拡張現実(AR)のヘッドセットやスマートグラスの未来は、今なお流動的だ。待望の「Magic Leap」は、今年ようやく登場するかもしれない。Microsoftの「Hololens」はビジネスでの活用に可能性を見出しつつあるが、2019年には低価格な次世代モデルの登場が期待されている。Osterhout Design Group(ODG)製のような小型のスマートグラスは、Qualcommの次期チップを搭載することで好転するかもしれないが、どれほどの違いをもたらすのかは定かではない。
そして、Appleだ。米CNETが4月に報じたように、AppleはARにも仮想現実(VR)にも対応する強力なヘッドセットを開発中であるという。それが仮の試作品なのか、それとも、Appleが2年後に出荷すると言われている形に近いものなのかは、まだ誰にも分からない。だが、2020年まで待つ必要はない。Appleの「バーチャルな魔法」の計画は、今この瞬間も、ユーザーが現在所有している「iPad」と「iPhone」でリアルタイムに展開されているからだ。
Appleは、6月初めに開催した年次開発者会議「Worldwide Developers Conference(WWDC)」で、「iOS 12」とあわせて最新版のARツールキット「ARKit 2」を発表した。そこですでに、重要なアップグレードが驚くほど多く実施されている。iOSにおけるARの扱い方を大きく変えうるアップグレードだ。これらのさまざまな断片をつなぎ合わせると、ARがごく一部のオタク向けおもちゃという扱いを脱してゲーム「Fortnite」のような規模で広く受け入れられるために、目指すべきロードマップが見えてくる。
AppleのARは、(今はまだ)ヘッドセットに搭載されていないが、Appleにとってそれは重要な問題ではないようだ。「現時点で大事なのは、iPhoneとiPadという、何億台ものデバイスにARが搭載されるということ。これだけ大勢の人がiPhoneを持ち歩いているのだから、出発点としては驚くほど理想的なはずだ」。AppleのiPhoneおよびiPadプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのGreg Joswiak氏は、米CNETにこう答えている。
現実世界に重ねた一連の層が未来の一部になるとしたら、それは誰にでも見えるものでなければならない。ARを共有するというのは、比較的新しい概念だ。Googleは5月の年次開発者会議で初のマルチプレーヤーARアプリを披露したが、AppleのARKit 2によるマルチプレーヤーサポートも、それと同類だ。
iOS 12のマルチプレーヤーARを、筆者も初めて実機で体験してみた。iPadを長時間持ち続けるのはちょっと疲れるが、大したものだった。現実の同じ室内でゲームをするだけでも十分魅力的だが、共同プロジェクトや永続的な仮想オブジェクトに、何人もの人が同時にアクセスするといった可能性も広がる。今は、本物と仮想の「LEGO」ブロックを同じテーブルで混在させるくらいだが、SF作家のWilliam Gibson氏が10年ほど前に思い描いたような、ある場所だけに映し出される芸術作品を共有ARで見るというようなことも考えられる。あるいは、教室でホログラムを使う新しい波が来るかもしれない。すでにGoogleが取り組んでいるAR空間への落書きを共有するアプリのような、実験的なアートプロジェクトも出てくるだろう。
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