ダークさでは負けていないのが、「木屋町DARUMA」。ある事件で「下手を打った」結果、両手両足を切断するはめになったヤクザが主人公。残虐描写が多いので、万人に推奨はできないが、異様な迫力に圧倒されるハードボイルド小説だ。
リアルな戦闘状況の描写が、戦場の悲惨さを際立たせる『もしも僕が戦場で死んだら』は、終戦直後の佐世保、日本人と米国人との間に生を受けた双子を主人公とする一般小説。双子のうち一人は米国にわたり軍人として1991年の湾岸戦争に従事、瀕死の重傷を負うが、もう一人は日本で会社員として平凡な人生を送る。決して交わることがないと思われていた2人の人生が、あることをきっかけに交差する――という筋書き。
もうひとつふたつストーリーにひねりがあってもよいように思うが、長いトンネルの向こうに、わずかに希望がほのみえるような描写や雰囲気づくりの手腕は鮮やか。今後の可能性を感じさせる。