口コミマーケティングの業界団体WOMマーケティング協議会(WOMJ)によるカンファレンスイベント「WOMマーケティングサミット2013」。メディアセッションでは、NHK(日本放送協会)、TBSテレビ、スカパーJSATのソーシャルメディア担当者が登壇し、テレビとソーシャルメディアの関係や、運用にあたっての苦労などを語った。なお、ここでは主にTwitterの運用について語られている。
まず議題にあがったのが、テレビ局がソーシャルメディアアカウントを運用する目的について。このテーマに対してNHKとTBSが口をそろえて述べたのが、若年層を中心に“テレビが見られなくなっている”ということだ。この議論はここ数年続いている。
NHK報道局報道番組センター社会番組部 チーフ・プロデューサーの倉又俊夫氏は、“欲しい情報を好きなタイミングで検索して探し出せる”ネットの特性に注目。「その視点でテレビを見るととても不自然。天気予報にしても見たいと思った瞬間には見られないし、もし放送していても知りたい情報が出ないこともある。ネットによって情報を取得するための耐久度が結果的に下がっていると思う」と語る。
また、消費者がアクセスできるデバイスや媒体が多様化したものの、現在も変わらないこととして(1)1日は24時間しかなく情報に触れる時間は限られていること、(2)人は2つの情報を同時に見られない“フィジカル”な存在であることを挙げ、「相対的にテレビの期待値や見る人が減ってきている」との見方を示す。
そこで、消費者を再びテレビに振り向かせるために、各局が目をつけたのがソーシャルメディアだ。基本的にテレビ番組の放送は週に1回。そのため、それ以外の時間でいかに消費者の心を掴むかが重要になると倉又氏は語る。
続いて、TBSテレビ 情報制作局情報4部「情報7days ニュースキャスター」プロデューサーの山脇伸介氏は「TBSでは『リアル脱出ゲーム』などすでにファンがいるところに向けてソーシャルメディアでアプローチしている。また、ニュースキャスターのように年配層も見るような番組にソーシャルメディアをうまく取り入れる実験をしている」と自社の取り組みを語る。
一方で、この2局とは毛色が違うのが多チャンネルデジタル衛星放送の「スカパー!」だ。契約しなければ番組を視聴できないため、消費者からすればテレビをつければ見られる地上波放送と比べてハードルが高い。スカパーJSAT 有料多チャンネル事業部門マーケティング本部 デジタルコミュニケーション部 運用チームの阿部元貴氏は「まずはいかに顧客とのタッチポイントを増やすか。ソーシャルというよりもどうネットを活用するかを考えた」と振り返る。
NHK、TBS、スカパーJSATは、Twitterの日本語版が公開された2008~2009年ごろから公式アカウントの運用を始めている。この数年間でどのような効果や変化を感じているのか。
このテーマについては、3社の担当者とも“これまでよりも視聴者の生の声が聞こえるようになった”とメリットを語る。カスタマーセンターに届くのはクレームなどが中心だが「番組内容についてお礼を言われるのはソーシャルメディアならでは」(スカパーJSAT・阿部氏)という。また、急な事件や災害が発生し番組構成の変更を余儀なくされる際などに、リアルタイム性の高いTwitterを通じて変更内容を発信するといった活用方法も生まれたとNHKの倉又氏は語る。
長期間にわたりソーシャルメディアを運用してきたからこそ気づいたこともあるという。たとえば、TBSの山脇氏はTwitterがサービスとして成長するとともに「自分たちの主張を言いたいだけで、他者の意見には聞く耳を持たない人が増えた」と指摘する。
山脇氏は「TBSぶう」(@tbs_boo)のアカウントなどを担当しているが「(悪質なクレームなどが多く)ダメだと思った相手はブロックするようにしている。放送局だからとかは関係なく、Twitterの機能を活用しているだけ。クレームについては実名でいただいているものに対しては真剣に考えるが、ハンドルネームだけのアカウントについてはそんなにすぐに対応しない」と自身のスタンスを語る。
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