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モトローラ・モビリティがグーグルに身売りを決めるまで - (page 2)

坂和敏2011年08月16日 16時32分

モトローラに経営改革を強いた大物投資家の登場

　ここで、少し時間を遡る。

　Motorolaが経営不振に喘いでいた2007年に、80年代から「物言う株主」あるいは「乗っ取り屋」として名を馳せてきた大物投資家、Carl Icahn氏が市場でMotorolaの株式を買い集めていた。まとまった株式を手にして筆頭株主に躍り出たIcahn氏は、Motorolaの経営陣に対して同社取締役会の議席提供や株式の買い戻しを要求するなどの働きかけを通じ、これ以後同社に対し市場価値の向上を強く求め続けることになる。

　同氏のこの要求が実を結んだのが、2010年に発表されたMotorolaの2分割案。この分割を通して潜在価値の実現を目指した同社は、2011年1月1日付けでこの計画を実行。その結果、携帯通信端末およびSTBをつくるMotorola Mobilityと、携帯通信事業者向け機器やサービス、警察や消防無線用機器、トランシーバーなどを扱うMotorola Solutionsに分かれた。なお後者は、4月末にNokia Siemens Networksに買収されている（日本のKDDIが契約を結んでいたのも後者）。なお、Wall Street Journalによれば、Icahn氏の手元には現時点で前者（Motorola Mobility）の約11％超の株式があるという。

　しかし、SamsungやHTCといった競合するAndroid端末メーカーが台頭し、一番の頼みの綱としていたVerizonがこれらのメーカー製端末の取り扱いをはじめ、さらに今年に入ってからはCDMA版iPhoneの取り扱いさえ開始したことなどから、MMIの相対的な存在感が低下、これを受けて同社の株価は年頭から下降の一途をたどってきていた。

　米国市場の比重が半数以上を占めるMMIという携帯端末事業にとっては、Verizonという「キングメーカー」から見放されつつあることが、現在の経営難−−第2四半期には8500万ドルの赤字（GAAPベース）を計上−−に直接つながっているわけだが、そうしたなかで前述のIcahn氏ら株主は、MMIが保有する大量の無線通信関連特許の売却を求めた。

　AppleやMicrosoftがAndroid陣営の各社と特許侵害をめぐって争うなかで、同分野関連の知的財産（特許）は高騰の一途をたどった。6月末に実施された通信機器メーカーNortelの特許売却オークション（約6000件の特許が競売にかけられた）では、事前に15億〜20億ドル超と見積もられていた落札金額が、結局45億ドルにまで跳ね上がった。

　MMIの経営陣は、こうした流れを視野に入れながら、Nortelの特許オークションでAppleやMicrosoftらのつくるグループに「宝の山」をさらわれた格好のGoogleに、その直後から接触をはじめたと見られている。なお、一連の交渉は両社の経営トップを中心に極秘裏に進められたとされているが、先週（米国時間9日）にはMMIのCEO、Sanjay Jha氏が「Microsoftから、Nokiaへのものと同じ条件が提示されれば、Windows Phone OSを採用してもいい」という主旨の発言があったと報じられていた。

　いまになって振り返れば、Googleへの「牽制球」ともとれる発言が、最終的にGoogle側の肩を押す役目を果たすことになったのかもしれない。