端末の「実質0円」販売が事実上禁止された影響を受けて戦略変更を余儀なくされる大手3キャリアと、逆にその影響が追い風となったMVNO。業界の商習慣を大きく変え、競争を促進することで通信料の引き下げを狙う総務省の施策によって、明暗がくっきり分かれた2016年の携帯電話業界を改めて振り返るとともに、2017年の動向を占ってみたい。
2016年の携帯電話業界を一言で表すならば、「政」ということになるだろう。それほど今年は業界全体が行政、具体的には総務省の影響を非常に大きく受けた1年だったといえる。
事の始まりは2015年にさかのぼる。安倍晋三首相の携帯電話料金引き下げ発言を受け、総務省のICT安心・安全研究会が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を実施。そこで、携帯電話料金引き下げに向けて議論された結果、MVNOなど新規参入事業者の競争力を高め、料金競争を促すため、大手3キャリアに対していくつかの指導がなされたのである。
中でも、スマートフォンの端末購入補助の適正化を図るよう要請がなされ、高額なスマートフォンを「実質0円」など非常に安価な価格で販売し、割引分の料金を毎月の通信費で回収するビジネスモデルにメスが入れられたことは、携帯電話市場全体に“激震”といっていいほどの大きな衝撃を与えた。
特に4月、「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」が打ち出された影響は大きく、総務省はこのガイドラインを基にキャリアの実質0円、あるいはそれを超えた割引を実施する施策に対して相次いで指導を実施。これにより、従来当たり前とされてきたスマートフォンの実質0円販売がほぼ姿を消すこととなったのである。
また先のタスクフォースでは、ライトユーザー向けのより安価な料金プランを提供することや、長期利用者を優遇することなどもキャリアに対して求めていた。そのため各キャリアは、高速通信容量が1Gバイトで、5000円程度で利用できるライトユーザー向け料金プランの提供を開始したほか、長期利用者優遇プログラムを強化するなどの対応にも追われることとなった。
だが一連の取り組みをもってしてもなお、キャリア側の取り組みには不足があると総務省側は考えているようだ。
10月より実施された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、2015年に義務化したSIMロック解除に関して、解除が可能になる期間を2カ月に短縮することや、端末価格を2年前の機種の下取り価格を下回らないようにするなど、端末購入補助のさらなる適正化を求める方針が打ち出されており、2017年にはそれらがガイドライン改定などの形で反映されることとなる。
キャリアの商習慣に対して厳しい目を光らせているのは、総務省だけではない。8月には公正取引委員会が「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を公表し、独占禁止法の観点から従来のキャリアのビジネスに関する問題点を指摘。さらに中古端末の国内における流通量が少ない問題などに関しては、キャリアだけでなくメーカーにも警告をした。
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