中国ECサイトが爆発的な売上を記録する「独身の日」--3つの成長要因

居山正義、三宅真衣(iResearch Japan)2014年10月17日 09時00分

 中国の経済成長が止まらず、なかでもネットショッピング市場の成長が著しい。市場の取引規模や「双十一(独身の日)」である11月11日、越境ECなど、中国ネットショッピング市場の最新動向について、中国アイリサーチの調査データを基に3回にわたり紹介していく。

ネットショッピング市場の成長要素

 中国のネットショッピング市場における取引規模が、2013年に1万8409億5000万元(約29兆円)に達した。ネットショッピング市場の拡大を加速させた要素として、リアルな店舗販売をメインとしてきた既存事業者の大規模なEC市場参入、三・四級都市(※注釈参照)の急成長、モバイルインターネットの発展が挙げられる。

 家電販売大手の「苏寧易購(suning.com)」がEC展開後に急成長したように、既存事業者のEC参入は、中国EC市場の成長を後押しする最大要因とも考えられる。既存事業者は、すでに大規模な商品数、販売網、人員、ノウハウを持っているため、EC参入後にさらなる利益を見込める。2012年上半期時点で、北京だけで59社の大手既存事業者が、ECに参入している。2009年時点で14社だったことを考えると、めまぐるしい成長だと考えられる。

 また定義はさまざまだが、日本のEC化率がBtoCで3.7%(2014年8月発表、経済産業省「電子商取引に関する市場調査」参照)といわれる中、中国では消費財小売総額に占めるネットショッピングの割合が、2014年で約9%、2017年には12.4%に達する見通しである。日本より圧倒的に広い国土を持つ中国では、ネットショッピングが国民の生活にフィットしており、リアルからネットへのシフトが日本以上に進んでいるのが現状だ。


中国のネットショッピング市場における取引規模(出典:iResearch Japan)

 中国ネットショッピング市場の急成長は、モバイル市場の成長がけん引している。2013年において、中国ネットショッピング市場全体の成長率が39.4%だったのに対し、モバイル市場は168.6%の成長を見せている。

 その背景には端末普及やネット回線の改善がある。経済成長に伴い、中流階級層や農民もモバイル端末を持つようになり、三・四級都市にもネット環境が一部で整いつつある。スマートフォン端末やタブレットPCも多く生産されるようになり、タブレットPC出荷台数だけでも、2010年の190万台から、2013年には1760万台まで増加している。結果、ネットショッピングが爆発的に普及しているというわけだ。

「双十一(独身の日)」の成長と3つの要因

 中国ネットショッピングの一大イベントと言えば、11月11日の「双十一(独身の日)」。これは1年で一番大きなネットショッピングのセールの日で、各社が送料負担や大幅な値引きなど、赤字覚悟で大セールを行う。

 もともとはネットショッピング最大手の「天猫(TMALL.COM)」が先駆けとなり、「独身の人はデートにも行けないし、ネットで思いっきり買い物しよう!」という発想からスタートしたもので、これが消費者に大ウケ。今では各社がそれにならい、同日に一斉大セールを実施するようになった。

 では、その「独身の日」には1日でどのぐらいの売上をあげるのだろうか。先人である天猫を例に見ていこう。天猫の「独身の日」1日の売上は、2012年で91億元(3200億円)、2013年で350億元(5800億円)。85.2%の成長を見せている。

 ちなみに同サイトでは、中国建国を祝う「国慶節」に合わせたセールも開催しているが、2012年の「国慶節」1日の売上は132億元(約2150億円)、2011年だと52億元(約850億円)といずれもすごいが、「独身の日」の爆発的な売上には追い付かない。また、日本の楽天のスーパーセールが、100時間で644億円(2014年3月)ほどなので、売上規模だけみても中国マーケットの巨大さ、「独身の日」の盛り上がりがわかるだろう。

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