まだまだあるが、今回はこれくらいにしておこう。
<h2>米国の「セルフパブリッシング革命」が巻き起こしていること</h2>
ここまで読んできた読者の中には、自己出版本、わけても「変わりダネ」編で紹介したような本について、「こんなのは、本じゃない」「まじめに取り上げる価値があるのか」などと、ネガティブな感想を持つ人もいるかもしれない。
「妄想ノート」のようなコンテンツは、従来であれば出版社の編集者の段階でふるいにかけられ、決して書店に並ぶことはなかった。その意味では、「本じゃない」という感想は的を射ている。
正直、筆者も「釣り」のようなコンテンツに「騙された」と感じたこともある。しかし、より広い観点からとらえると、こうした動きは、これから日本の出版界で起きることの予兆、と考えることができる。
2007年にアマゾンが「キンドル」をスタートさせて以来、劇的な変化に見舞われている米国の出版界では、まさに従来の意味で「本でない」ものが急増し、書籍市場を席巻しているのが実情だからだ。
その中でも注目されているのが、KDPに代表される「自己出版」と、本のコンテンツを電子データとして蓄積しておき、注文を受けてから印刷・製本する「プリント・オン・デマンド(POD)」だ。
以下、アメリカでの各種データを紹介しつつ、今後の日本の出版界を展望してみたい。
2012年10月、書籍の商品番号にあたるISBNを管理する米バウカーは、急増する自己出版本について、初めてのレポートを発表した(Self-Publishing in the United States, 2006-2011: Print vs. Ebook)。
このグラフは、刊行された紙の書籍について、出版社を通じた形で出版されたもの(伝統的出版)と自己出版されたものに分けて集計したものである(表計算ソフトの仕様で自己出版のデータが2005年~06年にもあるように見えるが、調査対象は06年以降)。