東京ドーム開催「アイマス」と「ラブライブ!」コラボの異次元フェスで見た“繋げた想いが生むステージ” - (page 5)

 前述したように、2つのシリーズとも東京ドームでの単独ライブを実現しており、キャラクターコンテンツ発のライブイベントが東京ドームで行われることも、異例と言える状況でもなくなりつつあるが、それでもコンテンツとしてのパワーがあるからこそ開催できているのであり、さらにこれだけの出演者に楽曲披露、そして配信を含めて27万人を動員したことはこのことを証左していると感じている。

 私事で恐縮だが、筆者自身アイドルマスターシリーズはアーケード版のロケテスト時代から触れてきており、ラブライブ!シリーズは最初期からとは言えないが、μ’sの5thシングル「Wonderful Rush」ぐらいから興味を持ち始めて、両方のシリーズを今日まで見続けてきたところがある。そんな筆者からすれば“信じられない未来が実現した”、そして“奇跡が起きた”と思えるもの。2つのシリーズに触れている度合いによって感じ方は異なるかもしれないが、奇跡という言葉が過言ではないということは感じてもらえるのではないかと思う。内容もお互いの持ち歌を披露するだけではなく、シリーズとグループの枠を超えたコラボステージも存分に盛り込まれ、まさに夢のような光景だった。

 とかく比較されがちな2つのシリーズではあるが、各シリーズとグループ、コンテンツそれぞれに良さがあり、両方を見てきたからこそお互いの良さを感じてきたところもあった。もちろんそれぞれ長い歴史と充実したコンテンツを持っており、さらにはあふれるぐらいのエンタメコンテンツがある現状では、お気に入りのシリーズやグループ以外までなかなか追い切れないのも実情としてある。しかしながら、このような機会があることで、知識がないシリーズやグループ、楽曲などのコンテンツを知る大きな機会になったことは、SNSでの反響でも感じられ、なによりこのライブを盛り上げようという思いはファンにもあったことが、大盛況になったことに結びついたのではないかと推察できる。

 何より、アイラブ歌合戦に参加したグループのみならず、2つのシリーズを紡いできたブランドなり事務所なりアイドルなりスクールアイドルなり、そしてそこに関わる関係者と接してきたファンも含めて、バトンをつなぎ、そして想いを繋いで長年展開してきたからこそ生まれた奇跡でありステージで、だからこそ感動できるライブになったと実感している。

 今回の異次元フェスは第1弾とうたっており、第2弾以降の開催も期待できる一方、それがアイマスとラブライブ!に関わるものかは当然不明であり、そもそもこれだけのライブを行ったうえでの次というのもなかなか想像しにくいが、信じられない未来を目の当たりにした以上は期待したいところでもあり、願わくばまた2つのシリーズで、と思えた次第だ。

「異次元★♥BIGBANG」(Day.1)
「異次元★♥BIGBANG」(Day.1)

 また余談ではあるが、筆者個人としても印象的なところはある。というより“ヒトツダケナンテエラベナイ……”どころか、ありすぎてもはやどこから触れていいのかわからないぐらいではあるが、そのなかでもまず触れておきたいところとしては、東京ドームでμ’s楽曲の「僕らは今のなかで」を聴けたこと、「Snow halation」のオレンジ色に染まる光景を見られたことだろう。筆者自身はμ’sの東京ドームワンマンライブを現地で目の当たりにし、記事も書いていたりするする。

 その後「ラブライブ!フェス」でμ’sが参加し、歌った光景も感激したのだが、月日が流れこのようなタイミングで、アイドルマスターシリーズのキャストがカバーする形で、この楽曲と光景を東京ドームで聴いたり見たりする日が来るとは本当に思っていなかったのが、正直なところだ。そして素直にそれが良かった、感動したと思えるものであり、このアイラブ歌合戦が、2つのシリーズを尊重しあうステージだったからに他ならないだろう。もちろん、「READY!!」と「M@STERPIECE」が東京ドームの場で、そしてラブライブ!シリーズのキャストがカバーする形で披露されることも、限りある時間のなかで輝くスクールアイドルが、永遠をうたう「M@STERPIECE」を歌唱しているのもグッときたところだった。

