そうですね。日本には最少人数の担当者だけを置いてウェブマーケティングから展開するというケースは多いと思います。それはある意味賢い判断です。日本市場の重要性は理解しつつも、まずはスピード優先で日本語のオウンドメディアを準備して、最小リソースで商品が売れるかどうかをテストしてから戦略を立てるという企業は多いのではないでしょうか。こうした“まずはウェブで集客して現地のニーズを探る”という動き方は日本企業の海外進出でも重要になってくると思います。
――日本国内の話をすると、例えば検索エンジンマーケティングのノウハウというのはかなり成熟しているのではないかと思います。これが海外向けのマーケティングになると、どのようなノウハウやアプローチの違いが生まれるのでしょうか。
技術的な話だけを考えると、例えばGoogleのアルゴリズムは世界共通なのでノウハウに大きな違いはありません。大きな違いが生まれるポイントは、キーワードの選択に関する部分です。
例えば、日本だと「アパレル 通販」など単語で検索する場合が多いと思うのですが、欧米では日本語よりも長い文章で検索する場合が多い傾向があります。日本語では数個のキーワードで検索するところを英語では10を超える多くの単語を使って検索されるのです。また中国語になると、日本語と同じ漢字圏ですが、日本語で複合検索の際に入れるスペースがなかったりする場合があります。
このように日本語と他の言語では検索の傾向が大きく異なるため、日本国内で有効なキーワードをただ翻訳しただけでは海外に通用しないという面はあります。国ごとの検索習慣を理解した上でマーケティングを考えていくことが重要です。この点が単純に外国語に翻訳して海外展開しようという発想の限界ではないかと思います。オウンドメディアの多言語展開であれば翻訳だけである程度カバーできるかもしれません。しかし検索エンジンマーケティングを展開する際のキーワード選定、見出しや説明文の内容といった部分は各国の言語文化やユーザーの傾向を理解する必要があるのです。
私たちが海外向けのマーケティングを支援する場合には、日本国内での成功事例は参考にせず、ゼロから作り直すことが多いですね。日本で成果が高いキーワードだから同じように海外で成果が出るということはありません。むしろ、日本語と英語の作りの違いなどを踏まえると、海外の主要な言語圏と比べて日本語のほうがレアケースだと考えて取り掛かったほうが、上手くいく場合が多いと思います。
加えて、検索エンジン広告のクリック単価の傾向も日本と海外では異なります。例えば、あるキーワードのクリック単価が日本では100円、米国では150円、ベトナムでは10円だったとします。すると、ベトナムで展開すればニーズは少なくても同じ予算で多くのクリック=集客を獲得することができます。実は、こうしたコスト戦略も最初に検証しておく必要があります。
また、シンガポール、インド、中国など同じ国でも複数の言語が使用されている場合には、言語によって広告のパフォーマンスが異なる場合も世界中にあります。そうしたギャップも探ってどのようなアプローチで高い費用対効果が得られるかも検証する価値があると思います。
海外展開したビジネスが上手くいかない理由には、商品と現地ニーズのアンマッチという理由もありますが、一方で売上とコストのバランスが悪いという理由もあります。どの国に展開するかを最初から決めるのではなく、どの国に展開すると適切な費用対効果でビジネスができるかを検証していく必要があるのです。
ウェブマーケティングの良い点は、月単位で展開する国や地域を簡単に変更できるという点です。小さな予算を投下して検証を行い、狙い通りの効果が生まれなければすぐに違うエリアに展開してみるという軌道修正ができるのです。そういうウェブマーケティングが持つ俊敏性をもっと活用すべきではないでしょうか。検索エンジンはユーザーの生の反応が確認できる場所です。それをマーケティング=市場調査に生かさない理由はないと思います。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス