Itaniumプロセッサシリーズの第三弾となる「Madison」は、高性能サーバ用チップ市場でSun MicrosystemsやIBMとシェアを争うIntelにとって、現在までリリースしたなかで最もよく出来た製品だ。430億ドル規模のサーバ市場で、すでにローエンドはIntelのXeon プロセッサが主流となっているが、今回のIntelの野心的な計画が成功すれば、ハイエンドサーバ市場でもItaniumプロセッサを中心に勢力図が塗りかえられることになる。
同チップは「Itanium 2」という製品名で、ミッドレンジ・サーバ用Xeonプロセッサと共に30日(米国時間)から発売される。Intelによると、Madisonは1つ前のモデルを性能面で50%近く上回り、また監査済みのベンチーマークテストでも、世界最高水準の性能を誇るほかのチップよりも高い評価を得ているという。
しかし、それと同じくらい重要な点は、Intelや同社の提携企業が、サーバメーカーおよびサーバの利便性を高めるためのプログラムを提供するソフトウェア開発企業の幅広いサポートを、ついに獲得し始めていることだ。これにより、2003年末までに50種類以上のItanium 2プロセッサ搭載システムが発売されることになる。
さらに、Itanium 2 プロセッサ対応ソフトの数も徐々に増えつつある。MicrosoftのWindows、SASのビジネス分析ソフト、SAPの会計ソフト、Oracleの9iデータベースソフトなど、400種以上のソフトが、すでに同プロセッサに対応しているか、あるいは対応に向けた準備が進められている。また、Sun America、Agilent Technologies、British Petroleum、BMWなど、Intelの顧客企業数社が、すでに試験的に、あるいは実際の業務でItanium 2 プロセッサを使用している。
業界ニュースレター、Microprocessor Report誌の編集長Kevin Krewellは「最も重要なことは、IntelがMicrosoftから64ビット版Windowsの製造向けリリースを出させたことだ」と指摘する。
今日のハイエンドサーバチップはすべて64ビット設計であり、従来の32ビットチップに比べ、遥かに容量の大きなメモリを扱えるほか、暗号化などのタスクをより効果的に行うことができる。IntelのXeonプロセッサなどの、32ビットプロセッサ向けに設計されたソフトで、64ビット用の機能を利用するためには、ソフト自体を再構築しなければならず、さらにItaniumプロセッサに対応させる場合は、ほかの競合製品に対応させる場合に比べ、より大規模な変更が必要になる。Intelの主張によると、新たなアーキテクチャを構築するためには全面的な変更が必要となるが、一度構築してしまえば今後20年間はもつという。
支持をとり付ける
今日のItaniumに対する熱狂ぶりは、発売の遅れ、不景気、対応ソフト不足など、数々の悪い要因が重なり、人々の関心や売上げの低下を招いた過去とは、まさに対照的である。
すでに主要サーバメーカー2社がItaniumプロセッサを導入しており、そのうちの1社であるIBMは30日に、Itanium 2プロセッサを搭載したx450サーバを発売する。
もう1社のDellもItanium 2プロセッサ搭載サーバを発売するが、同社はすでに確立している市場を好む傾向があり、またItaniumプロセッサに関する過去の実績を考えると、今回の発売からは同プロセッサに対する同社の強い支持がうかがえる。Dellは、過去に初期版Itaniumプロセッサ搭載のワークステーションを発売したが、密かに販売を打ち切った。また最初のItanium 2プロセッサについても、全く需要がないとの理由で導入を見送っていた。
Itanium 2プロセッサを最も強力にサポートするのは、同プロセッサの共同開発者でもあるHewlett-Packard(HP)だ。同社は30日に、Itaniumサーバ製品群「Integrity」を発表する。また8月には、Itanium 2プロセッサを最大64基搭載可能な「hp Superdome」を発売する。ローエンドのIntegrityサーバシリーズは8または16プロセッサ構成で、2003年末に発売予定。また、Itaniumプロセッサを最大128基搭載可能なSuperdomeのアップデート版は、2004年1月に発売される予定。
Madisonが重要な転機となると、Intelは一気にその勢いに乗じる準備が整うだろう。2003年下半期にはクラスタサーバ用Madisonチップと共に、低コスト、省エネ版Itaniumプロセッサ「Deerfield」を発売する。
Intelは2004年により多くのキャッシュを搭載した高速版Madisonチップを発売し、また2005年には同一シリコンチップ上に2つのコアを搭載するデュアルコアのItaniumプロセッサ「Montecito」を発売する予定。さらに5年後には、Digital Equipment Corpが最初に設計し、大きな話題を呼んだが、結局商品化には至らなかったAlpha EV8チップの機能を数多く組み合わせたItaniumプロセッサの発売を予定している。Alpha EV8チップの開発プロジェクトに関わった技術者の多くは現在Intelに勤務している。
しかしIntelのライバル企業も黙って見ているわけではない。Sunは2004年にUltraSparc IVプロセッサを発売するほか、数々の野心的な計画を今後も継続していく。またIBMもItanium 2搭載サーバを販売する一方で、高性能UNIXサーバ用Power5チップを2004年に発売する。両社とも長年、64ビットコンピューティング市場で定評のある企業だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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