サンフランシスコ国際空港で、筆者が別室の保安検査室に足を踏み入れると、米運輸保安局(TSA)のベテラン職員が他の職員に向かって、「彼女はボディーチェックのためにここに来たの?」と尋ねた。
聞かれた職員は、「いや、これのせい」と答えて、筆者が未開封のApple「HomePod」を隠し入れていた不透明のバッグを指さした。HomePodはApple初のワイヤレススピーカだ。
「Siri」を搭載するこの349ドル(約3万8000円)のスマートスピーカが米国で一般向けに発売されるのは、この時点ではまだ約1週間先のことだった。筆者は、米CNETがさまざまな最新スマートホーム技術をテストするための施設である「CNET Smart Home」にこの借り物のスピーカを持ち帰ってテストするつもりだったが、そのことは極秘だった。筆者がそれを持っていることは、まだ誰にも知られてはいけなかった。この荷物が検査を通過したので、筆者はゲートに向かって歩いた。その間、バッグに隠した5.5ポンド(2.5kg)のスピーカを新生児のように抱えて、細心の注意を払った。
だが、HomePodは生まれたばかりの製品ではない。開発が開始されたのは、6年前のことだ。Appleのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのPhil Schiller氏は先日、Appleのオーディオラボの見学中に筆者にそう話してくれた。「われわれがいつも目指しているのは、一番になること。それが最も重要なことだ。それは、誰よりも先に何かを手がけることと同義のこともあれば、そうでないこともある。それでいい。長期的な視野に立てば、一番に何かをやるということは、重要なことではない。重要なのは、最も優れたことをやることだ」(Schiller氏)
確かにその通りかもしれない。だが、音声で操作可能なワイヤレススピーカに関して言えば、Appleは競合他社に大きく後れを取っている。とはいえ、HomePodは幅広いジャンルの音楽で素晴らしいサウンドを出力し、199ドル(約2万2000円)の「Sonos One」や399ドル(約4万4000円)の「Google Home Max」、Amazonの99.99ドル(税込1万1980円)の第2世代「Echo」と比較すると、特に異彩を放っている。極めて短時間でセットアップできることや、高性能な遠距離マイクでSiriに話しかけられることも魅力的だ。
ただし、HomePodを購入することは、Appleの音楽サービスとスマートホーム製品、OSに限定されたスピーカを利用しなければならないことを意味する。例えば、「Spotify」などのサードパーティーの音楽サービスをHomePodから直接再生することはできない。ユーザーはそれらのサービスの音声を自分のスマートフォンからHomePodに飛ばす必要がある。HomePodを買おうとしているのであれば、そのことを肝に銘じておかなければならない。HomePodの一流の音質以外のことはどうでもいい、という人は別だが。そうではないすべてのユーザーは、Appleが既に約束しているステレオペアリングや「AirPlay 2」によるマルチルーム再生機能以外に、この前途有望なスピーカに対して同社が今後何を追加するのかを静観すべきだろう。
HomePodはメッシュのファブリック(カラーはスペースグレーとホワイトの2種類)で覆われており、本体の重量は2.5kgとかなり重く、高さは6.8インチ(172mm)、幅は5.6インチ(142mm)だ。重さ11.7ポンド(5.3kg)、幅13.2インチ(336.6mm)のGoogle Home Maxに比べると小振りである。だが、HomePodは手に取ると、意外なほどずっしりと感じる。筆者はHomePodを抱えて空港内を歩き回っているとき、そのことに気づいた。
HomePodはAppleのスタイルに忠実で、洗練されたミニマリスト的デザインを採用している。その見た目は美しく、変な風に目を引くような外観ではない。2種類のカラーが用意されているのもうれしい。われわれが入手したのは、ホワイトのHomePodだ。筆者はその外観を気に入っているが、使っているうちに本体が汚れるであろうことは、容易に想像できる。HomePodの外側のメッシュは、「Amazon Echo」の取り外し可能なシェルのように交換することはできない。ユーザーは、購入したものを使い続けるしかない。それでも、布などでメッシュを拭いてきれいにすることは可能だろう。
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