今は米国時間9月19日の夜10時30分。すでに数十人が行列をつくっている。
折りたたみチェアに腰掛け、毛布を巻いている。そして映画館でよく見かけるあの仕切り用の伸縮自在のナイロンストラップによって、整然と歩道の端に押しやられている。ここサンフランシスコは肌寒い。Ryan Rawson氏は防寒のために、上着を1枚余分に羽織っている。
行列のすぐそばに立ったRawson氏は、「人々が人生で本当に興奮するのはどんなときだろうか。デートだろうか。車を購入するときだろうか」と尋ねた。そして同氏は、「それは『iPhone』を手に入れるときだ」と断言した。
ストックトン通りの一区画に行列をつくっているほかのすべての人たちと同様に、Rawson氏も「iPhone 5s」を手に入れるためにApple Storeが開店するのを待っている。背が高くてがっしりした体格の同氏は長いあごひげを生やしている。そのあごひげは、ブリーチされた頭髪の至る所に散りばめられた色落ちしかけたピンクのハイライトとは不釣り合いだ。だがよく考えてみると、Rawson氏は矛盾に満ちているのかもしれない。同氏はこの3年間で4台の「Android」スマートフォンを所有してきたが、この日の夜にこうして行列に並び、最新のiPhoneの発売を待っている。
サムスンは、Apple製品を入手するために行列をつくるRawson氏のような人々を公然と嘲笑するコマーシャルを放送した。そのことについて尋ねると、Rawson氏は素っ気なく次のように反論した。
「サムスンは自分たちがスマートフォンを発売するときも、皆に行列をつくって一晩中待っていてもらいたいと思っているのだろう」(Rawson氏)
一方ロサンゼルスでは、自らを「The Android Guy」と称するRicky Perez氏が、Androidに関するあらゆることを取り上げる動画ブログの更新に忙しく取り組んでいる。YouTubeに2万1000人以上のチャンネル登録者がいるPerez氏は、スペック比較からアプリレビューまで、さまざまな内容の動画を投稿している。同氏の動画の大半はAndroidデバイスの利点を賞賛するものだが、iPhoneに対する嫌悪を表明するものもある。
Perez氏は「The Truth About the iPhone 5s」(iPhone 5sの真実)と題した動画の中で、iPhone 5sの「Touch ID」指紋認証スキャナは「マーケティング用の小細工」だと話した。また、「iPhone 5sには依然としてHDスクリーンが搭載されていない」ため、グラフィックプロセッサの性能強化は無意味だとも述べている。同氏はその後、「視聴者がだまされてiPhone 5sを買ってしまわないように」注意を喚起したいだけだと述べて、7分間の動画を締めくくった。
もちろん、ほかのユーザーにiPhone 5sは失敗作だと信じ込ませたいと考えているのは、Perez氏だけではない。またサムスンに対して、ほかのiPhoneファンと一緒に歩道に座っていたRawson氏と同様の感情を抱く人が大勢いるのも間違いない。これらのモバイルブランドのファンたちは連日、比喩的な意味でのリングに立ち、相手を倒すために、iSheepやFandroid、iHaterといった言葉をインターネット上でお互いにぶつけ合っている。
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