いまや日本企業にとって海外進出は珍しいことではなく、特にスタートアップ企業の多くは創業時から海外展開を視野にビジネス拡大に取り組んでいる。ただし、実際に海外展開を実行フェーズに移そうとした際には、綿密な調査でターゲットとなる地域を決め、事業計画を立て、拠点や人員を確保して、という形で大きな投資と周到な準備をして臨むケースが多い。
一方で、海外企業ではウェブマーケティングを中心としたスモールスタートで世界各国の可能性を探り、投資すべきオポチュニティを創出している企業も少なくないのだという。海外向けウェブマーケティング支援を展開するインフォキュービックジャパンの代表取締役である山岸ロハン氏に、ウェブマーケティングによる海外展開の実情や、日本と海外のウェブマーケティングのメソッドの相違などについて聞いた。
――まず、御社の事業である「海外向けウェブマーケティング」では具体的にどのようなことをしているのでしょうか。
私たちは多言語による海外向けオウンドメディア展開やウェブプロモーション展開などを通じて、現在大手企業から中堅・ベンチャー企業まで150社ほどの日本企業の海外進出を支援しています。また一方で、海外企業の日本進出の支援なども行っています。顧客企業の比率は海外展開する日本企業が多いのですが、特に検索エンジン広告などサーチエンジンマーケティングに関する支援が多い傾向にあります。
企業の中には、海外展開したいけれどオウンドメディアの準備ができていない、あるいは海外向けのマーケティングをするのに十分なクオリティのサイトではないというケースが多いです。オウンドメディアの質が悪いとマーケティングをしたとしても結果的に自分の首を絞めることになってしまいます。私たちは創業当初は海外向けのマーケティングを展開していたのですが、マーケティングを展開する前の準備も支援しなければという考えからオウンドメディアの多言語展開や越境ECの支援、多言語のコンテンツマーケティングにも注力しています。
――多言語とのことですが、どれくらいの数の言語に対応しているのでしょうか。
基本的にあらゆる言語に対応できる体制を敷いています。社内のスタッフですべての言語に対応できるわけではないのですが、社外に翻訳や外国語によるコピーライティングができるパートナーを多数抱えており、そうした人材を活用しています。傾向としては英語、中国語、ベトナム語、スペイン語などが多いです。
一方で、検索エンジン広告のアナリティクスなどは言語が変わってもノウハウは大きく変わらないので、翻訳を支援してくれるパートナーが十分に確保できていることであらゆる言語に対応できる体制を実現しています。パートナー翻訳者を抱えて多言語翻訳に対応している、翻訳会社のビジネスモデルに近いかもしれません。
――海外向けウェブマーケティングに注力している企業の傾向を教えてください。
まずはインバウンド需要に絡む旅行業、宿泊施設、交通機関などが多いですね。これから日本に来る外国人観光客にまずはウェブマーケティングでアプローチするという狙いです。また、百貨店やショッピングモール、テーマパークなども同様の理由で多い傾向があります。一方で、製造業も多いです。製造業はいま日本国内よりも海外のほうが売上比率が高まっているのに、実はあまり海外向けのオウンドメディアが充実していないケースも少なくありません。その点の支援が多い傾向があります。
――製造業の海外ビジネスは興味深いですね。製造業などでは海外進出のための拠点や現地人材は確保するのにウェブマーケティングは二の次というケースも多いのではないかと感じます。
そうですね。非常にもったいないと思います。戦略的に海外展開をする企業は多いと思いますが、実際のところどの国でどれくらいのビジネスになるかというのは、やってみなければ分からない部分も多いのではないでしょうか。であれば、まずはウェブマーケティングを展開してみて、海外市場のニーズを探るという動きがもっとあってもいいと思うのです。
日本の企業はまずは人材を確保して体制を作って、場合によっては高額な市場レポートを購入・分析してという“カタチ”から海外進出を始めてしまいがちです。その点は、海外企業のグローバル展開の動きと対照的だと思います。市場ニーズの把握にはスピードが必要なので、体制を作って売上を上げるまで悩み続けるよりもまずはプロモーションを仕掛けてみて、返ってきた答え=成果を生の声として海外戦略に生かしていくべきなのではないでしょうか。
――確かに、海外企業が日本に展開する場合は、まずはウェブマーケティングで商品を市場投入してから本格展開に移行するというケースは多いですね。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス