この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。
今回から数回にわたって、スマートフォンアプリに関するアジア事情、また日本企業のアジアマーケット進出の可能性について、D2Cが展開しているサービスを絡めながら紹介していく。
皆さんご承知のように、2020年には東京オリンピックが開催される予定だ。この祭典のための準備は多方面ですでに始まっている。
IT業界もそうだ。たとえばNTTグループがリリースした無料のWi-Fiアプリもその一例である。D2Cではこのアジア向けプロモーションを担当した。
これは、海外からの観光客などを対象としたものだ。通常、海外のSIMは日本では使えないので、電話はできてもデータ通信はできない。そこでWi-Fiが重宝するわけだが、そうした無料アプリをNTTグループが作った。
2020年に向けて、観光客などの誘致合戦も熱を帯びてきているが、このアプリは来日した外国人に利便性を提供しようというものだ。実際、このアプリは英語、中国語の繁体字と簡体字、タイ語、マレー語、インドネシア語など11カ国語に対応していて、翻訳機能や簡単なマップ機能も内蔵している。
というのも、このアプリのユーザーが自国にいたままではこのWi-Fiアプリは使い道がない。そこで、海外に居ながらにしてこのアプリをいち早くダウンロードして使ってもらい愛用者になってもらうために、日本各地の観光ガイドを含んだ情報をコンテンツとして提供し、ユーザー目線でアプリを改良する検討を始めている。
しかも、一律のデータをそのまま多言語化するのではなく、国や地域のニーズの高い情報を切り分けていくのがミソ。来日観光客の滞在中の旅程を分析していくと、タイでは立山連峰などの人気が高いが、中国ではそうした自然よりも秋葉原などの都市の情報のほうが喜ばれる。そうしたことを加味した内容のコンテンツを切り分けたアプリを国や地域ごとに提供していけることが重要だ。このアプリは現在、簡体字の場合のみ銀聯(Union Pay、中国のクレジットカード的存在)のキャンペ-ン情報を掲載しているなど、言語ごとの情報提供を強化した仕様にしている。
NTTグループは日本全国各地でWi-Fiスポットを貸し出しているので、各自治体とタイアップして、こうしたアプリを通じて観光客の誘致にも協力する。
こうした動きも含めて、今後ますます盛んになってくるのがインバウンドの加速だ。海外からの観光客の誘致合戦である。オリンピックもあるが、今後加速する少子高齢化によって、たとえばテーマパークに代表されるエンターテインメント施設やリゾート地も、ますます海外からの観光客頼みになることは避けられないだろう。円高傾向も、そうした動きに拍車を掛けると予測される。
そうしたときに、自治体単位で、あるいは店舗や各施設が単独でいかにうまく観光客を誘致するプロモーションを打てるかがこれからの課題だ。実際、D2Cでもそうした案件が増えている。その際にも重要なのが、決して一律の情報提供を全方位的に行わないということだ。
これまではどちらかというと、自分たちが持つ商品、訴えたいサービスをどの国に対しても一律に投げていた。そうではなく、それぞれの国や地域によって興味の対象、趣向が違うことを理解して、訴える内容も、その手法もきめ細かく変えるようになっている。市場別のプロモーションである。
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