口コミマーケティングの業界団体WOMマーケティング協議会(WOMJ)によるカンファレンスイベント「WOMマーケティングサミット2013」。イベントでは、飲料業界の大手メーカーである大塚食品、サッポロビール、ネスレ日本のソーシャルメディア担当者が登壇し、それぞれの活用事例を交えながら、ソーシャルメディアの課題や可能性について議論した。進行役はアジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏が務めた。
大塚食品 消費者商品事業部 マーケティング部 宣伝課 係長の加藤明氏は、ミネラルウォーター「クリスタルガイザー」、炭酸飲料「マッチ」、レトルトカレー「ボンカレー」などのコミュニケーション戦略を担当。ソーシャルメディアの公式アカウントにも従事している。
過去に同社の公式アカウントで大きな話題を集めたのが、クリスタルガイザーのTwitterアカウントだ。2012年の1月ごろ「飲み口のキャップが開けにくい」「水がギリギリまで入っていてこぼれた」といった、クレームとまではいかない消費者のツイートに対して、「ご迷惑をお掛けし申し訳ございません」と1件ずつ謝り続けた。これがかえって多くのユーザの好感を得た。
加藤氏は「こういったツイートをする方は2度と商品を買ってくれない。その方になぜそうなっているのかをご説明することで、離反することを食い止められる。こちらから急に謝罪のリプライを送っていたが、大半の方は納得いただいたり、好意的な意見をいただけた」と当時を振り返る。
当初はマスメディアではアプローチできないユーザーの補完のためにソーシャルメディアの運用を始めたが、問い合わせ窓口には届かないような小さな声も拾えるようになった。そのため現在は消費者とのコミュニケーションに主軸を置いているという。
「クリスタルガイザーの公式アカウントではほとんど商品の話はしていない。その代わり、いただいたコメントには親身になって返信するようにしている。たまに『彼氏と喧嘩した』といった相談まで受けることもある」(加藤氏)。同社では引き続き、SNSを通じて顧客との接点を増やしていきたいとしている。
サッポロビール 営業本部 企画推進部 デジタルマーケティング室の森勇一氏は、同社のウェブサイトを担当しており、FacebookをはじめとするSNSの運営管理および戦略設計を行っている。同社では、企業価値の向上を目的とした「サッポロビール」のFacebookページと、商品ブランドを前面に押し出した「ヱビスビール」のFacebookページを運営しており、アカウントによって発信する情報を変えているという。
たとえばサッポロビールのアカウントでは、ユーザーが比較的自宅にいることが想定される日曜日の夜に、新商品に関する情報や、うんちくネタなどを週替わりで投稿。「いいね!」やコメントを分析して、商品開発などに反映させている。コメントについては、森氏が要約して社内レポートのような形で担当部署に提出するなどしているという。
サッポロビールがFacebookページの運営にあたり重視しているのが、月に複数回「いいね!」やコメントを残してくれるロイヤリティユーザーだ。同社によれば10万人を超えるサッポロビールのFacebookページのロイヤリティユーザー率は6.7%、7万人を超えるヱビスビールのFacebookページでも5.4%にのぼるという。
当面の目標は、Facebookページのファンを増やしつつ、いかにロイヤリティユーザー率を維持するかということだ。1件の投稿に対する反応を示すエンゲージメント率を重視する企業も多いが、森氏は「エンゲージメント率を上げることも大事だが、サッポロビールやビールを飲むことが本当に好きな人にきてもらってコミュニケーションしてほしい。1度きりのキャンペーンではなく、(ユーザーとの関係を)継続していきたい」と強調した。
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