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麻倉怜士氏が選ぶ2018年A&V機器10選--感動画質から憧れの8K放送まで - 7/10

加納恵 (編集部)2018年12月31日 08時30分
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楽器メーカーだから作れた音源を変換して得る楽しみ/コルグ「Nu 1」(1BIT USB-DAC ADC+プリアンプ)

 シンセサイザーやデジタルピアノを手がける楽器メーカーのコルグが作ったDAC内蔵の真空管プリアンプ。大変面白い。DAC、音作り……と、さまざまな音的な切り口を持つ。

 まず、自社開発の真空管「Nutube」を採用。デジタル時代の現代に真空管なんて作るのか? と、疑問を持つ人がいるかもしれないが、ギターアンプはいまだに真空管を使っている。その理由はトランジスタだと音が固く、伸びにくいからだ。音の味わいや濃さを表現できるものとして真空管が求められている。

 Nutubeはコルグとノリタケ伊勢電子が共同開発した新世代真空管。もともと電子楽器用に開発したこともあり、倍音が良く出るという特徴を持つ。これにより再生音が優しく、つややかな質感を持ち、自然な音を鳴らす。

 楽器メーカーのコルグが作るオーディオ機器には、どんな特徴があるのか。オーディオメーカーが作るオーディオ機器は「音源は神様」という原則的なテーゼがある。そこでは、再生機として音源から最高の情報を引き出すことが最大の目的となる。音源は神聖にして犯さざるものである。ところが、楽器メーカーであるコルグは違う。「演奏者が一番いいと思った音」を追求するのがモットーだ。それは再生側でも変わらない。

 だからその姿勢は大きく異なる。オーディオメーカは原音再生にこだわる。一方、コルグは音を加工することには、なんの躊躇もない。そのコンセプトの中で高音質を目指すのだ。オーディオ的なストイックな「原音を目指した高音質追求」ではなく、聴き手が好む音を求める「好音質追求」である。こうした楽器メーカーとしての独自のアプローチが、クリエイティブで、録音と再生という両面でユニークな仕掛けを備えた製品「Nu 1」に結実した。

 ユニークのその1の倍音が豊富に出るので、音に潤いと厚みが加わる。しかし、この倍音はオーディオ的には「高調波歪み」といわれ、プロパーなオーディオメーカーにとっては、歪みなのだから除去しなければならない存在である。でも楽器メーカーのコルグにとっては、倍音こそ「楽音」であり、大事にしなければならないものだ。この歪みは「味付け」なのだ。そこで、倍音成分をフィードバックし、増幅する特別な回路「HDFC」(ハーモニック・ディテクティブ・フィードバック・サーキット)を開発したのである。

 HDFCはNutubeを通すことで、原音に倍音(ハーモニクス)を付加して旨みを楽しもうという趣旨。コルグの開発者は「楽器メーカーとしては、ギターやピアノを自分で弾いて、帰ってきた音が気持ちいいものが一番だと常に考えています。歪みが入ることで音がファットになるとか、細かい音が入る、スピードが速くなるといった変化を味わうのです」と言った。

 HDFCはフロントパネルのつまみで効果を3段階で切り替えられる。「1」ではわずかに効果がつく。でも「1」でもいい意味で気持ち良く、まったりした感じだ。潤い成分が増えて、表情が優しくなった。HDFCを「2」にするとさらに潤いが増して、さらに心地いい聴こえ方になる。潤いは増えても音のフォーカス感が変わらない。倍音が厚くなっているのに、クリアネスはしっかりと保っている。「3」はさらに効果が強く、旨味が強い。ここまで来ると、好みだろう。

 2つめのユニークがオノ セイゲン氏プロデュースの「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」。Nu 1は専用ソフトウェア「AudioGate」を使用して、PC内のMP3やWAVなどのオーディオファイルをリアルタイムにDSDの11.2MHzに変換する機能を持つが、その過程で、マスタリング・エンジニアであるオノ セイゲンオノ氏による500にも登る、各種リマスタリングフィルターを与えることが可能だ。

 特にYouTubeに効く。YouTubeは今や、パッケージや配信にはない貴重な音源にアクセスできる宝庫だ。大変音が悪い(映像も悪いが)。そこに、オノ セイゲン秘術のマスタリングを施すのだ。セイゲン氏が自分だったらこんな風にリマスターするというプリセット値が多数用意されている。YouTube音源はほとんどが44.1kHzか48kHzのAACであり、リマスタリングの効果は大きい。また音楽配信の圧縮音源にも効果的であり、非圧縮の音源であっても、さらにヴィヴットになる。

 Nu 1はもの凄く面白いプリアンプだ。ベースとなるDACの音がしっかりとし、さらに真空管らしい旨みを加えて、価値を上げている。ソースによってはリマスターしてもいい。という具合に二重、三重の楽しみ方ができる、“高音質”と“好音質”のふたつが堪能できるプリアンプなのだ。
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楽器メーカーだから作れた音源を変換して得る楽しみ/コルグ「Nu 1」(1BIT USB-DAC ADC+プリアンプ)

