ソニーは6月10日、新ブランド「QUALIA(クオリア)」の新製品を発表した。QUALIAは技術的なこだわりを重視し、ユーザーに長く利用されることを想定した製品群となるという。
QUALIAとは聞きなれない言葉だが、脳科学の分野で使われる数値に表せない脳や心の動きを示す用語で、ソニーでは「人の心を感動させるようなもの」という意味で使っているようだ。説明に立った同社副社長の高篠静雄氏も「2年前に出井氏から『QUALIAを担当せよ』と言われたときはKOREAを任されたのかと聞き違えた」と冗談を言うほどだが、同社会長兼CEOの出井伸之氏が「このQUALIAという言葉に出会ったとき、会社の方針が定まった」と述べるなど、ソニーにとっては重要なキーワードとなっている。
発表の席に立った高篠氏はまずQUALIAが誕生した経緯について説明した。「現在はAV製品のコモディティ化が進んでいる。デフレの原因としてよく中国の安い製品が挙げられるが、そんなことはない。実際は業界の無意味な価格競争の結果だ」と厳しく非難。その上で「今はものづくりが見直される時期に来ている」と語る。
経済性や生産性より技術的こだわりを重視
高篠氏によると、QUALIAは経済性や生産性を追求する中では実現の難しかった、技術者の細かい工夫やこだわりを重視しているという。
小型デジタルカメラ「Q016-WE1」 | |
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今回発表されたのはホームシアター用プロジェクター「Q004-R1」、オーディオCDシステムのメインユニット「Q007-SCD」とスピーカーシステム「Q007-SSS」、トリニトロンカラーモニター「Q015-KX36」、小型デジタルカメラ「Q016-WE1」の4製品。例えばQ016-WE1は幅69.1mm、高さ24.0mm、奥行き16.8mmと成人男性の親指ほどの大きさながら、200万画素のレンズを備え、A4サイズに引き伸ばせる程度の画質を持つ。手ぶれ補正機能も備えており、高速シャッターで4枚連続撮影した中から特徴点を見つけて画像を重ね合わせることで、ノイズの少ない1枚の画像を作り出すという。
価格はプロジェクターのQ004-R1が240万円(8月1日受注開始)、オーディオシステムのQ007-SCDとQ007-SSSが合わせて150万円(8月11日受注開始)、カラーモニターのQ015-KX36が130万円(6月24日受注開始)、デジタルカメラのQ016-WE1が38万円(リモコンやコンバージョンレンズなどを同梱、6月24日受注開始)となっている。
ソニーではQUALIAをユーザーに長く使われる製品と位置づけており、すべて受注生産となる。注文はソニーマーケティングが東京と大阪に開設する専門店舗のほか、電話でも受け付けるという。ただしインターネットでの販売はない。これは「お客様にきちんと説明した上で販売したいと考えているため」(ソニーマーケティング代表取締役社長宮下次衛氏)とのことだ。出井氏も「QUALIAは技術面だけではなく、販売面でも革新的だ。これにより、量販店での商品の売り方も変わっていく可能性がある」との考えを示唆した。
QUALIAブランドのパソコンは登場するか
ソニー会長兼CEO 出井伸之氏 | |
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高篠氏によると、現在QUALIAブランドとして進行しているプロジェクトは、今回発表された4製品を含めて17つあるという。他に今後どのような製品がQUALIAブランドとして提供されるかという点については、高篠氏はコメントを差し控えた。記者からは「スペックがすぐに上がるパソコンの場合、ユーザーが同じものを長く使うことは難しいが、QUALIAブランドのパソコンの予定はあるか」という質問が出た。これに対しては「進行中の17プロジェクトの中にはないが、パソコンの基本性能だけあればいいというユーザーもいるはずだと考えている。現在のように全ての機能が入っている必要もないのではないか」(高篠氏)として、VAIOなどとは異なるコンセプトでQUALIAブランドのパソコンを検討していることを明らかにした。
また出井氏も「全ての製品カテゴリでQUALIAを出していきたい」と語り、QUALIAブランドのパソコン、もしくはQUALIAのコンセプトに近いVAIOの開発に積極的な考えを示した。出井氏自身は現在進んでいるパソコンのスペック競争にも懐疑的な姿勢を示し、「インテルやマイクロソフトとは違う開発スピードを考えないと、パソコン業界は自分自身の首を絞めるようなもの」との危機感をあらわにした。
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