筆者は今、何も置かれていないテーブルの上に身を乗り出し、テーブルの向こう側にいる相手と遊んでいる。互いに「iPad」を手に持ちながら。iPadの画面には、積み上げられたブロックが表示され、Y字型のスリングショットで玉を飛ばして、相手のブロックをはじき飛ばして勝利を収めようとしている。このゲームで使われているのは、「iOS 12」の一環としてアップデートされた「ARKit 2」だ。ARKit 2ではマルチプレーヤーのサポートが注目される。
筆者が2018年にスマートフォンおよびタブレットでマルチプレーヤーの拡張現実(AR)を試すのは、これで2回目である。1回目は、5月に開催されたGoogleの開発者会議で「iPhone」と「Google Pixel」を使用した。Googleは同社のクラウドベースのクロスプラットフォーム対応AR技術を「Cloud Anchors」と呼んでいる(既に「Just a Line」というアプリがこの技術を使用している)。
一方、AppleのマルチプレーヤーARは必ずしもクラウドを利用する必要はない。だが、Cloud Anchorsと同様に驚異的で魅力的だ。自分だけでAR体験を試してみるのもいいが、その体験をほかの誰かと共有すると、さらに圧倒的な没入感が与えられる。突然、ARが格段にリアルに感じられるようになるのだ。
AppleのAR技術を「iOS」で使ったことのある人なら、楽しい即席のARバスケットボールゲームや、IKEAの家具を電車の駅に配置してみたりするのが、どれだけ没入感があるのかをご存じだろう。マルチプレーヤーゲームもそれと同じくらいシームレスかつ滑らかに感じられる。筆者が同僚と一緒にプレーした、ブロックに玉を飛ばしてぶつけるゲーム「SwiftShot」も動きが速い。グラフィックスと物理的情報は非常にリアルで、状態を保存して再開できるという連続性があり、プレーを終えた後に何も置かれていないテーブルを見ると奇妙な感じがする。
スマートフォン上のARは、2017年にはシングルプレーヤー向けの体験だった。2018年、アプリはマルチプレーヤー機能を活用して、「LEGO」のように同じ部屋で共有する体験や、広々とした場所に多くのプレーヤーが集う大規模イベントの体験を実現できるようになるだろう。
マルチユーザーARは、現実世界の上に重なる、連続性を備えた大規模なARという層への第一歩になるかもしれない。それは、多くの人が同時に見たり、対話したりできる世界だ。その全てがどのように管理、または調整されるのかは現時点では不明である。
一部のアプリは魔法のようなマルチプレーヤーARをローカルで実現し、そのほかのアプリはクラウドを利用するだろう。Appleによると、ARKit 2はGoogleのCloud Anchors技術とも円滑に連携するという。Apple関係者が「Worldwide Developers Conference(WWDC)」で述べたところによると、ARKit 2の方がローカルで使用した場合に、より優れたパフォーマンスを発揮する可能性があるという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」