 加えるなら、μ’sのお気に入りメンバーは星空 凛なのだが、Day.2幕間で行われた猫になりきってのコール&レスポンス「にゃんにゃんにゃーん」は、凛のコール&レスポンスをほうふつとさせるものだったこと、そして幕間のメンバーに“渋谷 凛”がいたことは付記しておきたい。

 また蓮ノ空の筆者お気に入りメンバーが日野下花帆で、ユニットがスリーズブーケということから見ても、印象的と思えるところはあった。花帆は楽しそうなことにいつも全力で、笑顔を絶やさない元気な女の子。ユニットを組む梢はスクールアイドルクラブの部長で文武両道、眉目秀麗の優等生となっている。とかく楡井さんと花宮さんのステージで魅力的に映るところとして、こうした説明やメンバーの姿が映し出されていなくても、花帆と梢そのものと感じられる表現力の高さ。披露された楽曲で話題となった「Holiday∞Holiday」は、王道アイドルソングのなかでもキャッチーな歌詞を盛り込み、手をつないだり腕をつかんだりと“尊い”と思えるシーンも、花帆と梢を感じられるからととらえている。

 また東京ドームの場で聴くことができてよかったスリーズブーケ楽曲に、「Mix shake!!」がある。筆者が利用しているサブスク音楽配信サービスで、2023年で一番聴いていたぐらいの楽曲なのだが、前述のようにタオル曲でライブの場でも盛り上がるであろうことも予想され、東京ドームの大舞台でその光景を見てみたかったところがある。まさかコラボでのステージになるとは思わなかったが、楡井さんがけん引するように歌っていたことはもとより、シンデレラガールズで気になるアイドルに佐々木千枝をあげていることもあり、キャストの今井さんが参加しているところも嬉しかったと感じているところだ。

 なおライブからはズレるが、メンバーが定期的に「Fes×LIVE」と題したバーチャルライブをおこなっているなかで、「103期7月度Fes×LIVE」の冒頭にある「Reflection in the mirror」という楽曲で、“光の壁(鏡)”を作った演出はかなり秀逸だと感じていることは付記しておきたい。

「Mix shake!!」(Day.2)
「Mix shake!!」(Day.2)

 Liella!お気に入りのメンバーが桜小路きな子ということを踏まえても、印象的と思えるところはあった。きな子は北海道からひとり東京に出てきて初めての大都会で不安を抱えつつ、スクールアイドルに出会い、運動も勉強も苦手というなかでも自分を変えようと頑張るメンバーとなっている。「Jump Into the New World」のジャケットできな子がベレー帽をかぶっていてお似合いと感じているなかで、再現したかのような衣装と帽子もかぶって登場した鈴原さんにも同じ印象を持っているとか、きな子が憧れるようなスクールアイドルの姿を、Liella!や5yncri5e!のステージで体現しているというのもあるのだが、なかでもそのことがすごく現れていると感じられたのは「MIRACLE NEW STORY」のステージだろう。

 Liella!楽曲というなかで、各グループがひとりずつがセンターステージに集結。個性的なアイドルとスクールアイドルのキャストがそれぞれ個性を伝えるようなパフォーマンスを見せるなか、鈴原さんがこのステージを心から楽しんでいることが伝わる笑顔や表情の豊かさに引きつけられるところがあった。スクリーンに映し出されることも多く、随所にカメラアピールも行われたが、楽しんでいる気持ちがあってこその笑顔であり、きな子そのものというよりも成長して少し先にある、憧れているスクールアイドルの姿とも思えたところがあった。

