今年前半、半導体メーカー大手よりメジャーな発表があった。4月に発表されたAMDのOpteronと、6月末に発表されたインテルのItanium 2新チップ、Madisonだ。AMDは、インテルの新チップ発表日に、Opteronの新製品も発表しているが、これらはすべて64ビット対応のサーバ用プロセッサである。
64ビットプロセッサに普及のきざし
2001年に登場したItaniumは、OSを限定しない初の64ビットプロセッサであったにもかかわらず、これまでの売れ行きはあまりいいものではなかった。それは64ビット対応のソフトウェアが市場に出ていないことが一因ともされていたが、今回の大手2社のチップ発表以降、64ビット対応のソフトウェアも増加傾向にあり、これまで滞っていた市場に注目が集まりつつある。
64ビットプロセッサ市場に一番大きな影響を与えたニュースといえば、4月24日に米国で、また6月25日に日本でリリースされたマイクロソフトWindows Server 2003の発表だろう。このサーバOSは、AMDおよびインテルのプロセッサ双方をサポートすることで両社にとっても市場拡大のチャンスとなると同時に、マイクロソフトにとってもこれまで同社がシェアを握っていたローエンドサーバ市場から、Unixに独占されていたハイエンドサーバ市場でのシェア拡大のチャンスとなるだろう。
なお、Opteron対応OSはほかにもSuSEやターボリナックスのLinuxが、Itanium 2対応OSはレッドハットやミラクルリナックスのLinuxに加え、HPからも新Itanium 2に対応するHP-UXが発表されている。
AMDのOpteronは64ビットと32ビット両方に対応、一方のインテルは、32ビットにはPentiumやXeon、64ビットにはItanium 2といったかたちでそれぞれ個別のプロセッサを用意している。しかしインテルでは、今年度中にItanium 2用エミュレーションソフトウェアをリリースする予定で、これにより1.5GHzのItanium 2上でも1.5GHz版Xeonと同等のスピードで32ビット用アプリケーションが動くことになる。32ビット対応のソフトウェア資産を無駄にすることなく64ビットへ移行してもらおうというのが狙いだ。
両プロセッサをめぐるサーバメーカーの動き
各サーバメーカーも両プロセッサ搭載のサーバを市場に投入している。AMDのプロセッサはこれまで、エンタープライズ分野で苦境を強いられてきたが、OpteronはIBMにも採用されるなど、今後の見通しが明るくなったようにも見える。ほかにも米RackSaverや米Newisys、米Appro InternationalなどのサーバベンダーがOpteronを採用するとしており、同社の2003年第2四半期のシェアは、前年同期の15.6%からわずかに上昇して、15.7%となっている。
Itanium 2は、これまでにも同チップ搭載サーバがHPやIBM、NEC、ユニシスなどより発売されていたが、同チップに障害が発覚して以来、販売を見合わせていたベンダーもあった。だが新プロセッサ、Madison発表時には、デル、IBMなどに加え、日本HP、沖電気工業、日立製作所、NEC、三菱電気の5社も共同でMadison対応のサーバを発表している。
一方、独自プロセッサを開発する各ベンダーの動きも気になるところだ。IBMは、IAサーバを自社製品のラインナップとして揃えつつ、自社製プロセッサPower4の優位性を主張することも忘れていない。IBMでは、Powerプロセッサ向けにLinuxの開発体制を強化する動きも見られている。
サンは、32ビットプロセッサ対応サーバではインテルやAMDのチップを採用しているものの、64ビット対応サーバとしては、自社のUltraSparc IIIiを搭載したラックマウント型サーバを5月に発表するなど、「今後も64ビットはUltraSparcで」(同社広報部)という方針だ。しかし、今後Opteronを採用する可能性があることも示唆している。
HPでは、1月に同社の64ビットチップであるAlpha EV7搭載のサーバを発表したが、同社では長期的にインテルチップに移行していく予定で、元AlphaのエンジニアがHPからインテルに続々と移籍しているようである。
今年後半にはインテルより低価格版Itanium 2チップのDeerfieldも発表される予定で、今後も各社の動きには目が離せそうにない。
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