前回、「データ」がマーケティングの成功の定義を変えたと唱える形で、データ活用の意義について触れました。今回はその中で、「最良のセールスマン」とも呼ばれるクチコミに焦点を当てます。前編では私が所属するWOMJのメソッド委員会での研究内容を、後編では先駆的なマーケティングに取り組む自治体・千葉県流山市への取材内容をまとめてご紹介します。
クチコミという非構造的なデータをどう収集、分析し、活用すればよいのか、気に留めながらお読みいただければと思います。
私が所属しているWOMJ(クチコミマーケティング協議会)のメソッド委員会では、クチコミをマーケティングへ生かす理論やフレームワークを、フィールドワークやネット調査などを踏まえ、発足した2012年より毎年発表しています。2013年からの約2年間は、「ブランドアドボケーツ」(ラテン語の「vocare(呼ぶ)」を語源に持つ、各ブランドに存在するファンや支持者のこと)のマーケティングでの効果および活用法をテーマに据え、各界のマーケターの参考になるであろう定量・定性データをまとめてきました。
クチコミと一口に言っても、ブランドイメージを損ねるネガティブなものから、ブランディングをドライブさせていくポジティブなものまでさまざまです。SNSが登場して以降、クチコミとの接点が急激に多くなり、私たちが知覚できるだけでもそのクチコミによって消費行動や態度が変わったことは多数あるかと思います(皆さんも思い当たるものがいくつかあるかと)。きっと無意識下ではもっと多いのでしょう。その要因は、クチコミの持つ“絶対的”な効果・効用もあれば、マス広告が届きにくく効きにくい現在のメディア環境といった“相対的”な視野で語られるものもあるでしょう。
私たちメソッド委員会は「アドボケーツ」による推奨コメントに着眼し、フレームワークを仮説立てました(下記参照)。①~⑤の各ステップを実現するHOW(例:②アドボケーツはどのように探すのか)を理論立てて実証することが、私たちの研究会が“メソッド”委員会たる由縁とご理解いただければと思います。
クチコミの効果・効用を調べる際に、一生の買い物である住居選びはユニークな結果が出そうであり、現在においてマーケティングに意欲的ということで、今回のフィールドワークの対象を流山市に決めました。フィールドワークを中心とする研究において流山市役所より多くの協力を得たことにより、メソッド委員会の研究はより実践的なものとしてまとめることができたと思っています。
流山市役所は、2004年に国内で初めて「マーケティング課」を設置した基礎自治体です。「母になるなら、流山市。」という真っ直ぐなキャッチフレーズをもとに都内の子育て世帯の移住を促進し、さまざまな取り組みが奏功したことによって流入人口が増えました。それらの実績やユニークな取り組みが報道されているため、読者の皆さんも耳にされる機会が多いかと思います。
後編で流山市役所へのインタビューをご紹介しますが、まずはWOMJメソッド委員会の2年間のクチコミ研究が何を明らかにしたのかを追究します。
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