 なおライブからはズレるが、きな子には「ビギナーズRock!!」というソロ曲があり、ガールズロックを歌う意外性がありつつもきな子そのものを表していること、4thライブツアーで鈴原さんが歌うたびに成長していると感じられる姿が心に残っていることは付記しておきたい。

「MIRACLE NEW STORY」(Day.1)
「MIRACLE NEW STORY」(Day.1)

 ミリオンライブ!でのお気に入りアイドルは木下ひなた。このライブでは不在……と言いたいところではあるが、「Brand New Theater!」のMVや「Rat A Tat!!!」のオープニングアニメには歌っているところが映っており“ひなたをはじめミリオンスターズ39人が参加していた”ということはまず伝えておきたい。ミリオンライブ!は765プロライブ劇場(シアター)を盛り上げていくという世界観のあるなかで、その劇場公演さながらと感じさせるバラエティに富んだ楽曲たちが披露されていったのが印象的。「ジャングル☆パーティー」のインパクトもさることながら、「fruity love」のキュート感、「アライブファクター」や「ハーモニクス」のような本格ボーカルソングなど、振り幅の大きさも魅力であることが、出演キャストのパフォーマンスを通じて伝わったように感じている。

 ひなたが歌唱メンバーとなっている楽曲というところでいけば、「俠気乱舞」が歌われたことは熱かった。前述のように、劇中劇にあたる任侠作品をイメージした楽曲で、ひなたは悪徳組長役を演じており、その様子はCD「THE IDOLM@STER THE@TER ACTIVITIES 02」や、ミリシタ内「プラチナスターシアター~俠気乱舞~」で熱演ぶりを見ることができる。

 このステージでは“お嬢様”や“令嬢”的な立ち位置にあるアイドルやスクールアイドルのキャストがパフォーマンス。ミリオンライブ!からの参加となった南さんが、凜とした芯のある歌声を響かせたのもさることながら、小宮さん、内田さん、青山さんがラブライブ!シリーズのステージを通じて培ってきたと感じさせる、ヘッドセットマイクでの両手を使った振り付けに、キレのある振りが新鮮と感じられるものに。特に小宮さんの衣装は、ダイヤのソロ曲「Perfect SEKAI」のスペシャルMVで着ている和装衣装で、それがはまりすぎているというぐらいに、この楽曲とステージにマッチしていた。これまでもアイマスシリーズのなかでさまざまなキャストが歌ってきた楽曲であるなかで、新たな魅力が加えられたと感じられるものとなっていた。

 ちなみに悪徳組長役というとかっこいいイメージもありそうだが、ひなたは実家が北海道のりんご農家という田舎からひとり東京に上京して頑張る、のんびり純朴なカントリーガール。アイドルのお仕事のなかでは、北海道壮瞥町のりんご大使に就任した経歴を持つ。やさしい雰囲気は、楽曲「あのね、聞いてほしいことがあるんだ」から伝わってくることを付記しておきたい。

「俠気乱舞」(Day.2)
「俠気乱舞」(Day.2)

 またミリオンライブ!関連でいけば、「未体験HORIZON」でAqoursとミリオンスターズがコラボしたことも印象的なのだが、これはAqoursお気に入りのメンバーが国木田花丸であることにもつながっている。花丸は地元で代々続くお寺の娘であり、特に日本文学をこよなく愛する文学少女。歌が得意という花丸をほうふつとさせる歌唱力を高槻さんが随所に披露していたのをはじめ、「繚乱!ビクトリーロード」では、様になっていた学ラン姿で花丸の口上で“オハナまる”を決めていたのも嬉しかったところ。

 そして「未体験HORIZON」は花丸のセンター曲となっている。東京ドームの場では、4thライブでセンター曲を願い、その後歌われるなかで6thライブ<WINDY STAGE>でも披露されたことは思い出深い出来事。そして今度は“蝶”つながりでミリオンライブ!とのコラボとして帰ってくるということは夢にも思わなかった。スクリーンに黄色と青の蝶が多数舞う光景も壮観であったこともさることながら、歌詞の内容がミリオンライブ!との親和性が高いと感じさせたうえ、山崎さんのソロパートや、高槻さんと山崎さんが並び立って、手で蝶の形を作って歌うところはジーンと来てしまうようなところだった。

