3位へ躍進した。NTTドコモへのカメラ付携帯電話を他社に先駆けて市場に投入したことが大きく貢献した。
シャープは5月、カメラ内蔵型携帯電話機の累計出荷台数が1000万台に到達したと発表。カメラ付携帯電話や液晶テレビが好調なことから、シャープの03年3月度決算は大幅な増収増益となった。
ただしシャープの地位が安泰なわけではない。2003年第1四半期におけるガートナーの国内携帯電話機市場調査によれば、シャープはカメラ付携帯電話端末市場の首位の座をNECに奪われている。また、携帯電話端末全体のシェアも4位の三菱電機との差が縮まった。
NECもカメラ付携帯電話の好調ぶりが業績を押し上げた。2003年3月度の業績は最終損失が245億円と2期連続の赤字だったが、 2004年3月期第1四半期にカメラ付き携帯電話の販売台数が世界で2倍以上の伸びを示し、売上増に貢献。第1四半期の連結決算は当期純利益が7億円の最終黒字となった。
デジカメメーカーも業績は軒並み好調だ。中でもキヤノンの業績の伸びは著しい。2002年12月期の売上高は前年比1.1%増の2兆9401億2800万円、純利益は同13.8%増の1907億3700万円となり、過去最高を記録。2003年6月中間決算は売上高が前年同期比10.9%増の1兆5355億8800万円、純利益は同74.5%増の1277億6700万円となっている。キヤノンは2003年12月期の通期業績予想を上方修正しており、さらなる成長を見込む。
そのほか、オリンパス、三洋電機などもデジカメの売上が好調で、収益を順調に伸ばしている。
株式市場に「ソニーショック」到来
一方で、デジカメやCCDなどが好調だったにもかかわらず株価を大幅に下げた企業がある。ソニーだ。2003年3月期の売上高は前年比1.4%減の7兆4736億円、当期純利益は同7.5倍の1155億円と大幅な黒字を確保したが、この数値が従来の予想を大幅に下回っていたこと、さらに2004年3月期の営業利益が大幅減益の見通しになると発表されたことから、大量の株式に株式が売られ、「ソニーショック」とまで呼ばれた。
ソニーの今後の業績を占う上で試金石となる製品は2003年上半期にいくつか紹介されている。携帯型ゲーム機のPSP、HDDレコーダを搭載した新型PlayStationのPSX、高価格・高品質をうたう新ブランド「クオリア」の製品群だ。PSXは2003年末の発売が予定されているほか、下半期には新たなエレクトロニクス商品群も投入される。また、ソニーは業績回復に向けて第3四半期から構造改革を行うと述べており、今後の動向に注目だ。
半導体メーカーは設備増強、再編へ
2003年上半期は半導体業界で大きな動きが起こった。企業の統合再編が進むとともに、各社は生産設備増強に向け、新たな投資を始めている。
富士通は4月、フラッシュメモリ事業をAMDと統合すると発表。7月には米国に合弁会社「FASL Limited Liability Company」を設立し、製品のブランド名を「Spansion」に決定した。
日立製作所と三菱電機は4月、システムLSI事業を中心とする合弁会社のルネサステクノロジを設立。会長&CEOには元三菱電機 専務取締役 半導体事業本部の長澤紘一氏、社長&COOには元日立製作所 上席常務 半導体グループ長&CEOの伊藤達氏が就任した。2003年度は売上高9000億円以上を目指すとしている。
一方、2002年11月にNECから独立した、同じくシステムLSIを主力とする半導体専門会社のNECエレクトロニクスは7月に東京証券取引所第一部に上場。公募価格を上回る初値をつけた。NECエレクトロニクス上場によりIT関連企業の株式相場が復活するのではという期待も寄せられている。
日立とNECが1999年に設立した、DRAM事業を行う合弁会社のエルピーダメモリは6月、815億円の増資に成功。これにより300mmウエハのDRAM生産能力増強を図るとしている。
また、ソニーもシステムLSIの大幅な設備投資を発表した。米IBMと東芝の2社と共同で開発を進めるネットワークプロセッサの「CELL」を中心に今後3年間で総額2000億円を投資するという。
米IDC半導体プログラム・バイスプレジデントのMario Morales氏は半導体企業の統合再編が増加すると予測しており、今後も様々な面で企業の提携・統合が進む可能性がある。
大手企業の社長交代が相次ぐ
2003年の上半期は大手企業の社長交代が相次いだ。国内の大手メーカーでは、NECの西垣浩司前社長が代表取締役副会長に就任し、新社長に前取締役専務 NECソリューションズ カンパニー社長金杉明信氏が就任した。6月には富士通の秋草直之氏が代表取締役社長から代表取締役会長に、後任には経営執行役常務であった黒川博昭氏が就任した。
また、外資系企業の社長交代も相次いだ。5月には日本HPの高柳肇氏が代表取締役社長を退任、新社長に樋口執行役員が就任。インテルも前インターネット・アーキテクチャ営業統括本部長の吉田和正氏が日本法人の取締役社長に、Gregory R Pearson氏が取締役会長に就任している。
7月にはサン・マイクロシステムズとマイクロソフトが相次いで社長を日本人から米国の経営陣の兼任へと交代させ、大きな話題となった。さらにマイクロソフト前社長の阿多親市氏はソフトバンクBBの常務に招聘されたことが明らかとなっている。阿多氏は8月25日付けで正式に就任する予定だ。
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