D2Cが語るスマホ時代のマーケティング--宝珠山社長インタビュー

 スマートフォンが急速に普及している。IDC Japanの調査によれば、2012年のスマートフォンの出荷台数は前年比42.1%増の2848万台にのぼるという。これにともない、スマートフォン向けのキャンペーンアプリやO2O(Online to Offline)サービスも数多く登場しており、企業のマーケティング手法はよりいっそう多様化している。

 10年以上にわたりモバイル広告事業を展開するD2Cは、こうした現状をどう見ているのか。また2013年はどのようなマーケティング手法が求められるのか。同社代表取締役社長の宝珠山卓志氏に聞いた。


D2C代表取締役社長の宝珠山卓志氏

――2012年は国内におけるスマートフォンの出荷台数が大幅に増加しました。

 個人的にはもう少し普及しても良かったのかなと思います。D2Cでは定期的にモバイル利用動向調査を実施しているのですが、国内のスマートフォンユーザーの比率が上がるのに従来よりも時間がかかるようになってきています(2012年8月調査で36.4%、11月調査で37.6%。約3カ月で1.2%増)。

 それはスマートフォンが買い換えのタイミングに入り始めていて純増にはつながっていないということです。台数自体は売れていますが、既存のスマートフォンユーザーが買い換えているだけなので、結果的にまだフィーチャーフォンが6割を維持する状態になっています。

――そのような状況の中、モバイル広告市場に変化はありますか。

 我々として予想外だったのは、フィーチャーフォンユーザーがまだ6割近くいるのに広告予算は激減しているということです。一方で、スマートフォンはまだ4割に満たないのですが、すでにフィーチャーフォンの広告予算を上回っています。さすがにそこまで成長するとは思っていませんでした。

 これは弊社の推計ですが、フィーチャーフォン広告市場は減少を続けて2012年度は450~500億円規模に、反対にスマートフォン広告市場は800億円規模まで成長します。このスマートフォン広告800億円の約半分が検索によるものです。スマートフォンになるとPC的な使い方が増えるため、PCやフィーチャーフォンの予算がスマートフォンに流れてきているものと考えられます。

 また、スマートフォンならではの特徴としてアプリが挙げられます。「1ダウンロードで○○円」という、これまでのウェブ上では考えられなかったビジネスモデルが普及していて、リワード広告やアフィリエイトが大きくシェアを伸ばしています。一方で、広告市場のデファクトといわれていた純広告のモデルはたった10%しかないという、極めて特異なマーケットになっているのかなと思います。

 ただし、いまのスマートフォン市場ではお金になっているのがゲームばかりです。フィーチャーフォンの時代には、ニュースや天気、占い、株など幅広いジャンルがあって、いろいろな人が使っているからこそ媒体としての価値も高かった。そういう意味では、現在のスマートフォン市場はゲームユーザーに特化しすぎているのかなと思います。

――フィーチャーフォンと比べて、スマートフォンやタブレットは画面サイズが豊富なのも特徴です。

 やはり各社が悩んでいるところです。Androidスマートフォンが登場した瞬間に、これはものすごい種類のサイズが出るだろうなと思いましたし、それによって猛烈にフラグメンテーション(断片化)が起こると思いました。

 その状況は一度技術が枯れてしまえば、ノートPCなどと同様にサイズや規模がある程度集約されて、マーケティング手法や広告のサイズも標準化されていきます。ただし、スマ―トデバイスに関しては、腕時計型メガネ型の端末まで登場しつつありますので、技術の進展が止まらずに再びフラグメンテーションが起きると考えています。ですので、しばらくは安定期まで時間がかかるでしょう。

――動画などリッチコンテンツを使ったキャンペーンアプリやLINEの公式スタンプなど、スマートフォンのマーケティング手法は多様化しています。

 これまでは邪魔なものとして考えられてきた広告のポジションが変わってきていると感じています。スマートフォンでは特に広告とコンテンツが明確に切り分けられなくなってきています。たとえば、企業があるキャラクターを育てるゲームアプリを配信していて、そのキャラクターに企業のCMの音楽を聴かせると特別なイベントが発生します。我々から見ると広告ですが、企業からするとコンテンツかもしれません。そうなると何をもって広告なのか、マーケティングなのかという定義は難しいですね。

 消費者に受け入れてもらうことが1番良いと考えた場合、スマートフォンでアプローチする方法は多岐にわたります。それは、バナーのように見せることもできれば、ゲームのように見せることもできます。また従来のようにメールでもいいですし、LINEのスタンプのようにコミュニケーションに入り込むこともできます。消費者と企業の接し方のレベルでいろいろなレイアーが生まれているのだと思います。

――ネットとリアルの店舗などをつなぐ「O2O」事業にも各社が参入し始めています。

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