顧客の心に火をつけるデータ活用

流山市のスマートなデータ活用法--データの価値は量ではなく、意思決定に使えること

 クチコミデータに着眼した第1回目の取材記事の前編では、WOMJメソッド委員会が実施したクチコミ研究をご紹介しました。後編は、マーケティングの成果をあげているスモールチームとして、流山市役所のマーケティング課のスマートなデータ活用法をご紹介します。


戦略設計力+チャレンジング気質--流山市のマーケティング力

 流山市は千葉県北西部に位置する、県内で8番目の人口約17万人を誇る関東のベッドタウン。歴史ファンなら新撰組の近藤勇と土方歳三との離別の地として、鉄道オタクならユルくほのぼのしたローカル線・流鉄流山線が走る場所として知っているかもしれませんが、それ以上に私の周りのマーケター界隈では先駆的なマーケティングを行なう自治体ということで周知されています。

 読者の皆さんも「母になるなら、流山市。」という直球なポスター広告を駅で見かけた方も多いかと思います。もしくはネットをよく使う方だと、恋愛中を示す“恋届”を仕掛けた自治体として認知されているかもしれません。


流山市のポスター広告

 今の流山市の先駆的な取り組みは、過去の先見性によるものです。税収の半分が住民税である流山市にとって住民が減るのは死活問題であるため、少子高齢化問題は英断を後押ししました。流山市は2004年、産業誘致ではなくシティブランディングを強化するため、基礎自治体として日本で初めて「マーケティング課」を設置。今日の成功の礎は10年以上も前からスタートしていました。

 流山市を訪れたことがある方ならわかると思いますが、つくばエクスプレス(TX)の流山おおたかの森駅前に広がる景色は穏やかそのものです。それら豊かな自然、TXによる都心へのアクセス(秋葉原まで20分台)といった資産に鑑みて、都心に住む30代の共働き子育て世帯(DEWKs;Double Employed With Kids)に絞り、彼らに選ばれるマーケティングを始動。結果的に、2014年は転出より転入が2387人上回り、全国10位の転入超過数となり、人口も10年前より2万2000人ほど増加、と確実に成果を上げています。

 流山市はターゲットペルソナを明確に決めて施策を展開する点で他の自治体と一線を画します。そのマーケティング戦略設計力に加えて、チャレンジング気質であるところに成功の要因があると私は考えます。

 例えば、流山市役所のメディアプロモーション広報官である河尻和佳子氏によると、「年度末に行う転入者アンケート、ながれやままちづくり達成度アンケート、イベントアンケートなどの基礎データとなるものは、定期的に行い企画の参考や根拠にしています」とのこと。実際に見てみると、転入者アンケートでは転入のきっかけや転入元住所を、まちづくり達成度アンケート(下図)では、まちづくりへの満足度や定住意向などを時系列に詳細に追うことができ、次の打ち手を考えるカードがいくつもそろっています。


アンケート結果

 また、「Twitterのキーワード検索、リツイートされた投稿内容の確認、Facebookでは『いいね!』属性や投稿内容別反響比較、投稿日時による反響の差異などを見ています。また、特設PRサイト『母になるなら、流山市。』では、訪問者数、PV数、滞在時間、参照元のメディアのデータを取って、反響を見ています」(河尻氏)とのことで、アナログなアンケートに加えて、効果検証もデジタルシフトを進めていることがうかがえます。

 では、具体的にどのようにデータドリブンなのか、WOMJの研究結果後のアクションを追ってみます。

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