日産自動車が、一貫したブランドイメージ展開や顧客体験をさらに向上させるために、世界規模でのデジタルマーケティングの改革に乗り出した。そこで、まずはルノー・日産アライアンス共通のデジタルマーケティングプラットフォームを構築するために、Adobeのデジタルマーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」を採用することを決めた。
日産自動車は、世界20の国や地域に拠点を持ち、「NISSAN」と「INFINITI」、「DATSUN」の3つの自動車ブランドを展開しているが、世界の各拠点の裁量によってデジタルマーケティングが実行されているために、一貫・継続したブランドイメージを構築することが課題だった。つまり、世界展開の総合力を発揮できているか疑問だったわけだ。デジタルをあたりまえに扱う顧客の購買プロセスに重点を置き、グローバルなマーケティング指針に基づいて、迅速に市場展開しつつ顧客を理解するためのデータ分析やブランドを訴求するためのアセット管理、コスト効率の向上などを目指し、よりよい顧客体験を提供していくかまえだ。
今回、グローバルにおけるマーケティングソリューションの共通基盤として採用したAdobe Marketing Cloudでは、具体的にデジタルアセット管理の「Adobe Experience Manager」、リアルタイムマーケティング分析・レポートの「Adobe Analytics」、ABテストの「Adobe Target」、ソーシャルメディア運営・管理の「Adobe Social」が含まれている。さらに、インタラクティブなデジタルカタログやパンフレットを作成・運用する「Adobe Digital Publishing Suite」も採用した。これらを活用し、日産の各拠点のマーケターやクリエイターは、顧客との接点となるモバイルやソーシャルメディア、ディーラー網などの多様なチャネルを通じて、顧客1人1人の趣味や嗜好に基づいてコミュニケーションし、それぞれの顧客体験の向上に努める。
こうした世界規模でのデジタルマーケティングの変革をどのように進めていくのか。さらには、その際になくてはならないソリューションの決め手は何だったのか。日産自動車のグローバルマーケティングストラテジー本部 デジタルストラテジー部 ジェネラルマネージャー兼チーフデジタルオフィサーであるDeLu Jackson(デル・ジャクソン)氏に話を聞いた。
--日産のマーケティングにおける課題は何だったのでしょうか。
DeLu Jackson:各拠点の裁量によってデジタルマーケティングが展開されていたため、日産が持つグローバルでの総合力を十分に発揮できていませんでした。将来におけるデジタルエクスペリエンスに照準を合わせ、全体像としてお客様にどのようなデジタルでの体験を提供していくべきかが課題です。特に世界的にモバイルが急速に進化している中で、それが消費者へどういう影響を与えるのかをきちんと把握し、そのうえで1人1人のお客様に“パーソナライズ”したかたちで、“移動中”であっても“リアルタイム”に情報提供したり、コンテキストを届けたりできるかが鍵になっていくでしょう。そして、そのために世界的に展開する企業にとっては、将来の成長を担う主要20~25の地域や都市それぞれが、最先端の能力を携えることが重要です。
--その通りだと思いますが、各地域や都市はモバイルをはじめ取り巻く環境が異なり、文化や商習慣なども違うでしょう。それを総括して主導していくのはなかなか難しいことだと思います。
DeLu Jackson:たしかに、それぞれの地域にはユニークな要件事項があります。まずはそれを認識することが重要です。しかしそのうえで、どういう共通項があるかということを検討すべきだと考えました。具体的には3つのブランドを包含する中で、実はそれぞれの地域特性やニーズ、要件がありますが、実際に調査してみると、全体の85%は同じようなニーズであることがわかっています。違いと似ている部分がどちらが大きいかというと、似ている部分の方が大きいのです。
たとえば、「自動車を購入する」という行動に関わる要件やキーになる部分は、環境や文化が違ってもあまり変わらないプロセスです。自動車がどういう形をしていて、何色があり、価格はいくらで、どのような特徴やオプションがあるのか。共通の車両においてのコアプラットフォームというのは、さほど文化が変わっても変わるものではありません。ジューク(JUKE)という自動車は、世界のどこでもジュークという自動車なのです。そういった共通項の1つ1つの構成要素をきちんと捉えたうえで、いろいろな市場においてどのようにお客様に販売していくかということを支援するのが重要なことなのです。
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