米セールスフォース・ドットコムは、6月16日から3日間にわたり、ニューヨークで大規模なマーケティングイベント「CONNECTIONS 2015」を開催。顧客データを一元化して活用できるマーケティング製品「Marketing Cloud」の導入事例などを紹介した。
同会場で、米セールスフォースのMarketing Cloud Operations担当シニアバイスプレジデントであるウッドソン・マーティン氏に話を聞く機会を得た。進化を続けるデジタルマーケティングの現状や課題について聞いた。
マーティン氏 : 1つめは、機械で自動的に作られたデータにアクセスしやすくなったことです。ウェブやメールなどのデータ量が増えてきたことで、顧客のインサイトを得られるようになりました。2つめがデータ処理の方法が進化したこと。データを集めることで予測可能なことが増えたため、メッセージをパーソナル化してより個人に合ったものを提供できるようになりました。
3つめが、コネクションを作るためのマーケティングと広告のテクノロジが一体化してきたこと。これまでにもアイデアとしてはありましたが、データをプロセス化する方法が賢く効率化してきた。モバイルの登場も大きいですね。スマートフォンやアプリが出てくる前は、顧客が商品を見たり買ったりしても追跡ができなかった。それがスマホとアプリの発達で誰がどんなことをしているかを把握できるようになりました。こうした変化はまだ始まったばかりです。
マーティン氏 : すでにリテール(小売)の領域でそれが起き始めています。その理由は恐らく、アマゾンがECの顧客体験のレベルを一気に上げたからです。そこで競合するリテールも、よりスマートなマーケティングやコミュニケーションを実現しようとしています。
最も読まれるメールは、注文後のメールで98%開封されると言われています。なのであれば、注文したメールに販促のメッセージを入れたり、類似品をお勧めしたりすることが効果的なのは明らかです。多くのリテールもこれを実践していますが、なかなか消費者向けの商品は個別化が難しい。それは顧客情報がまだ足りないからです。
そこで、消費者向け商品関連の業界では、ソーシャルメディアを使って顧客とブランドの関係を構築した後に、モバイルやメールを活用して情報配信をし始めています。
マーティン氏 : 新しい変化には新しいスキルが求められます。企業ではこれまで、ウェブやメール、モバイルなど、それぞれの特定分野のマーティング専門家を雇うことが一般的でしたが、今後はクロスチャネル、つまり総合的に全体を見られる人がカスタマージャーニーを管理する上で必要になります。
もちろん、そのために新しいタイプの人を雇うことも大事ですが、今いる社員にこれまでとは違う教育をする必要もあるでしょう。顧客のジャーニーがどのようなもので、そのライフサイクルがどんな仕組みなのか。そのためのビジネスプロセスはどうなのかなどの新しい知識を学んでもらうことが大切です。
とても大きな変化ですが、全社的に一体化して、顧客体験を中心にした考えに改めることができれば、企業としての競争力は高まるでしょう。
マーティン氏 : セールスフォースではApple Watchにもいち早く対応しました。私たちはどんなときでも新しいデバイスで有効なコミュニケーションを提供できるようにしています。
これまではメールやモバイルなど、チャネルごとに何ができるかを考えてきましたが、これからは新しいデバイスごとに考えないといけない。それは腕時計型かもしれないし、メガネ型かもしれません。一方で、デバイスという観点で考えるとともに、LINEやWeChatなどのグループチャットといった新しいチャネルについても考慮しなければいけないでしょう。
マーティン氏 : 私はテクノロジ業界に20年ほどいて、東京にも20回近く行ったことがありますが、日本のマーケットは米国とはマーケティングの方法も組織の構造もかなり違います。日本にはCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)もあまりいませんよね。
日本はテクノロジの取り入れ方やパターンも独特です。特に、モバイルのテクノロジの取り入れが非常に早かった、LINEもそうです。米国や欧州でも日本がやっているからという理由で、LINEを取り入れ始めています。
我々も日本のマーケットに合わせて消費者が期待することに応えたいと思っています。国や文化は違っても、最終的には顧客中心に物事を考えないといけないことは同じだからです。
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