ネットは世界とつながっていると言われます。が、言語の壁やプラットフォームの普及実態が大きく関わるため、実際にはデジタルマーケティング活動においてはまだ十分にグローバライゼーションが成し遂げられていません。
例えば、米国・英国・中国・香港のビジネスエリートへのアプローチを試みても、各国のエリートたちが好むメディアは異なります。Facebook広告は非常に便利ですが中国では使われていませんし、コンテキストという側面でもLinkedInのようなビジネスSNSの方が家庭的なFacebookよりも最適な訴求と考えられるでしょう。また、ビジネスエリートであれば英語のみでのコミュニケーションで事足りますが、ビジネスエリート以外をターゲットにする場合、各現地語に翻訳したり(場合によっては)作り替えたりと制作コストが生じます。
さらに、もっと精緻なメディアプランニングを行うべく、各国のネイティブアドネットワークや人気ネットメディアを活用しようと試みても、言語や国によってメディアが異なるため対応リソースが想定以上にかかります。ネイティブアドネットワークは過渡期であるため、まだ十分にアライアンスが組まれていないのが現状で、リサーチから実行まで非常に手間が掛かると聞きます。同じような海外向けデジタルマーケティングとは言え、「1カ国限定」と「複数国同時」では対応が全く変わってくるのです。
つまり、まずは商圏を特定するためマーケティングの重点エリアを明確化する必要があります。そのため、プレマーケティングという位置付けで、どの都市・国が筋が良いのかを見定めるために、少数であっても多様なユーザーと接点を持つことは有効です。例えば、プラットフォームの広告を活用するよりも、よりデータを取得できるという点では簡易のランディングページなどに集客してサイト内行動分析する方が望ましいでしょう。
そして、重点エリアが定まった後に、セグメントや訴求メッセージを限定していくのが(スピードやコスト面に鑑みて)最良のステップだと考えます。真のグローバル化が成し遂げられてないデジタルマーケティング領域下では、深堀氏が推進するBLUE WINGの戦略論は参考になるのではないでしょうか。
また、取材を通じて、マーケターの武器は「生活で感じ得たインサイト」と「使えるデータ」だと私はあらためて実感しました。
今回の場合は、深堀氏が「社会起業家のパワー」「彼らを応援する人々のインサイト」を五感で感じ取ったことが引き金になり、マーケティングプログラム化されたBLUE WINGが仮説立証に効果的な役割を果たしました。
そして、今までの活動とデータ分析では、今までの訴求メッセージよりも売り上げに対して効果的であることが確認されています。逆に言えば、データドリブンなマーケティング活動でなければ、商圏やセグメントの選定のみならず、そもそも社会貢献文脈を礎にしたBLUE WINGを継続的に投資するべきかさえも分からなかったことになります(それを伝えたくて取材内容を構成しましたが、届きましたでしょうか)。
「日本にいながら海外へリーチ」と言うのは簡単ですが、インサイトを得ていなければ空振りに終わりますし、データが使えなければ空振りに気付かぬままバットを振り続けなければなりません。一方、日本企業の海外進出は重要アジェンダで、もう先延ばしにできないものです。
インバウンドが活況の今、日本国内にも海外の方がたくさんいますが、世界人口70億人分の2000万人とたった3%です。日本のマーケターは公私ともにもっと海外へ出向き、多様なインサイトを知るべきではないでしょうか。もちろんその時にBLUE WINGを使うのも良い選択です。
廣部 嘉祥
クチコミマーケティング協議会(WOMJ)メソッド委員会所属 個人会員
コンテキスト・エディター
2007年よりデジタルエージェンシーへ入社後、ファッション、ホテル、ITサービス、製薬等各種グローバル企業のデジタルマーケティングからPRプランニングまでを担当。2012年よりメソッド委員会に所属し、2015年夏より現職。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
「もったいない」という気持ちを原動力に
地場企業とともに拓く食の未来