 シンセサイザーやデジタルピアノを手がける楽器メーカーのコルグが作ったDAC内蔵の真空管プリアンプ。大変面白い。DAC、音作り……と、さまざまな音的な切り口を持つ。

 まず、自社開発の真空管「Nutube」を採用。デジタル時代の現代に真空管なんて作るのか? と、疑問を持つ人がいるかもしれないが、ギターアンプはいまだに真空管を使っている。その理由はトランジスタだと音が固く、伸びにくいからだ。音の味わいや濃さを表現できるものとして真空管が求められている。

 Nutubeはコルグとノリタケ伊勢電子が共同開発した新世代真空管。もともと電子楽器用に開発したこともあり、倍音が良く出るという特徴を持つ。これにより再生音が優しく、つややかな質感を持ち、自然な音を鳴らす。

 楽器メーカーのコルグが作るオーディオ機器には、どんな特徴があるのか。オーディオメーカーが作るオーディオ機器は「音源は神様」という原則的なテーゼがある。そこでは、再生機として音源から最高の情報を引き出すことが最大の目的となる。音源は神聖にして犯さざるものである。ところが、楽器メーカーであるコルグは違う。「演奏者が一番いいと思った音」を追求するのがモットーだ。それは再生側でも変わらない。

 だからその姿勢は大きく異なる。オーディオメーカは原音再生にこだわる。一方、コルグは音を加工することには、なんの躊躇もない。そのコンセプトの中で高音質を目指すのだ。オーディオ的なストイックな「原音を目指した高音質追求」ではなく、聴き手が好む音を求める「好音質追求」である。こうした楽器メーカーとしての独自のアプローチが、クリエイティブで、録音と再生という両面でユニークな仕掛けを備えた製品「Nu 1」に結実した。

 ユニークのその1の倍音が豊富に出るので、音に潤いと厚みが加わる。しかし、この倍音はオーディオ的には「高調波歪み」といわれ、プロパーなオーディオメーカーにとっては、歪みなのだから除去しなければならない存在である。でも楽器メーカーのコルグにとっては、倍音こそ「楽音」であり、大事にしなければならないものだ。この歪みは「味付け」なのだ。そこで、倍音成分をフィードバックし、増幅する特別な回路「HDFC」(ハーモニック・ディテクティブ・フィードバック・サーキット)を開発したのである。

 HDFCはNutubeを通すことで、原音に倍音(ハーモニクス)を付加して旨みを楽しもうという趣旨。コルグの開発者は「楽器メーカーとしては、ギターやピアノを自分で弾いて、帰ってきた音が気持ちいいものが一番だと常に考えています。歪みが入ることで音がファットになるとか、細かい音が入る、スピードが速くなるといった変化を味わうのです」と言った。

 HDFCはフロントパネルのつまみで効果を3段階で切り替えられる。「1」ではわずかに効果がつく。でも「1」でもいい意味で気持ち良く、まったりした感じだ。潤い成分が増えて、表情が優しくなった。HDFCを「2」にするとさらに潤いが増して、さらに心地いい聴こえ方になる。潤いは増えても音のフォーカス感が変わらない。倍音が厚くなっているのに、クリアネスはしっかりと保っている。「3」はさらに効果が強く、旨味が強い。ここまで来ると、好みだろう。

 2つめのユニークがオノ セイゲン氏プロデュースの「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」。Nu 1は専用ソフトウェア「AudioGate」を使用して、PC内のMP3やWAVなどのオーディオファイルをリアルタイムにDSDの11.2MHzに変換する機能を持つが、その過程で、マスタリング・エンジニアであるオノ セイゲンオノ氏による500にも登る、各種リマスタリングフィルターを与えることが可能だ。

 特にYouTubeに効く。YouTubeは今や、パッケージや配信にはない貴重な音源にアクセスできる宝庫だ。大変音が悪い(映像も悪いが)。そこに、オノ セイゲン秘術のマスタリングを施すのだ。セイゲン氏が自分だったらこんな風にリマスターするというプリセット値が多数用意されている。YouTube音源はほとんどが44.1kHzか48kHzのAACであり、リマスタリングの効果は大きい。また音楽配信の圧縮音源にも効果的であり、非圧縮の音源であっても、さらにヴィヴットになる。

 Nu 1はもの凄く面白いプリアンプだ。ベースとなるDACの音がしっかりとし、さらに真空管らしい旨みを加えて、価値を上げている。ソースによってはリマスターしてもいい。という具合に二重、三重の楽しみ方ができる、“高音質”と“好音質”のふたつが堪能できるプリアンプなのだ。

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