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コロナ禍でも本質は「何も変わっていない」--西口一希氏に聞くマーケティングにいま必要なこと

藤井涼 (編集部) 藤川理絵2020年10月26日 08時00分
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 P&Gやロート製薬、ロクシタンジャポンなど大手消費材メーカーを渡り歩きながら、数々のヒット商品のマーケティングを手がけてきた西口一希氏。その後、軸足をITへと移し、スマートニュースの累計5000万ダウンロードやユニコーン企業への成長に大きく貢献した。

 2019年8月末にスマートニュースを退職し、現在はビジネスコンサルタントや投資活動に従事しているという同氏に、コロナ禍のマーケティングに求められること、スタートアップや起業家に伝えたいこと、いま描いている今後のビジョンなど、幅広いテーマについて話を聞いた。

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■西口一希氏
大阪大学経済学部卒業後、P&G入社、ブランドマネージャーやマーケティングディレクターを歴任。2006年ロート製薬入社、執行役員マーケティング本部長に就任。「肌ラボ」「デ・オウ」などスキンケア、医薬品、目薬など60以上のブランドを統括。2015年ロクシタンジャポン代表取締役就任、アジア人初のグローバル エグゼクティブ コミッティ メンバー選出などを経て、2017年スマートニュース日米マーケティング担当 執行役員に就任。累計ダウンロード数5000万、月間使用者数2000万人を達成し、2019年8月に国内3社目のユニコーン企業となる急成長に貢献。現在はStrategy Partners 代表取締役、M-Force 共同創業者、日本企業成長投資(NIC)のアドバイザーとして、ビジネスコンサルタント、投資活動に従事している。

「独自性のある便益」は何かを考えるべき

——西口さんは、2019年8月にスマートニュースを退職されましたが、現在はどのような活動をされているのでしょうか。

 スマートニュース在籍時から、企業のマーケティングや経営のコンサルティングを業務委託でやらせていただいていました。1業種1社さんに限定して、さまざまな業種に携わってきましたが、スマートニュースを退職して、いま13社まで広がっています。

 そのうち半分が上場企業で半分がスタートアップ企業なのですが、業態もいろいろで、B2B、B2C、通販、店舗販売とバラエティに富んでいまして、非常に楽しくやらせていただいています。

——1業種1社で多業種というスタイルにしたのは、なぜでしょうか?

 もともと、競合する企業さんを同時に担当するのはよろしくないだろうという、ビジネス・エシックス(企業倫理)の観点で1業種1社と決めていました。また、コスメや日用雑貨などの消費財はP&Gやロート製薬でも相当やってきたので、自分の知らないカテゴリーに携わりたいという気持ちも強くて、多業種となっています。

 僕は人間の生活に関することは、全部めちゃくちゃ興味があるんですよ。「どうすれば人間は物事に興味を持って、行動に移して、幸せになったり不幸せになったりするのだろう?」と考えることが多くて、多業種への関わりを通じてそれを多角的に見てみたいのだと思います。

 コンサル依頼がなくても、たとえば電車に乗りながら「電車の今後って、どうあったらいいのだろう?」と考えることもあるし、「この広告でいいのだろうか?自分だったらどうするだろう」と、あらゆる業種のことをしょっちゅう考えているので、ライフワークというか趣味の領域に近いのかもしれません(笑)。

——常に身の回りのあらゆるものに対して疑問を持つようにされているのですね。さまざまな業種や業態に携わるなかで、どのようなやりがいや面白さがありますか?

 ビジネスの重要なポイントが見えてくる、これは非常に面白いですね。各社とも提供するサービスやプロダクトは違うし、経営課題もそれぞれですが、「お客様の考え方や行動をどれだけ理解して深く洞察するかが問われる」という、基本スタンスは同じです。

 多業種に携わることで、“こういうことを求めるよね、こういう行動を取るよね”という、人間の心理として当たり前な部分や、打ち手として明らかにどこでも共通して効果的なことが見えてくるのです。同時に、ビジネスの違う側面もインプットできて、お互いに相乗効果が生まれるところはやりがいを感じます。

 ビジネスの重要なポイントとは、「自社が提供できる、誰かにとっての明確かつ簡単に代替されない、独自性のある便益とは何かを紐解く」ということです。これが欠けると結局はコモディティ化して価格競争になる、もしくはあっさり誰かに真似されて追随される。世の中はとてもシンプルだな、と改めて気がつく今日この頃です。B2BでもB2Cと同じことをしっかりやることで、勝ち筋が見えるケースは多いですよ。

 仕事って、成功体験を持っている領域である程度の勝ち筋が見えちゃうと、仕事としては楽なのかもしれないけれど、知的好奇心が満たされることはないなと思うのです。逆に、違うことをやると、学びがすごく多いなと思います。

——今後については、どのようなビジョンを描かれているのでしょうか?

 いつも同じことを言っているのですが、本来、より多くの人に便益を与えられるはずのサービスやプロダクトを、その最高のポテンシャルまで広げていきたいです。いい商品やサービスが広がっていないケースはすごく多いなと、昔からずっと思っていまして。届けるべき方に届けるものを、できるだけ届けていきたい。あとは、もともとそれを作った人たちが評価されるように、届けていきたい。そういうことを続けていきたいと思いますね。

——西口さんにとって「いいもの」の定義とは何でしょうか?

 いいものとは、新しい価値を生み出すものですね。そして、価値とは何かというと、いわゆる便益。より速い、より軽い、より快適など、これまでの何らかの問題を解決してくれる、あるいは快楽や利便性をもたらしてくれるものです。つまり、なかった状態に比べてあったほうが幸せなものです。

 すべての事業主は、これを提供するために存在しているはずなので、第一に「自社が提供している便益とは何か」、次に「それに代替性がないか」ということを問うのは、どの業種、業態、上場企業でもスタートアップでも、ど真ん中の質問だと思っています。

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