Googleのシンガポールオフィスで開催された、アジア地域における中小企業のウェブ活用事例を紹介するプレスコンファレンス「Helping Small Business Think Big」。イベントでは、先に紹介した日本のラーメン店「一風堂」や、マレーシアのカスタムBOX事業者「Boxman」のほかにも、ウェブによって“ビッグビジネス”へと変貌を遂げた中小企業が数多く存在する。
インドで冷蔵庫用のマグネットをお土産として販売する「Chumbak」もそのうちの1社だ。Vivek Prabhakar氏は、世界各国を旅する中でインドでは観光者向けのマグネットが販売されていないことに気付き、当時の自宅を売却して資金を用意し事業を開始した。
当初はPDFの商品カタログをメールで送るなどして販路の拡大を狙ったが、思うように売り上げが上がらず、2010年4月にオンラインショップを開設。これにあわせて「Google AdWords」の利用を開始したところ、予想を大幅に上回る問い合わせが相次いだ。
さらに、インド国内にとどまらず日本からも商品サンプルを希望する問い合わせがあった。「われわれの製品がインド以外で売れるなんて思っていなかった。日本からの問い合わせは信じられなかった」(Prabhakar氏)。Chumbakのマグネットはリアルの店舗でも販売されており、インドの150店舗、日本の100店舗で取り扱っているという。
マレーシアでインテリアデザインを手がける「HOMEBOX」は、ショールームや電話相談などで仕事を受注していたが、移動手段がなくショールームに足を運べない顧客に訴求できないという課題を抱えていた。また、多くの顧客がネット上でインテリアデザインの情報を閲覧していることを把握していたという。
そこでAdWordsに出稿したところ「顧客やサプライヤーとの関係が180度変わった」とHOMEBOXのLeslie Tan氏は語る。売り上げは毎年20~30%ずつ上がり、現在はサプライヤーから毎月10件近い引き合いがあるという。「われわれのようなインテリアデザイン事業者にとって、顧客との接触はクリックから始まる。オフラインでもサービスは提供できるが、われわれの売上げは20~30%低いままだっただろう」(Tan氏)
香港にあるタトゥーのデザインスタジオ「Tattoo Temple」もAdWordsで“ビッグビジネス”へと成長した企業だ。タトゥーの価格は200~1万ドル以上と高額で、Chris Anderson氏は「この市場はニッチの中のニッチ。またサービスを出荷できないことも課題だった」と振り返る。
同社では2006年に事業を開始するも、ターゲット層であるハイエンドな顧客になかなかリーチすることができなかったという。そこでAdWordsを導入したところ、1日5~10件だった問い合わせが100件に増加。売り上げも約3倍に拡大した。
ウェブサイト上では15万以上のアートワークを掲載しており、顧客は自身のタトゥーのデザインの参考にできる。また顧客の約7割が海外に在住しているため、ビデオ会議で相談に乗ることもあるという。人気の高い彫り師は2年待ち、またそれに続くアーティストでも9カ月待ちとなっているそうだ。
キーノートスピーチでGoogleのアジア太平洋地域担当副社長であるKarim Temsamini氏が語ったように「あらゆる規模の企業にチャンスがある時代」が到来していると言えるのではないだろうか。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」