米国時間3月2日に行われたAppleによる「iPad 2」の発表会で、個人的に最大のサプライズは、病気療養中のSteve Jobs氏が登壇して自ら説明を行ったことだった。
Jobs氏が登場すると、来場者はスタンディングオベーションの状態。「深く関わってきた製品。だから欠席するわけにはいかなかった」とのコメントに、会場はさらに湧いた。iOS 4.3やGarageBand for iPad、iMovie for iPadのデモストレーションは、他の社員に任せたが、メインとなるiPad 2の説明はJobs氏が自ら行い、その進化を示してみせた。
発言にもJobs節が冴えていた。
「iPadは、2010年の4~12月までの9カ月間で、1500万台を出荷した。これは過去に発売されたすべてのタブレットPCの出荷台数よりも多い。市場シェアは90%以上。サムスンは、200万台のタブレットPCを出荷したというが、実売は少なく、年末には店頭に多くの製品が残っていた。他社は、タブレットPCの開発をやり直している」と過熱するタブレット市場での他社の動きをけん制。「他社のタブレットPCはモダンタブレットではない。iPadこそがモダンタブレットPCである」と言い切った。
さらに、「App Storeには35万以上のアプリケーションがあり、そのうちiPadに最適化されたアプリケーションは6万5000本に達している。しかし、Androidではタブレットに最適化したアプリケーションはわずか100本しかない」とも述べた。
プレゼンテーションのスクリーンには、Android搭載のタブレットPCを出荷しているサムスンやモトローラなどのロゴを並べながら、「2010年はiPadの年だったが、2011年はこれらのタブレットメーカーの年になるのか?」と自ら問いかけ、「もしAppleが何もしなければ、2011年は他のタブレット製品が市場に広がる可能性があるだろう。しかし、競合他社は、初代iPadにすら追いついていないのが実態。そして、アップルは座して待つつもりは毛頭ない。iPad 2は改善したというものではなく、新たに設計したもの。2011年はiPad 2の1年になる」と断言した。
このようにJobs氏は、ブレゼンテーションの中で、端々にAndroid陣営を牽制する言葉を散りばめた。「iPadのように、ポストPCと呼ばれる製品は、PCよりも使いやすく、直感的な操作ができるものでなくてはならない。それにも関わらず、他社はPCのように機能ばかりを追求している。これは間違いだ」などという発言もそのひとつだ。
しかし、Jobs氏のコメントとは裏腹に、Android陣営はタブレット市場で着実に存在感を高めようとしている。
例えばモトローラは、Android 3.0を搭載したXOOMを開発。日本でもKDDIを通じて4月上旬から発売することを明らかにしている。
KDDI社長の田中孝司氏は、「1月に開催されたCESには85機種のタブレットが展示されたが、そのなかでナンバーワンの評価を受けたのがXOOM。注目度ナンバーワンのタブレットを、いち早く日本に投入したかった」と意気込む。
LG電子もAndroid 3.0を搭載した8.9型のタブレット端末「Optimus Pad L-06C」を投入。NTTドコモを通じて発売する。「タブレット端末は、エンターテイメント分野に留まらず、ビジネスシーンでも広く利用できると考えている。Androidによる多彩なラインアップによってタブレット製品を展開していく考えだ」(NTTドコモ社長の山田隆持氏)とする。そのほか、日本でもNTTドコモが取り扱っていたGalaxy Tabを開発しているサムスンが、Andoid 3.0を搭載した「Galaxy Tab 10.1」を発表している。
また、富士通や東芝、オンキヨー、エイサーもWindows 7搭載のタブレットPCに続いて、Android搭載タブレット端末の製品化計画を明らかにしているなど、春以降の市場は一気ににぎやかになりそうだ。
米Strategy Analyticsが発表した2010年第4四半期(10~12月)のタブレット市場におけるAndroid端末のシェアは21.6%と、先行するiOS(iPad)の75.3%に大きく水をあけられた状況。しかし、第3四半期にはiOSが95.5%、Androidがわずか2.3%であったことを考えると驚くほど急速にシェアを高めたことがわかる。同社では、今後さらに、Androidのシェアが増加するとの予測も発表している。
世界のスマートフォン市場では、すでにAndroidがトップシェアとなり、iPhoneを引き離しつつある。タブレットでも同様の巻き返しを狙うべく、Android陣営の鼻息は荒い。
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