消費者スマートフォン戦争の存在が認められた、最も印象的な最近の事例の1つが2013年前半に発表されたMicrosoftの「Nokia Lumia 920」のコマーシャルだ。「The Wedding」(結婚式)というタイトルが付けられたそのコマーシャルでは、AppleのiPhoneファンとサムスンのGALAXYファンが結婚式場の通路を挟んで座っている。
何度かの皮肉のやりとり(最も印象的なのは、「邪魔なので、その巨大な携帯電話を動かしてくれないか」と「これを自動修正してみろ」という台詞だ)の後、全員入り乱れてのけんかが始まる。コマーシャルの最後に、Lumia 920を持った2人のユーザーが登場する。この人たちが920のことを知ったら、けんかを止めるだろうか、と1人が尋ねる。そして、「それはどうかしら。この人たちはけんかをするのが好きみたいだから」ともう1人が答える。
YouTubeで4万5500人以上のユーザーがこの動画を高く評価したことから判断すると、このコマーシャルは好意的に受け止められただけでなく、ユーザーの間でどのような議論が交わされているのかをモバイル企業が把握していることを明白に示すものでもあった。それは、そうした議論を認識し、同時に自らをその議論に投入するMicrosoftのやり方だった。
MicrosoftのMatt Donovan氏は、「われわれが市場に参入すると、すぐに真実が明らかになった。つまり、この分野の酸素はすべてAppleとサムスンに吸収されていた」と述べた。
しかし、iPhoneを買うために行列をつくる人たちを揶揄したサムスンの数年前のコマーシャルのように消費者の選択を直接批判するのではなく、Lumiaのコマーシャルはスマートフォンのブランドに対する人々の情熱をからかった。
Donovan氏によると、Microsoftはスマートフォン関連のデバイスや企業をけなすことはしたくないと考えたという。その代わりに、同社はすでにLumiaを所有している人を支持し、スマートフォンファンの間で飛び交っている類のコメントに人々の注意を向けさせたいと考えた。
「(人々は)Microsoftのコマーシャルに自分自身の姿を見たことを認めざるを得なかった。それはAppleとサムスンのファンの間で実際に交わされている議論、討論、会話だった」(同氏)
そして、Microsoftのような企業がこうした議論に気づいているのなら、Appleやサムスンもそれに注意を向けていると考えて問題はないだろう。実際に、これらの企業が大規模な挑発活動を裏で指揮することもある。例えば、サムスンが学生にお金を払って、オンラインでHTCのスマートフォンを中傷させた事例や、BlackBerryが2012年にオーストラリアのApple Storeで行った奇妙な「Wake Up」(目覚めよ)キャンペーンがこれに含まれる。
しかし、これらの企業が自分たちに向けられた否定的コメントに関して、何らかの対策をしているのかどうかは不明だ。だが、ジョージア大学のCandice Hollenbeck氏によると、企業が自社の批判者に対して、支持者よりも大きな注意を向けることはないかもしれないが、少なくとも同じくらいの注意は向けているという。
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