 ちなみに花丸は松浦果南と黒澤ダイヤと「AZALEA」とユニットを組んでおり、「Amazing Travel DNA」をよく聴いていること、また花丸のソロ曲としては「やあ!行雲流水!?」もよく聴いていて、WINDY STAGEにおいて高槻さんがギターを手に弾き語りで歌ったことにとても感激したことは付記しておきたい。

「未体験HORIZON」(Day.1)
「未体験HORIZON」(Day.1)

 シャイニーカラーズでお気に入りのアイドルが桑山千雪で、ユニットがアルストロメリアというところでも触れておきたい。千雪は落ち着いた雰囲気と包容力をもつ、事務所のお姉さん的存在でもある23歳のアイドル。ユニットを組む大崎甜花と大崎甘奈は、双子姉妹となっている。披露した「アルストロメリア」はユニット始まりの曲でもあり、これまでも幾多の場面で幸福論を誕生させてきた楽曲。東京ドームでは「バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル」でも披露しており、歌合戦ということであれば、勝負曲と言えるだろう。プロデューサーさんではない観客を含めて、癒しと幸福に満ちた雰囲気で包み込んでいった。

 今回のステージでは、シャニソンのMVとして表現されている3Dモデルのアイドルたちとの共演が実現したことが特筆すべきところだろう。これまでもアイドル3人そのものと感じさせるステージではあったが、アイドルたちも東京ドームの場に立ったという感慨深さもあり、一緒になって歌い踊る光景もグッとくるところだった。

「アルストロメリア」(Day.1)
「アルストロメリア」(Day.1)

 もうひとつ触れておきたいのはアルストロメリア楽曲「ラブ・ボナペティート」のコラボステージで、筆者としてDay.1で最も衝撃的という光景が広がった。楽曲自体は製菓用語が随所に盛り込まれたキャッチーな歌詞とともに、甘い雰囲気とかわいらしさ全開というもの。前述のように芝崎さんに加え、高槻さん、指出さん、坂倉さん、月音さんというラブライブ!シリーズのキャスト4人が参加する形となっていた。

 この日の芝崎さんは、千雪をほうふつとさせる三つ編みを高い位置で作っていたこともありキュート感が増していたこととか、千雪がスクールアイドルを引率するお姉さんのような雰囲気だった……というだけであれば衝撃的ではないのだが、前述のようにAqoursお気に入りのメンバーが花丸で、そのキャストである高槻さんがいたこと、さらに衣装が「LoveLive! Sunshine!! Kunikida Hanamaru First Solo Concert Album ~おやすみなさん!~」のジャケットイラストで花丸が着ている個別衣装に着替えていたこと、さらに詳しくは後述するが、ニジガクお気に入りのメンバーがエマ・ヴェルデであり、そのキャストである指出さんがいたこと。お気に入りのアイドルとスクールアイドル3人のキャストが、しかも横並びで立っていたことは、まさに異次元級の衝撃だった。

 とかく、高槻さんが花丸として歌うときの暖かみのある歌声と、指出さんがエマとして歌うときの癒やしの歌声は楽曲との相性もよく、芝崎さんが千雪として歌うときの優しい歌声も相まって、夢見心地になれるもの。それに加えてかわいらしい振り付けもさることながら、口元近くに手を当てて開く振りでは、ヘッドセットマイクにより両手で表現されるとインパクトが大きい。そして坂倉さんのフレッシュさと月音さんのアイドル感あるキュートさも加わったステージは極上の空間であり、素直な感想を書くのであれば“生きててよかった”だ。

