職場での用途もある。ARベースの工業労働者向け「スマートヘルメット」が、Daqriという企業によって既に設計されている。ある作業員がパイプを修理しようとしているとしよう。別の部屋で同様にスマートバイザーを装着している彼の上司がメモや指示を追加すると、それが作業者の視界にリアルタイムで表示される。その後、作業者は「ここのヒビを修復」といったメモをそのパイプに追加することができる。このメモは、将来そのパイプを作業する全ての作業員が見ることが可能だ。
しかし、「ちょっと待った。ARがどれほど素晴らしいものだとしても、大きなバイザーやヘッドセットを装着して歩き回りたくない」と思っている人もいるかもしれない。そして、その意見は正しい。企業は既にはるか未来を見据えている。例えば、サムスンは2014年、ARと連携するスマートコンタクトレンズの特許を出願した。スマートフォンと連携させることで、ユーザーが瞬きしたり、単に見つめたりするだけで、命令を伝えられるようになる未来をサムスンは想像している。ヘッドウェアは不要だ。
このようにあらゆる情報が瞬時に手に入る暮らしを想像してほしい。そうした輝かしい未来と比べると、私たちが今暮らしているAR以前の世界は、原始的な悪夢のようなものだ。
あるいは、それは飛躍しすぎだと思う人は、スマートフォンのことを考えてみるといい。今、あなたの手の中にスマートフォンがないとしても、おそらく、手を伸ばせば届くところにはあるはずだ。スマートフォンは事実上、人体の一部になっており、スマートフォンのない状態が長く続くと、私たちは不安になってしまう。日々の作業の仕方を変える、とてつもない可能性を秘めたARも、スマートフォンと同じような存在になると筆者は予想している。
それでは、こうしたARの楽園がまだ実現していないのは、なぜなのだろうか。さまざまな問題が存在するからだ。もっと言うと、このテクノロジは出だしで何度かつまずいている。
2012年、Googleはメガネ型ARヘッドセット「Google Glass」のコンセプト動画を公開した。Google Glassの発表の際には、先述したような近未来的なテクノロジの一部が披露され、まさに「すごい。私たちは今、未来に住んでいる」と言いたくなる瞬間だった。残念ながら、2013年に開発者向けに発売されたとき、Google Glassは全くもって、その価値にふさわしい評判を得ることができなかった。
Counterpoint Technology Market ResearchのアナリストであるPavel Naiya氏は、「Google Glassの進化をサポートするエコシステムが存在しなかった。Google Glassは画期的なテクノロジだったが、時代の先を行き過ぎていた」と述べている。
さらに、当然ながら、写真や動画の撮影機能を備えるメガネに対して、プライバシーに関するさまざまな懸念もあった。
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