アドビシステムズは9月4日、7月1日付けで日本法人の代表取締役社長に就任した、佐分利ユージン氏の就任記者会見を開催した。
佐分利氏はアドビがこれまで注力してきたクリエイター向け製品とともに、マーケティング向けビジネスに注力し、「ワールドワイドでは売り上げ約40億ドルの内訳として6割がクリエイター向け、4割がマーケティング製品だが、日本法人の場合、マーケティング向け製品の比率がもう少し低い。これをワールドワイドと同じような比率に引き上げたい」と話し、デジタルマーケティング向け製品事業へ注力していく方針を明らかにした。
佐分利氏は新社長として国内での展開施策として(1)顧客の業界ニーズにあわせたソリューション提案、(2)顧客のニーズにあわせた製品ポートフォリオの強化、(3)導入前後のコンサルティングサービス、(4)国内におけるデジタルマーケティングの認知と理解促進、(5)パートナーとの協業強化――という5点を挙げた。
佐分利氏は1995年から19年間マイクロソフトに在籍。2006~2009年は日本法人で最高マーケティング責任者(CMO)として勤務していた。今回、転職を決意した要因について、「面接を通じてアドビの開発者、経営層に惚れる部分があったこと、業界で唯一、サービスモデル、サブスクリプションモデルへの切り替えを唯一成功した企業であること、私自身が担当してきたマーケター向け製品に注力しているという3つがきっかけとなった」と説明した。
アドビは他社に先駆けて、ソフトウェアビジネスをサービス型のサブスクリプションモデルへ移行し、6月現在のグローバル実績で、クリエイター向けの「Adobe Creative Cloud」の契約者は230万件となっている。
現在はCreative Cloudとともに、デジタルマーケティングのための「Adobe Marketing Cloud」を提供。「Adobeの株価の推移を見てもらえばわかるが、2008年にデジタルマーケティング製品の提供を開始以来、株価も上がっている」と株式市場でも評価が高いと説明した。
「1992年に日本法人を設立以来、日本でのビジネスは好調で米国に次ぐ、売り上げの2位が日本。その一方でデジタルマーケティングに関しては、欧米ではCMOがけん引役となっているものの、日本企業にはCMOがいない企業も多い。経営者にデジタルマーケティングの必要性を感じてもらって、マーケティング活動の改革に取り組む時期であることを理解してもらう必要がある。われわれも製品だけでなく、デジタルマーケティングの必要性をあらためて改めてアピールしていきたい」と啓蒙活動も含め、事業を強化する意向を示した。
Creative Cloudは、クラウドの不具合によりアクセスができなくなるといったトラブルも起こっているが、「現在、当社に限らず、これまでソフトウェアを提供してきた企業がビジネスモデルの移行を進める変革期にある。ユーザーにとって最高品質となるサービスを提供できるよう努力したい」と品質改善に向けて取り組む姿勢も強調した。
自身の社長としての目標としては、「Creative Cloudのワールドワイドでの伸びは対前年比20%増、Marketing Cloudは25%となっているが、これを絶対に下回らない。できれば、これを上回る成績とする」と話した。
「マイクロソフト出身ということだが、アップル製品をどう思っているのか?」という質問も飛んだが、「アドビ社長としては、Windows、アップル製品、両方とも重要なプラットフォームだと思っている。それしか言えません」と苦笑しながら答えていた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」