 ちなみに千雪には「Darling you!」というソロ曲があるほか、アルストロメリアはかわいらしい楽曲も多いなか「Give me some more...」というビター感のある楽曲もあるということは付記しておきたい。

「ラブ・ボナペティート」(Day.1)
「ラブ・ボナペティート」(Day.1)

 シンデレラガールズのお気に入りが、龍崎薫ということを踏まえても触れておきたいところがある。薫は夏とひまわりが似合う、いつも元気いっぱいな9歳のアイドルで、プロデューサーのことを「せんせぇ」と呼ぶのも特徴となっている。見ていて“元気な薫がそこにいる”という感覚をステージ上で体現するように、春瀬さんが誰よりも大きく、そして勢いも感じさせる体の動きと表情の豊かさは、大舞台だからこそより目を引くもの。笑顔いっぱいのステージというなかでも「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」ではりりしい雰囲気を醸し出したり、「コットンキャンディえいえいおー!」では無邪気さがうかがえるようなパフォーマンスを展開。

 そんななかでも取り上げておきたいのは、TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」のオープニングテーマ「Shine In The Sky☆」のステージだろう。もともとはコミックとして展開されているもので、“年少組”と呼べるような少女たちが所属する「第3芸能課」のアイドルたちの姿を描いた作品。2023年4月からTVアニメとして放送された。

 U149としては「バンダイナムコフェスティバル」で東京ドームの場に立っており、そのときは4人でのステージだった。それからTVアニメをひっさげ、さらに出演メンバーの増えた形に。しかもイベントで楽曲は披露されているが、リトルマイシンデレラの衣装をまとってのライブは初めて。遠目で見ると少女たちの元気のよさやにぎやかさを感じさせるところもあるが、よく見るとそれぞれが卓越したダンスパフォーマンスでアイドルの個性を表現。これはこの曲だけではなく「コットンキャンディえいえいおー!」との相性の良さも感じさせるものに。薫をほうふつとさせるような元気いっぱいに動く春瀬さんをはじめ、大舞台で躍動する光景は感慨深さを感じさせるとともに、小さなアイドルたちが大きな未来に向けての飛躍を誓うようなステージにも感じられたところだ。

 ちなみに、U149の関連楽曲として薫のソロ曲「ひまわりマークをさがせ!」がある。もともと薫はソーシャルゲーム版の初期登場アイドルというなかで、途中のボイス実装をへて、世に出てから約10年かかってもらえたソロ曲であり、10周年ライブツアー福岡公演で披露されたときは言葉にならない気持ちだったことは付記しておきたい。

「Shine In The Sky☆」(Day.2)
「Shine In The Sky☆」(Day.2)

 これでも書き足りないぐらいではあるが、最後にアイラブ歌合戦で筆者が一番感激したこととして触れておきたいのは、ニジガクのお気に入りメンバーがエマ・ヴェルデであることを踏まえての、指出さんによるソロ曲「哀温ノ詩」のステージだ。エマは、自然あふれるスイスからスクールアイドルにあこがれて単身来日。抜群の包容力で、みんなを支えてくれる心優しいメンバーとなっている。

 「哀温ノ詩」は和風バラード曲であり、ステージではスクリーンに映し出されるエマと同じような、赤を基調とした着物風衣装に特徴的な髪型かつ扇子を手にして、指出さんがセンターステージ上段に登場。エマとシンクロするように丁寧な動きと扇子を巧みに使いつつ、指出さんがエマとして歌うときの高く澄んだ歌声が、静まりかえった東京ドームいっぱいに響かせた。どこか癒やしのなかでも鳥肌が立つような心に響く歌声と、エマとのリンクしたステージもあってか、終わった後の拍手も鳴り止まない状態となっていた。

 ……と、これだけでも感激できる場面でもあるのだが、それを後押しするものがある。そもそもこの曲が持つエピソードとして、エマがスクールアイドルに憧れるきっかけとなった曲であり、スクールアイドルの思いを受け継いだ曲でもある。それがニジガクの基点であり、現在はサービスが終了している「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」(スクスタ)のキズナエピソード(個別エピソード)に描かれていた。

