麻倉怜士の新デジタル時評--MQA-CD登場の意味。「MQA」はなぜすごいのか

 オーディオ&ビジュアル評論家麻倉怜士氏が、注目機器やジャンルについて語る連載「麻倉怜士の新デジタル時評」。今回は、リニアPCM、DSDに続く第3のオーディオコーデックとして注目されるMQAについて紹介する。音楽ファイルのストリーミング配信やダウンロードコンテンツへの採用が進むMQAだが、6月にはCDパッケージのエンコード方式として採用した「ハイレゾCD」をユニバーサルミュージックが販売。「これからの音の発展を担う技術」として麻倉氏が視線を注ぐMQAとは何か。


MQAのロゴマーク

高解像度だけど容量はCD並み「MQA」の仕組み

 MQAコーデックは2016年あたりから、音楽配信サービスなどで使用され始めた新しいオーディオコーデック。ハイレゾ音源が持つ膨大な情報量を、CD並みのコンパクトなサイズに限りなくロスレスで圧縮する「オーディオ折り紙」技術が特徴だ。これによりハイレゾの高音質ファイルを小さな容量のまま保存できる特性をもつ。開発したのは英国のオーディオメーカーであるメリディアン・オーディオ。創業者であるボブ・スチュアート氏が「デジタルでもアナログのように柔らかく、広がりのある高音質を再現する」ことをコンセプトに生み出した。

 メリディアン・オーディオは1977年に設立。CDプレーヤーやアンプの製造開発で知られ、スチュアート氏は「20世紀の英国におけるオーディオの巨人」とも評される人物だ。オーディオのハードウェアを手がける一方、デジタル信号処理の研究も重ね、1990年代にはロスレスコーデック「MLP(Meridian Lossless Packing)」を発表。現在のFLACの先駆けとも呼ばれるコーデックで、当時から、大変先端的なテクノロジを持っていたことがわかる。

 オーディオのデジタル化が一気に進んだ1980~1990年代に、なぜこのコーデックを生み出したのか、スチュアート氏に聞くと「アナログレコードの時代には、すごくいい音をたくさん聞けていたのに、デジタルになって音が不自然、硬いといった声をたくさん聞いた。これをなんとかしたいと考え開発したのが、新しいオーディオコーデック。1980年代から考えていたことの1つの集大成がMQA」と答えてくれた。

 MQAは、ハイレゾの高音質をコンパクトな容量に収められることが特徴だが、なぜそんな相反することができるのかについて説明しよう。

 今までのオーディオファイルは、帯域を拡張して情報量を増やすことでより良い高音質を生成してきた。情報量が増えれば音はよくなるが、しかし同時に容量が大きくなることで、ダウンロードに時間がかかる、ストリーミング配信で聴ける環境が制限されるなどの弊害も出てきた。

 加えて、スチュアート氏が危惧していたのは、帯域を増やすことで音の「ありがたみカーブ」が寝てくること。CDのサンプリング周波数44.1kHzから96kHzの変化は、音質の違いを大きく感じられるが、384kHz、768kHzあたりまで来ると、ありがたみカーブ=情報量向上により音質の変化が、感じにくくなる。その結果、情報量を増やしても得られるご利益が少くなってくる。これを全く新しい考えでクリアしたのがMQAだ。

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