広告のメディアデータを基軸に海外向けデジタルマーケティングを展開する全日本空輸(ANA)を訪ねました。マーケットコミュニケーション部宣伝チームの深堀昂氏への取材を再構成してお届けします。
日本のマーケターは、日本企業の海外進出にどこまで貢献できているのでしょうか。急速な成長で品質面でも見劣りしない海外ブランドを前にして、日本のマーケティングの価値が問われている気がします。
“日本では有名でも海外では全く無名”、といったブランドは数多くあります。商慣習やメディア環境など、あらゆるものが異なるため、マーケティングに関わるサービスやツールも日本の使い慣れたそれを脱し、工夫が必要です。
この状況下で、デジタルのネットワーク性や即時性を使わない手はありません。例えば、コンテンツを英語にする、外国人目線の文脈に整える、グローバルメディアプラットフォーム(YouTubeやFacebookなど)に参画するといったことで、海外からのサイトアクセスは確実に増えます。
デジタルマーケティングの海外戦略においては、筋の良い戦略と商圏を早めに見つけることが要諦となります。なぜなら、購買動機や顧客インサイトは多様であり、かつ世界市場は大き過ぎるからです。そのために、マーケティング活動を通して、ビジネス金脈を探り当てていくような方法論が正しいと私は考えます。
ANAは、英国スカイトラックス社による航空会社ランキングで最高評価の5つ星を3年連続で獲得しており、国際的にも非常に評価の高い航空会社です。ただし、まだまだ海外認知度向上には伸び代がありました。“ビジネスでもエコノミーでもない、社会貢献のための新しいクラス”というコンセプトのもと、海外認知度の向上に臨むANAのデジタルマーケティングの現場を取材しました。
彼らがどのような戦略のもと勝ち筋の良い商圏を探っているのか、そして、どのような武器を要するのかを見てみましょう。
皆さんはどの航空会社を愛用なさっているでしょうか? まさにANAという方もいれば、安くて早ければLCCでも良いという方、そしてエミレーツ航空やシンガポール航空といった海外の正統派が良いという方もいるでしょう。
一方、外国人トラベラーやビジネスパーソン、また中でも世界中を飛び回っているいわゆるクリエイティブクラスの方々はどのように航空会社を選んでいるのでしょうか? ANA・深堀氏に伺いました。
「トラベラーでしたら価格面がやはり重要になると思います。ビジネスパーソンであれば会社が契約しているエアラインであるかどうか、クリエイティブクラスの場合、就航路線やサービスの充実がやはり重要になると思います。ただし、何よりも重要なのはエアラインとして認知されていなければ候補にもあがりません」(深堀氏)。
では、ANAの海外における認知度はいかがでしょうか?
「昔から飛んでいる中国においては比較的認知度はありますが、それ以外のエリアにおいては認知度が低いのが現状です。一般的に、海外認知度を上げるためのソリューションといえば、大規模なメディア出稿などが考えられますが、何か違ったアプローチがないか悩んでいる状況でした」(同氏)。
海外認知度において伸び代がある中で、社会起業家を応援するプログラム「BLUE WING」が2014年2月より離陸しました。
コンテキスト・エディターと称する私としては、時代と同調した「選ばれる理由」を作るマーケティング活動に金脈を感じます。2014年11月、羽田空港で上述の動画を視聴した時、直感的にこれはすごい取り組みになると感じました。どのようなプログラムなのか詳しく伺いました。
「BLUE WINGは世界の社会課題の解決を支援するプログラム。米国に拠点を置く世界最大の社会起業家ネットワーク『アショカ』と提携し、ANAがBlue Wing(青い翼)となって5名の社会起業家を応援するものです。 ポイントは、共感いただいたユーザーの方が世界中から関われること。具体的には、『Share』、『Mile Donation』そして『Fly』のお客様のアクションは、5人のチェンジメーカーの活動をフライト支援する単位「WING」に換算され、それぞれのカウントに応じて、チェンジメーカーたちに還元することで、彼らの活動を後押しする力になります」(同氏)。
「2014年2月から始動し、累計270万以上のポイントが募りました(2015年12月時点)。円換算すると約270万円と、まだ道半ばです」(同氏)。
一見、CSRプログラムと思しきBLUE WINGですが、そこには学生時から社会起業に関心を寄せていた深堀氏の実体験から発露したビジョンがありました。立ち上げた経緯について、深堀氏は次のように語りました。
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