わずか半年で500近いスターリンク衛星が燃焼、有害物質の影響に科学者らが警鐘

Joe Supan (CNET News) 翻訳校正: 編集部2025年07月03日 11時31分

 SpaceXが米連邦通信委員会(FCC)に7月1日付で提出した書類によると、2024年12月から2025年5月の間に472機の「Starlink」(スターリンク)衛星が大気圏で燃え尽きたという。SpaceXが運用中の衛星群のおよそ6%を軌道から離脱させたためだ。

提供:Mariana Suarez/Getty Images 提供:Mariana Suarez/Getty Images
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 Starlink衛星の設計寿命は約5年。その後、衛星は地球の大気圏へ誘導され燃え尽きる。TeslaとXの最高経営責任者(CEO)であるElon Musk氏の宇宙開発企業SpaceXは、2019年に最初のStarlink衛星を打ち上げたため、いままさに初の大規模な軌道離脱が始まっている。米国では140万戸以上がStarlinkのインターネットサービスを利用しており、多くの農村部ではこの技術が大きな変革をもたらしている。

 しかし科学者たちは、衛星の数が前例のない規模に増えることで生じる予期せぬ影響について懸念を示している。衛星打ち上げを追跡する天体物理学者Jonathan McDowell氏のデータによると、低軌道(地表から約1200マイル以内)に存在する約1万個の稼働中の物体のうち、7750個以上がStarlinkに属している。

 SpaceXは半年に一度、衛星コンステレーションの状況をFCCに自主的に報告している。12月の報告時点では、前の6カ月間に軌道から離脱した衛星は73機にとどまっていた。これが急増したことは、地上に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

 科学者たちは成層圏で宇宙船の金属を見つけることが増えており、まれに宇宙ごみが地上に落下したこともある。SpaceXは2024年夏、カナダのサスカチュワン州の農場でStarlink衛星の5.5ポンド(約2.5kg)のアルミ片が発見されたと明らかにした。

 McDowell氏は米CNETに対し、「例のごとく、人類は環境に対して新しい実験を行っている。自然界で起きたことがないことをしている」と語った。

 SpaceXは軌道離脱の過程が安全だと主張しており、現行のV2衛星について、人命にかかわるリスクを「1億分の1未満」としている。

 SpaceXの提出書類には「SpaceXの衛星は消滅性に関する業界標準を上回っており、地上の生命に対する計算可能なリスクはなく、さらに衛星は人口の少ない地域の上空に向けて再突入している」と書かれている。

 SpaceXの広報担当者はコメントの依頼に直ちには応じなかった。

科学者らは衛星の燃焼に懸念を抱いている

 最初に打ち上げられたStarlinkの衛星が最近になって大量に軌道を離脱し始めたばかりであり、その気候への影響を評価する上でわれわれはまだ前例のない段階にいる。

 SpaceXはFCCから1万2000機の衛星打ち上げ許可をすでに得ており、将来的には最大4万2000機を計画しているとSpace.comは報じている。

 2024年6月にGeophysical Research Lettersに掲載された、米航空宇宙局(NASA)が資金を拠出した研究では、重量550ポンドの衛星が燃え尽きる際に約66ポンドの酸化アルミニウムナノ粒子を放出することが判明した。これらのナノ粒子は2016年から2022年の間に8倍に増加している。現在のStarlink衛星の重さは各1760ポンドだ。

 米海洋大気庁が採取した別のサンプルでは、成層圏の粒子デブリの10%に「アルミニウムおよび特殊金属」が含まれていた。同庁は「低軌道に打ち上げられる衛星の数に基づき」、この割合が50%に達する可能性があると予測している。これらの金属がもたらす影響はまだ解明されていない。

 「この種の研究を行っているさまざまな団体と話をした私の印象では、もし賭けるなら、大きな問題を引き起こすレベルにはまだ少なくとも1桁は下回っているという研究結果が出るのではないか」とMcDowell氏は述べた。

 それでも懸念は十分に大きく、2024年10月には科学者グループがFCCに公開書簡を送り、「大気中の有害なガスや金属」を理由に新たな衛星打ち上げの一時停止を求めた。

 現在、軌道上には稼働中の1万2000機以上の衛星があり、そのうち7751機がStarlinkだ。しかし、衛星打ち上げ競争は始まったばかりのようだ。Natureに2020年に掲載された記事では、2030年までに10万機が打ち上げられることが「あり得るだけでなく可能性が極めて高い」と予測している。

 「これは、宇宙での活動がかつてないほど増えて、環境に影響を与える段階に達したという大きな流れの一部だ」とMcDowell氏は語った。「従来は『小さ過ぎて気にする必要がない』として無視してきた多くのことが、いまや無視できないほど大きくなっており、注意を払う必要があるということだ」

FCC提出書類

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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