(編集部注:米CNETによる「iPhone 5s」のレビューを前編と後編の2回に分けて翻訳して公開します。後編は10月3日の公開を予定しています)
筆者は、むしろ「iPhone 5s」を「iPhone 5P」と呼びたい。「P」はポテンシャル、つまり潜在能力のPだ。Appleのこの1年は、半歩だけ進んだ1年であり、再構築の1年だった。それが名前にも表れている。Appleは、まったく新しい名前を付けるのではなく、iPhoneに「s」を加えるだけで済ませた。iPhone 5sには、コンピューティングプラットフォームとしての「iOS」の未来を変え、2014年の製品への道を切り開く可能性がある技術が導入されている。しかし、それらの変化は、今はまだ現れていない。その約束は、まだ実っていないのだ。
2012年に登場した「iPhone 5」は、過去最高のiPhoneだった。ユーザーの希望や予想が、ほぼ全て盛り込まれていたのだ。iPhone 5には数多くの新機能が追加された。LTEも採用された。そのアンコールとして、Appleは今年、何をやったのだろうか?同社は、いくつかの新たな改良点を付け加えた。さらに同社は、iPhone 5sと同時に「iPhone 5c」を発表した。Appleが1年に2つの新型iPhoneを提供したのは初めてのことだ。しかし、iPhone 5cは実際には、iPhone 5を色つきのプラスチックケースに収めたものであり、実際には今年の新型iPhoneは1つだけで、それがiPhone 5sだ。
ユーザーはより大きな画面、改良されたカメラ、より長いバッテリ持続時間を望んでいた。それに対してAppleが示したのは、指紋認証センサ、改良されたカメラ、そしてより高速なプロセッサだった。確かに速いことはいいことだが(特にバッテリ持続時間が犠牲にならない場合は)、iPhone 5sは斬新な製品だと感じられるものではなかった。
Appleは1年おきにこのようなiPhoneを発売する。「iPhone 3GS」や「iPhone 4S」がそうだ。なじみのある形の製品を繰り返すこのやり方は、「iPad」や「MacBook」でも見られる。しかし、スマートフォン市場は非常に変化が早く、12カ月前には愛されていた製品に、不満を感じる場合もある。Appleのグラフィックを一新したOSである「iOS 7」でさえも、確かに感触は違うが、それほどの衝撃はなかった。新しいカラー(ゴールドと「スペースグレイ」)でさえ、思ったほど大したものではないという印象を持つ人が多いだろう。
変化がないわけではないが、その多くは、未来に向けての道ならしのように見える。巧みな発想でホームボタンの下に置かれた指紋認証センサ、大きく改善されたグラフィック処理能力、モーショントラッキングが可能な「M7」コプロセッサ、そして64ビットコンピューティングが可能な新型「A7」プロセッサなど、中身には多くの変化がある。しかし、iPhone 5sを1週間使ってみると、指紋認証センサとカメラを除いては、これらの機能を活用する場面はなかなかないことに気づく。
2カ月後に、また同じことを考えてみるのもいいだろう。新しいアプリが出てくれば、iPhone 5sも本当の新しいiPhoneに見えてくるかもしれない。だが、今のところ、iPhone 5sはiPhone 5の改良版にとどまると言っていいだろう。iPhone 5はさらによくなった。どのくらいよくなったかは、アプリの実行速度や、機能を生かせるサービスに依存する。あるいは、本当にそのよさが見えてくるには、「iOS 8」まで待たなくてはならないのかもしれない。
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