Google、Amazon.com、Cisco Systems、Microsoft、Mozillaなどが約5年前、非営利団体Alliance for Open Media(AOMedia)のメンバーとして動画圧縮技術「AOMedia Video 1(AV1)」を発表した。AOMediaが目指したのは、オンライン動画を圧縮する方法を開発する一方で、ストリーミング動画のコストを増やす特許ライセンス契約の障害を取り除くことだった。AV1がモバイル向けにも採用されつつある中、特許ライセンス契約を手がけるSisvel Internationalは、AV1本来の方針に逆行する同技術の将来像を描いている。
Sisvelは、イタリアの冷蔵庫およびテレビ製造業者をルーツとし、現在はルクセンブルクに拠点を置く。同社は現地時間3月10日、AV1を利用するのに必要だとする特許1050件のリストを公開した。Sisvelが2019年に概略を明らかにしていたその狙いは、Sisvelが代理人を務める特許権者のための「特許プール」を形成することだ。この方法は、個々の特許権者からライセンスを受けるより簡便だ。今回の場合、特許権者には、Philips、General Electric(GE)、NTT、Ericsson、Dolby、東芝ビジネスエキスパートなどの企業が含まれる。Sisvelは、同社が管理するビデオ符号化特許ライセンスプラットフォームに新たに9社が参加し、計14社となったことも発表した。
Sisvelとそのパートナー各社は、ストリーミング動画を利用するには新たな料金が必要になると考えているようだ。Sisvelのライセンス契約プログラムがどのような影響を及ぼすかはまだ不明だが、「Android」搭載スマートフォンやストリーミング用セットトップボックス「Roku」などのデバイスの価格が高くなる可能性がある。
それはまさに、AV1を支持するAOMediaが避けようとしていたことだ。AOMediaには今や、Netflix、Facebook、Appleも加盟している。AOMediaは2019年、SisvelがAV1の特許ライセンスを提供する計画を発表したことを受けて声明を出し、次のように述べていた。「AOMediaを設立した目的は、今回の発表が支持しているまさにその環境を過去のものにすることだ。そのような環境では、高額な特許使用料の要求とライセンス契約の不確実性により、無料でオープンなオンライン動画技術の可能性が制限されてしまう」
特許ライセンス契約の費用と不確実性をAOMediaが問題視する背景には、H.265をめぐる経緯がある。H.265はHigh Efficiency Video Coding(HEVC)とも呼ばれる動画圧縮技術で、広く使われていたH.264規格の後継として設計された。H.265は、データ通信量をそれほど増やさずに4K動画の時代を切り拓く可能性があった。しかし、H.265の特許権者らは協調的になれず、競合するライセンス管理団体が乱立した。AOMediaの設立とAV1の開発は、そうした難題への対応として行われた一面もあった。
AOMediaはコメントの依頼にすぐには応じなかった。
SisvelはAV1のライセンス料を支払わない企業を追及するという。同社は「このライセンス提供を無視すると決めて」「ただ乗り」する者には法的措置を取る可能性があると述べた。
同社は今回、「VP9」に関する650件のライセンス対象特許リストも公開している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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