麻倉怜士の新デジタル時評--ついに新4K8K放送開始、「8K完全版2001年宇宙の旅」試写レビュー

 12月1日にスタートした「新4K8K衛星放送」。新たに始まるサービスとして気になっているものの、どんなシステムを整えれば見られるのか、また、どんなコンテンツが放送されるのかなど、「実際のところどうなのか」がわからない人も多いだろう。

 注目機器やジャンルについて語る連載「麻倉怜士の新デジタル時評」では、放送開始に先駆け、11月の初旬に新4K8K衛星放送環境を整えたという麻倉怜士氏の自宅システムを紹介。合わせて8Kコンテンツの魅力などを教えてもらった。

新4K8K衛星放送に即対応、30年ぶりにBSアンテナを交換

 新4K8K衛星放送に即対応しようと、11月の初めにアンテナ工事を実施した。1989年頃に設置したBSアンテナを、右旋左旋両対応のDXアンテナ「BC604S」に交換。現行のBS放送などは右旋円偏波を使用しており、このままでもこの仕様のBS4Kチャンネルは視聴できるが、8K放送は左旋円偏波を使っているため、左旋対応の衛星アンテナでないと受信できない。つまり8K放送を見るためには、左旋対応のアンテナを導入しなければならない。このDXアンテナ製の新アンテナは「2K/4K/8K」と印刷されている。

新たに装着した右旋左旋両対応BS、110度CSアンテナ。DXアンテナ「BC604S」
新たに装着した右旋左旋両対応BS、110度CSアンテナ。DXアンテナ「BC604S」

 もう1つ重要なのは、周波数帯域の問題。新4K8K衛星放送の8Kは高周波帯域を使用するため、現行の低周波対応の屋内配線では伝送できない場合もある(右旋を見るには、現行設備で大丈夫)。アンテナケーブルには3C、5C、7Cといった種類があり、数字はケーブルの直径を表している。新4K8K衛星放送では7Cのケーブルを使用していることが望ましい。実際に工事をしてくれた担当者によると、3Cだと8Kの場合、高周波電波が通らない可能性もあるとのことだった。自宅は、当初からBSのクオリティ確保という面からも7Cを採用していたため、アンテナケーブルはこのままでも大丈夫ということだった。屋外の混合器、ブースター、屋内の壁面端子、分配器も高周波対応に変更した。

 問題は、物が多すぎてどこにあるかのかわからなくなってしまったアンテナ端子だ。見つけ出すことが難しいため、仕方なく壁に穴をあけて、新たにアンテナケーブルを引き込んだ。

 新4K8K衛星放送を視聴するインフラは整った。モニターとして導入するのは、シャープの8K液晶テレビ「8T-C80AX1」80V型だ。自宅の執務机の前には、長くパイオニアのプラズマモニター「PDP-5000EX」50V型を設置していた。黒の締りに優れ、液晶テレビにはない、いい意味で眼に優しい画作りは、とても気に入っていたのだが、8K時代を迎えるにあたり、さすがに2K専用ではサバイバルが難しく、今回「殿堂入り」という形で卒業してもらった。

シャープの8K液晶テレビ「8T-C80AX1」
シャープの8K液晶テレビ「8T-C80AX1」

 これまで、4K放送はスカパー!の「スカパー!4K総合」「スカパー!4K体験」チャンネルですでに視聴していたが、今回コンテンツ数が拡充するのは、非常に喜ばしいこと。しかしそれ以上に期待しているのはやはり8K放送だ。8K画質が家庭に導入できるのは大変画期的なことだと感じている。

 そもそも8Kは、1994年にNHK技術研究所が開発を始めた放送技術だ。NHKのスタンスは一貫しており、開発を手がけてきたのは2Kと8Kのみ。4Kについては着手しておらず、こちらは、ハリウッドが劇場上映用のデジタルシステムとして推進してきたものだ。NHKの2K技術は、さらにさかのぼり1960年代に開発をスタート。1990年にアナログBS放送として実用化し、2000年にBSデジタルハイビジョン放送として本格スタートを切った。

 2Kを長く手がけてきたNHKにしてみれば、その次にくる放送は2Kをさらに乗り越えるような大きな躍進が必要だった。4Kを飛び越えて8Kの開発を進めたのは、2Kとは大きく違わなければならないと、次世代の放送を位置づけていたからだ。

 2Kから4Kは、言わばテレビの正統進化。テレビ的に見ても、それほど大きなジャンプではない。それが8Kになると全く話は異なり、テレビの進化を越えていくインパクトを持つ。実際に8K技術は医療やアート、ファクトリーオートメーションといった分野でも広く活用され始めており、産業に影響を及ぼし始めている。

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