朝日インタラクティブが12月4日に開催した「CNET Japan Live 2014 Winter」。3回目となる今回は、「ボーダレス」がマーケティングの決め手~手段・手法・組織の垣根を取り払う~がテーマだ。基調講演には日産自動車マーケティング本部販売促進部小暮亮祐氏が登壇した。
小暮氏は、音楽業界で邦楽アーティストのプロモーションに従事した後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)で、マーケティングの実務責任者を担い、2012年からは日産自動車でデジタルマーケティング全般を担当する多彩な職歴を持つ。日本を代表するグローバル企業・日産が取り組む“ボーダレス”への取り組みについて語った。
小暮氏によると、現在の自動車業界を取り巻く環境は主に次の2点において大きな変化に直面しているという。1つ目が“顧客の購買行動の変化”だ。消費者はディーラーを訪れる前に既にある程度、購入の意思決定をしており、以前に比べて自動車を購入する消費者が実際に訪れる店舗の数は減ってきているとのこと。つまり、ディーラーは最終確認のために訪れるといった傾向がみられ、こうした潮流に対して小暮氏は「現在におけるマーケティングコミュニケーションは店舗を訪れる前に顧客をキャッチする必要がある」と強調する。
そして2つ目が“マーケティング環境の変化”だ。これは言うまでもなく、マーケティングツールがデジタル化されてきたことで、現在ではさまざまなデータが取得できる。ウェブサイトであればCookieによる訪問履歴などがあり、さらに自動車に関しては走行記録、カーナビデータなどあらゆる情報を収集し、マーケティングに活かすことができる。しかも、昨今ではそのデータの解析をマーケッター自身の手によってで安価かつ短期間で行うことも可能になってきている。
しかしこうした変化に対して小暮氏が重要だと考えるのは、データという集めた材料をどのように味付けするのかということ。「新しいツールが出るたびに何を目指してそのツールを使うのかということを明確に意識しなければならない。目的が逆転してしまいがちだが、本末転倒にならないように気を付けている」と話す。
そしてこうした状況変化の中、自動車業界のマーケティングにおける“ボーダレス化”とは、断絶されたオンラインとオフラインの一元化だ。というのも、現在、顧客は事前にオンラインメディアを通して情報収集やコミュニケーションを行うのが主流でありながら、最終的な購買場所は実店舗だ。現状、オンラインではクルマを買うことができない。こうしたボーダーラインをマーケティングコミュニケーションを通していかに穴埋めしていくか?をテーマに、日産自動車ではさまざまなマーケティング施策を行っているという。
その指針として挙げられたのが次の4つの項目だ。1つ目が“顧客参加型のコミュニケーション”。小暮氏によると現在、人々の関心は非常に細分化され、自動車そのものを趣味とするような人は減ってきている。自動車といえばあくまで移動の手段と捉える人が多く、自動車の購入という行為が主体的でなくなりつつあり、以前と比べると日常的な接点が作れないというのが自動車メーカー側の課題だ。
このような状況に対して、日産が2012年からFacebook上で行っているのが「にっちゃん企画」だ。“2.3万円であなたの企画をお買い上げします”を合言葉に、投稿されたクルマにまつわる実験や“ドッキリ”企画などを買い取り、実現するという顧客参加型のブランディングで、店舗に行く前に日産のファンを増やそうというのが狙い。実際にこれまでに投稿された企画は1万3000件程度にのぼるとのことだ。
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