2月2日にKDDIが発表した2017年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比6.8%の3兆5222億円、営業利益が15.4%増の7757億円と、こちらも増収増益の好調な決算となっている。業績好調を受け、通期の営業利益をプラス250円の9100億円とするなど、業績の上方修正も打ち出した。
好調の要因は、個人向けの通信事業を主体とした「パーソナルセグメント」と、コンテンツや決済などを主体とした「バリューセグメント」が好調に伸びていることだ。とはいえ決算内容を見ると、従来とは伸び方がやや変化していることが分かる。
中でもそれを象徴しているのがモバイルサービスの契約者数の変化である。というのも今回の決算から、auの契約者数だけでなく、UQコミュニケーションズやジュピターテレコム(J:COM)など、連結子会社のMVNOの契約者数も含めた「モバイルID数」で契約者数を評価する方針に切り替えているのだ。
実際の契約数を見ると、auの契約者数は前年同期比38万人減の2530万人と減少している一方、MVNOの契約者数は前年同期比29万人増の35万人と急増しており、MVNOの伸びで従来と同等の契約者数をなんとか維持していることが見えてくる。auのユーザー1人当たりの月間売上高を示すau総合ARPAは、前年同期比3.7%増の6390円と伸びているが、低価格を求めるユーザーがMVNOへ流出しているため、結果的にARPAが上がっていると見ることができそうだ。
auからMVNOへという流れが鮮明になってきたことから、KDDIは今後の成長をMVNOに置く方針を明確にしている。現在、積極的なプロモーションで注目を高めているUQコミュニケーションズの「UQ mobile」は、MVNOの新規契約数のうち30%のシェアを目指すとしているほか、2017年から連結対象となるビッグローブも活用して契約数、つまりID数を増やしていく方針を示している。
またビッグローブに関しては、光ブロードバンドやMVNOで抱える240万超の顧客基盤を活用し、KDDIが持つアセットと相互に連携を進めることで、サービスの利用を拡大してく方針を示している。現状、ビッグローブのユーザーの多くは固定・モバイルともにNTTグループの回線を用いているが、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、利用する回線に関わらず、ID数が増えて顧客とのタッチポイントが増えることで、ライフデザインサービスなどを提案できることが重要だと話している。
一方のバリューセグメントに関しては、「auスマートパス」の拡大や「au WALLET」などの決済、「au WALLET Market」などの物販が好調で順調な伸びを示している。今後はディー・エヌ・エーから取得した「DeNAショッピング」と「auショッピングモール」を一体化し、新たに開始した「Wowma!」などの展開によって「au経済圏」の拡大を進め、auユーザーからの売り上げを拡大していく考えのようだ。
あくまでID、つまりユーザー数単位での売り上げ拡大に力を入れるKDDIだが、auユーザー向けのサービス施策の充実が進められる一方で、MVNOユーザーに向けたサービス充実をどこまで進めていくのかは気になるところだ。
MVNOに移ったユーザーは基本的に料金を引き下げることを目的としているため、auのように充実したサービスを提供しても、価格高騰を嫌い利用してもらえない可能性がある。単にauのユーザーが減り、MVNOのユーザーが増えるだけでは売上が落ちる一方であることから、獲得したMVNOユーザーをどう活用して売り上げを伸ばしていくかが、今後KDDIの戦略上重要になってくるといえよう。
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