格安スマホの台頭で変化する3社の戦略--携帯キャリア大手の決算を読む - (page 3)

移動通信の減少をブロードバンドで補うソフトバンク

 ソフトバンクグループが2月8日に発表した2017年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比0.3%減の6兆5814億円、営業利益は18%増の9496億円と、減収増益となった。ソフトバンク側の説明によると、減収の要因は米Sprintが円高による影響を受けたためとしている。

決算説明会でプレゼンテーションするソフトバンクグループの孫正義社長。今回も米国での事業動向や「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が話題の中心となっていた
決算説明会でプレゼンテーションするソフトバンクグループの孫正義社長。今回も米国での事業動向や「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が話題の中心となっていた

 同社の代表取締役社長である孫正義氏が米国のトランプ大統領と会談したことから、今回の決算では規制緩和によるT-Mobileの合併など、Sprint事業に関して特に注目が集まった。実際Sprintは、円ベースでは売上高が前年同期比9.4%減の2兆6520億円であるものの、ドルベースでは2.9%増の248億ドルと伸びており、利益も円ベースで144.1%増の1451億円に達するなど、好調な様子を見せる。

 そのため孫氏も、「3~4年前はT-Mobileを買収し、合併するという一方向でしか考えていなかった。しかし、現在は(Sprintの業績が改善したことで、他社を)買うことも、(Sprintを)売ることもできるし、自力で成長させることもできる」と話している。業績を大幅に回復させたことで、今後の扱いについてさまざまな選択をとることができると、Sprint事業には自信を見せるようになってきた。

一時は危機が叫ばれたSprintだが、順調に業績が回復し、株価も大幅にアップしたことから、孫氏は同事業に関して自信を深めているようだ
一時は危機が叫ばれたSprintだが、順調に業績が回復し、株価も大幅にアップしたことから、孫氏は同事業に関して自信を深めているようだ

 一方で、国内の通信事業はどのような業績かというと、売上高は前年同期比2.5%増の2兆3419億円、営業利益は8.9%増の6515億円。他の2社同様、やはり増収増益の好調な内容となっている。

 とはいうものの、サービス個別の売上を見ていくと、必ずしも好調とはいえない。主力の移動通信サービスの売上高は、固定・移動のセット割「おうち割 光セット」の増加にともなう割引額の増加や、PHS契約数の減少などによって、前年同期比2%減の1兆4342億円と減少傾向にあるためだ。またARPUに関しても、ワイモバイルの増加などが影響し、通信ARPUが前年同期比150円減の4530円となるなど、減少傾向が続いている。

 そうした移動通信の減少を支えているのが、「ソフトバンク光」を主体とした固定ブロードバンドサービスの増加である。実際、ブロードバンドサービスの売上高は、前年同期比56.6%増の1947億円と急増しており、移動通信の減少分を、固定ブロードバンドサービスの伸びで補うという構図が続いていることが分かる。

「ソフトバンク光」による固定ブロードバンド事業は大幅に伸びており、それが移動通信事業の落ち込みを補っている状況のようだ
「ソフトバンク光」による固定ブロードバンド事業は大幅に伸びており、それが移動通信事業の落ち込みを補っている状況のようだ

 業績好調を受け、国内通信事業に関しては、フリーキャッシュフローを通期予想で5000億円から5500億円へと上方修正することを発表したソフトバンクグループ。しかし、今後を考えるならば、総務省の施策によって端末の割引額が減少した分の利益を、他社と同様に顧客へ還元する施策を打ち出す必要があるだろう。一方で、低価格ユーザー向けの競争が拡大していることから、今後ワイモバイルの顧客獲得に向けた販促費用などが増えると考えられる。必ずしも安泰という訳ではないだろう。

国内通信事業はフリーキャッシュフローの上方修正を発表したが、今後は低価格帯での競争力強化や、顧客還元強化などが求められるだけに必ずしも安泰とは限らない
国内通信事業はフリーキャッシュフローの上方修正を発表したが、今後は低価格帯での競争力強化や、顧客還元強化などが求められるだけに必ずしも安泰とは限らない

 2016年に買収した英ARMや、新たな投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」など、海外事業に目が向いているソフトバンクグループだが、高い利益を出しているうちに、国内向けの売上向上策をいかに打ち出せるかが、今後は強く求められるところだ。

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