 小さいころにこの曲を歌うスクールアイドルを見て憧れるようになったこと、そのスクールアイドルを探すなかで、今歌っているスクールアイドルと偶然出会い、先輩から受け継いで歌っていること、そのスクールアイドルが辞めるときに、この曲をエマに託した……というのが大まかな流れ。運命的な出会いとともに、歌に対しての強い思いと愛着、そして想いがつながっていくことを感じさせる内容となっていた。その全てではないが、ラブライブ!シリーズ公式チャンネルにある「【エマ・ヴェルデ】3rdソロ楽曲のあゆみ ~哀温ノ詩~ キズナエピソードダイジェストPV」であったり、筆者が執筆した「スクスタ」のインプレッション記事でも一部ではあるが紹介している。

 こうしたエピソードを知らずとも、アップテンポでキャッチーな楽曲が好まれるフェスの場でも、和風バラードで魅了できるだけの楽曲であり歌声の力はあると感じており、それを他のグループのファンやプロデューサーさんに感じてほしいとは思っていた。一方、一個人の願望はあっても、ポップで耳なじみがよく、TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話挿入歌にもなっている「La Bella Patria」や、メイドをテーマにした楽曲で、かわいらしさあふれる「いつだってfor you!」が歌われるのではないかと思っていた。そのため、「哀温ノ詩」のイントロが流れ、スクリーンに着物姿のエマが映し出されたときは本気で驚いたのが正直なところ。場内でも驚きの声が大きいように感じたのは予想していなかったり、そもそもライブで歌われるのは2021年末のシリーズ合同カウントダウンライブ以来、約2年ぶりというのもあるだろう。

 振り返れば、「哀温ノ詩」がライブで初披露されたのは、無観客でのオンライブとなった2ndライブ。その後も歌われつつ、こうして大舞台で歌われたのも感慨深いところ。そしてスクスタのMVでもあるエマがスクリーンで歌い踊る姿は、スクールアイドルにあこがれてスイスからやってきたエマが、東京ドームの大舞台に立つというだけではなく、想いを繋げて受け継いだ楽曲を大舞台で披露できたという意味合いもあり、エマのなかに秘めた決意や思いを、歌声を通して伝えて体現していく指出さんの歌唱力を含めたパフォーマンスが、涙腺を刺激しエモーショナルな気持ちにさせてくれるもの。また場内がエマのイメージカラーであるライトグリーンのコンサートライトが振られるなか、筆者の見た範囲ではわずかではあったものの、エマに託した夏川マイをイメージさせる紫のコンサートライトも振っている方を見つけたときも、この気持ちを増幅とさせるもの。あの光景を見たときは涙が止まらなかったのを覚えている。

 ニジガク12人のソロ曲披露で一番最後であったのは、繋いできた想いを示すものではないかと推察できるもの。100曲あるうちの1曲でありショートバージョンではあるが、繋げてきた想いが生んだステージと思えた次第だ。

「哀温ノ詩」(Day.2)
「哀温ノ詩」(Day.2)

 なお、本公演の有料アーカイブ配信は「ASOBI STAGE」と「ABEMA」にて、期間限定で実施中。配信期間はDay.1とDay.2ともに12月18日23時59分まで(配信チケットの販売は12月18日20時まで)。また、本公演のBlu-rayが2024年8月7日に発売が決定。各CDショップやECサイトにて予約受付中となっている。詳細は「異次元フェス アイドルマスター★♥ラブライブ!歌合戦」公式サイトにて記載されている。

「異次元フェス アイドルマスター★♥ラブライブ!歌合戦」公式サイト

THE IDOLM@STER TM&(C)Bandai Namco Entertainment Inc.
(C)2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
(C)2022 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
(C)2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!
(C)プロジェクトラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ

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